2003年 5月 17日
走行距離 18,540Km
作業内容 プラグ交換プラグを交換する。
オーナーズマニュアルによると交換時期は10万キロと記載されているが、メンテナンス雑誌や156オーナーのサイトによると3万キロ前後での交換を推奨しているようである。小生の156は現在2万キロ程度なのでまだ交換時期でも無く、もちろんプラグ消耗によるエンジン不調などまったく無い。このまま距離をのばしてもなんら問題は無いがなんとなく 交換したくなったのである。・・・もしや、バトルガのネタ作りか?(笑)
ご存知のようにツインスパークエンジンは1気筒2本のプラグを有するので、4気筒すべて交換するとなると8本のプラグが必要となる。8本すべてが同じプラグではなく、シリンダーヘッドの中心に位置するメインプラグに対し、端に追いやられた形で取り付けられるサブプラグは、ネジ径が小さくバイク用のプラグのようだ。メインに対し補助的な役割だという事と、何故か耐久性の高いプラチナプラグだということからサブプラグの交換は見送り、今回はメインプラグのみおこなった。
メインプラグはNGK製。品番はBKR6EKPAである。品番からすると、ターミナル先端からガスケットまでの長さが50.5mm、アルミナ質でできた絶縁ガイシの径は10.5mm、ハウジング(六角対辺)は16mm、ネジ径は14mm、ネジ長は19mm、電極は外側2極、そして熱価は6番のようである。ちなみに今回交換を見送ったサブプラグはネジ径10mm、熱価は7番とメインより冷え型である(その他項目はメインと同じ)。 さて、新しいプラグのメーカーは迷わずNGK社製。だって、他のメーカーの適応プラグを探すのが面倒なんだもの・・・(笑)。
品番はBKR6EIX-11である。価格は1,600円/本と純正プラグより多少割高である。というのも交換に際し、折角だから着火性に優れているイリジウムタイプを選択したからである。イリジウムだからといって加速やトルク性能の向上が体感できるなど、さらさら思っていないのだが・・・(笑)。その他の純正との違いは、外側電極が1極になった事である。品番末尾の−11の意味するところは、花火ギャップが1.1mmらしいが、この大きさのギャップがベストマッチなのかどうかはわからない。交換作業は比較的簡単な作業である。初めての作業でも20〜30分程度で完了できそうである。
作業について、まず樹脂でできたエンジンカバーを外す。今回の交換作業にはまったく関係ないが、ついでなので外したカバーは洗剤を使い洗ってやった。結構汚れてますよこのカバー。脱着方法は左画像の赤矢印4箇所のボルトを緩め、オイルフィラーキャップを外せばよい。忘れがちだが、外したフィラーキャップは締めて作業しよう。エンジン部への異物混入防止のためである。ボルトの種類はトルクスタイプ。サイズはT30である。156の場合、トルクスは各所に使われているので是非所有したい工具だが、なければ6角のヘキサゴンでも代用できる。ただし強いトルクをかけると頭をナメル可能性が大きいので要注意。ちなみにヘキサゴンはサイズ4mmである。
エンジンカバーが外れると4個のイグニッションコイルと、そこからブランチされるテンションコード、そしてそのコードの先に接続されるプラグソケットが目に入る。そういえば156はダイレクトイグニッションだったんだとこの時思い出す(笑)。イグニッションコイル直下のプラグと隣にあるプラグコードのプラグを数えると確かに8個である。それにしても不思議な配線だ。このあたりの解説は<番外>でレポートする。
イグニッションコイルは左画像のようにコイルの右上左下のトルクス2箇所を外せば、簡単にプラグから抜くことができる。ところがコイル横に位置するプラグソケットは、プラグから抜くことはできてもサポートブラケット(プレートとも呼ぶようだ)に引っかかり完全に抜くことができない。したがって正しいプラグ交換方法としては、コイルはサポートブラケットに固定したままブラケットごと外す。サポートブラケットの外し方は以下の通りである。
まずイグニッションコイルのコネクターを外す。コネクターの位置は左画像の青矢印の4箇所である。外す際は左上画像の赤矢印のフックを摘むと爪が持ち上がり、ロックが外れ、その状態でコネクターを抜いてやればよい。もしフックが硬い場合は、反対側からドライバーを差し込んでやり、フックを持ち上げるようにしてコネクターを抜けばよい。4箇所のコネクターが外れたらブラケットを固定させているボルトを外す作業に移る。
ブラケットは左画像の赤矢印3箇所で固定されている。使われるボルトはお馴染みのトルクスである。サイズはエンジンカバー同様のT30である。一番右側のボルトにはアースライン(たぶんそうだと思う)が共締めされているので、元に戻す際は忘れないように注意しよう。それにしてもなんとも頼りないアースラインだ。ここだけでもバッテリーから太目のコードを直結してやろうかしら…。
この状態でブラケットを持ち上げれば良いわけだが、8本のソケットがプラグに突き刺さっている為、なかなか簡単に持ち上げることができない。上手に持ち上げるコツとしては、イグニッションコイル隣のプラグソケット(左上画像の黄矢印)をあらかじめ抜いておく。プラグソケットはコイルのようにプレートに固定されていないから自由に抜くことができる。もちろん完全に抜くことはできないからプラグから外れた状態でよい。あとは少し硬いが4つのコイルを均等に少しづつ持ち上げ、ブラケットをエンジンヘッドから外す。無理やり持ち上げようとすると、ブラケットが曲がったり、ソケットが傷む可能性が生じるので要注意。
左画像はブラケットが外れた画像である。プラグホールとプラグキャップは左から赤A 黄a 赤B 黄b 赤C 黄c 赤D 黄d と明記した。さてここで皆さんに質問です。メインプラグのホールはどれでしょう?。
小生はてっきりイグニッションコイルにダイレクトで繋がった赤A 赤B 黄c 黄dだと思っていたのだが、なんと正解は赤A 赤B 赤C 赤Dなのである。つまり3番4番シリンダーのメインプラグはイグニッションコイルにダイレクトにつながらず、赤A、赤Bコイルからブランチされたテンションコードによる電力(高圧)供給なのである。ということは3番4番のイグニッションコイルの直下プラグはメインじゃなくサブプラグなんだ・・・驚き!。まあ、冷静にエンジンヘッドのプラグレイアウトを考えた場合、1、2番シリンダーと3、4番シリンダーのヘッドレイアウトが対称になる訳がないから、当たり前といえば当たり前だが、なんとなく騙されたって感じ・・・(笑)。
気を取り直し作業続行。今回はメインプラグのみ交換ということなので作業するホールは赤字のABCDである。
プラグの6角サイズは16mm。奥まったところにあるのでエクステンションバーを使う。バーの先に16mmのプラグソケットレンチ(ソケット奥にラバーが埋め込んであり、プラグのターミナルを掴んでくれ、ホールからプラグを取り出す際に便利なツールである)をセットし、時計反対方向に回せばプラグ緩む。
左画像は外れた4本のプラグである。何故か1、2番と3、4番の焼け方に差が出ている。1、2番はこんがりキツネ色にほどよく焼けているのに対し、3、4番は明らかに焼けすぎである。3、4番は熱価を上げた7番あたりのほうが良いのだろうか。とりあえず今回は6番の熱価プラグを4本購入してしまったから、そのまま装着することにした。交換後ある程度走行したら点検し、結果をレポートしたいと思う。
余談だが、このプラグホールにオイルが溜まっている状況がが偶に見られる。オイル交換の際に勢いあまってこぼしたオイルならば拭けば良いが、ヘッドパッキンからのオイル漏れによる溜まりとなると事態は重大である。なぜならプラグキャップ内に回り込むとショートを誘発するのでかなり危険である。もしオイル漏れを発見したら、漏れの原因を追求しよう。ちなみに前車164(クロヨン)はしっかりとオイルホールと化していました。
ここまで完了したら後は今までの逆を行えばよい。先程のプラグソケットに新しいプラグをセットし装着する。
左の画像は新しいプラグを装着する際のちょっとした気配りである。あまり気にすることは無いが、噴射された燃料混合気が中心電極にダイレクトに当たるよう、締めた際の外側電極の向きを吸気バルブ−排気バルブを結ぶ方向に対し、90度の向きに調整する。締めこんだ際に外側電極がどの方向に開いているのかがわかるよう、左画像の様にエクステンションバーに印をつけて締めこむ。もちろんプラグはネジの切り方により4本とも完全に90度になることは不可能だが、なるべく90度になるようシリンダーごとプラグを選択する。今回は偶然にも4本ともほぼ90度。ラッキーとしか言いようが無い。プラグを締付ける際は、最初からレンチを使わず、まず手締めで締め込む方がよい。なぜならばホール奥の締め込み作業故、プラグが斜めに刺さった状態で締め込んでしまう場合があるからである。その際手締めなら違和感(締め込みできない)を感じるが、レンチの場合気がつかず締め込み、ねじ山を壊す場合があるからである。手締めである程度締め込む事ができたらレンチを使って仕上げの締付けを行う。もちろん仕上げの締付けの際は、トルクのかけ過ぎを注意したい。よく言われるのが、プラグの着座状態、締まったかな〜と思ったところから約1/2回転〜1/3回転くらい回す。しかし、この「締まったかな〜」がかなり曖昧なので、小生の場合は毎回トルクレンチを使う事にしている。締め付けトルクは、約2.0〜2.5kg-mくらいで十分である。
プラグがセットできたら、各プラグにソケットを差し込む。「カチッ」という音がするまでしっかり差し込むこと。後はブラケットを固定し、エンジンカバーを装着すれば作業完了である。<番外> 各プラグの点火時期について
まずは左の画像をご覧いただきたい。サポートブラケットとそれに固定されているイグニッションコイル、およびプラグキャップ類である。赤文字のABCDはイグニッションコイル、黄文字の abcd はコイルからブランチされたプラグキャップである。なんとなく複雑な配線だが、よく見ると赤A⇒黄d 赤B⇒黄c 赤C⇒黄b 赤D⇒黄a となっているのがお分かりになるだろうか。 次にプラグの種類。上記のレポート通り、メインプラグは赤A 赤B 黄c 黄d そしてサブプラグが黄a 黄b 赤C 赤D となる。
これからが素人の想像がかなり入ったレポートである。間違っている場合はどうか、メールないしは掲示板でご指摘いただきたい。
まず考えられる事が、イグニッションコイルとプラグキャップはブランチされているので、両プラグは同時に点火しているのではないだろうかということである。つまり具体的には、赤Aのメインプラグ点火と同時に黄dのメインプラグも点火しているということである。つまり1番4番のメインと、2番3番のメインプラグがそれぞれ同時点火する、所謂2気筒同時点火方式が採用されているのではないか?という仮説である。この2気筒同時点火方式はそもそも2輪の世界で早くから採用されていた技術らしいが、最近ではランエボやレガシー(本当はもっといろいろあるようです ^-^; )などにも採用されているようだ。
「2気筒が同時に点火?。それってどういうことなの?」という疑問が沸いてくると思うので、その仕組みとメリットについて簡単に説明しよう。その際にツインスパークのサブプラグの点火動作とメインプラグの動作の関連を考えてしまうと、何がなんだかわからなくなってしまうので、サブプラグは無視して、メインプラグのみを考えてほしい。左画像で言うならば赤丸のみである。
(表1)
(表2)左画像は直列4気筒エンジンの各シリンダーの4工程(吸入)(圧縮)(燃焼)(排気)とプラグの点火順序を表にしたものである。ご存知のように4サイクルエンジンとはこの4工程をクランク2回転(720度)で行う訳だが、直4エンジンは、各シリンダーの工程を180度づつずらし回転エネルギーとなる燃焼を効率よく配分させている。その燃焼のきっかけを作るプラグの一般的な点火順序は1−3−4−2、もしくは1−2−4−3のシリンダー順となる。ちなみに156の場合は前者である。
従来(本来)の4サイクルはプラグの点火を燃焼行程直前、つまり圧縮上死点で行う仕組みだから、一度点火すると次の点火はクランクが2回転するまで行われない。もちろんその他のシリンダーは最低でも180度の工程ずれがあるので、点火しているシリンダーと同時に点火するシリンダーはあるはずが無いのである。表1をご覧いただきたい。点火を示した★は1−3−4−2の順に規則正しく並んでいる。
ところが2気筒同時点火となると、圧縮上死点と同時に別のシリンダーでも同時に点火していることになる。それがどのシリンダーでどの工程で行われているのかというと、排気工程(排気上死点)になるのである。
4気筒の場合、クランクシャフトは1平面(0−180度、分かり易く言うと、横から見たらクランクが平面になる)を構成する形になり、2箇所が上死点にあるとき、残りの2箇所は下死点に位置することになる。(ちなみに6気筒は120度×3の三角形の星型)。つまり1番4番が上死点の時は、2番3番は下死点になるわけだ。この仕組みをうまく使い、1シリンダーが圧縮上死点の時に、工程は360度異なる排気上死点のシリンダーも一緒に点火しちゃえというのが2気筒同時点火の仕組みである。
表2で説明すると1番の圧縮上死点では4番が排気上死点となり、ここで赤A、黄d のメインプラグを点火させているのである。もちろん逆に4番シリンダーが圧縮上死点時は1番が排気上死点時になりここでも点火される。また、180度ずれた2番3番も同様な動作になる。これはプラグにとってはたまったもんじゃない。今までクランク2回転(720度)に1回の点火タイミングでよかった仕組みが、1回転(360度)ごとにパチパチ点火する忙しさに変わることになる。プラグの消耗が、想像以上、マニュアル以上に早い理由は納得できるだろうか。
それで肝心のメリットはというと、排気上死点でプラグを点火させることによって、燃焼工程で燃え残ったガスをこの段階で完全に燃えさせ、多少の燃焼エネルギーの発生と、さらにきれいな排ガス作ろうと考えているようである。個人的には吸気排気バルブのオーバーラップ時点での点火だから、燃えすぎたら逆に吸気効率を悪化させるような気がするし、燃えたとしてもエキマニあたりでちょろちょろ燃えて燃焼エネルギーの発生は見込めそうに無いように思う。また排気燃焼にこだわるとオーバーラップ故、吸気からくる燃料混合気に引火し、プレイグニッションを引き起こしそうな気もしないでもない。これはあくまでも素人考えです。
同時点火の仕組みとメリットがご理解いただけただろうか?。かなりいい加減な説明で本当に申し訳ありません。また、2気筒同時点火方式はあくまでも仮説ですから確認したわけじゃありません。誤りがある場合は是非ご指摘いただきたい。
次にサブプラグの点火について考えてみたい。一部の雑誌では、2気筒同時点火をメイン(圧縮上死点)、サブ(排気上死点)で行っていると記載されているようだが、どうやらサブプラグはメインと同時点火(シンクロ)しているようだ。つまりツインプラグ本来の1気筒内同時点火をおこない、あくまでもシリンダー内の燃焼効率のアップ(隅から隅までドドド〜と燃やしてやろう)を狙っているようだ(表2を参照願いたい)。
それではこのサブプラグにどれだけの補助効果があるのだろうかと、ちょっとだけ車が可哀相だったが、赤C赤Dコイルに結線されるコネクターを外して、サブプラグを点火させず運転してみた。アイドリングは正常時とまったく同じ。ブリッピングは多少ザラツキ気味。運点時は多少のパワーダウンは感じるがトップエンド(6千回転以上)時はまったく正常時と変わらない。どうやらサブプラグは低回点時に効果があるようだ。
最後に、ダイレクトイグニッション方式について想う事。
ダイレクトイグニッションは、別名ディストリビューターレスとも呼ばれるようだ。つまりディストリビューターを無くしただけでなく、コンタクトブレーカーやカバナーコントローラーをもなくしてしまい、代わりに正しい点火時期をセンサーによって感知し、この信号をコンピューターに送り配電や進角までも制御させている。これらの装置を無くしダイレクトにしたことからダイレクトイグニッションと呼んでいるのなら、156はまさしくダイレクトイグニッション方式である。しかしながら一方では、各気筒のプラグのキャップ部にイグニッションコイルを配し、高圧電流を送るハイテンションコードをなくし、プラグと直結したことからダイレクトイグニッション方式と呼んでいる場合もある。どちらかというとこの概念が正統派か?。もしこの場合をダイレクトと呼ぶならば、さしずめ156の場合は似非、いや、セミダイレクトイグニッション方式のようである。ダイレクトイグニッションのメリットである、従来のハイテンションコードを無くし、コードの抵抗による点火ミスを無くすという考え方が細部まで見られないことはちょっと残念である。おっと!忘れるところでした、交換後のインプレッション(笑)。予想通り加速性能や、パワーアップ、トルクアップなどほとんど体感できない(爆)。ただ、微かだが、今までのバルブタイミングが切り替わる3,500回転あたりからの湧き上がる(かなり大袈裟)トルクの盛り上がりが見られなくなり、低回転から高回転までトルクの出かたがリニアになった感じである。低回転時のトルクが太くなったのだろうか、それとも高回転時ののびが無くなったのだろうか定かではない。
個人的にはあの3,500回転あたりからの「モリモリ〜」と湧き出てくるトルク感が気に入っていたのだが。やっぱり元に戻そうかしら・・・ボソッ(笑)。