環六高速道路を考える会ニュ−ス
No.50
2000年7月17日
新たな出発を期して
初めに,長い間,ニュースを発行できなかったことへのお詫びを申し上げなければなりません.理由はひとえに事務局メンバーにおける私的な事情によるものです.もう活動は取り止めになったとお思いの方も多かったかと思いますが,まだ止められません.
市民運動,殊に地域に根ざした運動を行なっている場合,メンバーの転勤,転居などは運動を継続していくには致命的な要因となってきます.しかし,そのようなさまざまな困難にも関わらず,この地域を守りたいという気持ちのあるものたちの手で,続けられていかなければならないと思っています.
ご存知のように,環六の拡幅はかなり進んできましたが,まだ掘削などの工事は本格化しておらず,換気搭についての具体的なプランも提示されていません.せめて大気浄化装置を設置してもらえるように,これからも働きかけをして行きましょう.
会の名称と年会費を変更しました
昨年11月の最高裁判決での敗訴により,道路建設そのものに反対していくことがほとんど不可能になりました.そこで,前号のニュースで予告しましたように,これまでの「環六高速道路に反対する会」を改めて,「環六高速道路を考える会」とすることが,2月10日の総会で決まりました.
また,訴訟および調停において代理人をお願いしていた弁護士の方々に対する報酬も不必要になり,大きな支出が見込まれなくなったことから,これまでの年会費を変更することも承認されました.郵便局の会費振込口座番号も変わりましたので,よろしくお願いいたします.
東京都環境白書2000が刊行されました
本年5月,東京と環境白書2000が刊行されました.ディーゼル車NO作戦を強力に進めている石原知事の下で作られただけに,自動車の問題を中心に据えたなかなかの力作です.
特に第2部では,特集「自動車と環境の危機」と題して,ディーゼル車の健康影響や,従来の規制の問題点を詳しく取り上げており,大変勉強になりますし,「区部の車の95%は区部に用事のある車」などの表現により,これまでの道路作り優先の姿勢との違いを見せているのも評価できます.また,各国の道路交通対策を検討した成果も多く紹介されています.例えば,イギリスについては,従来,交通需要の増大への対応をもっぱら道路建設によっていたのを,公共交通への転換など,より総合的な方法で対応するようになったそうです.これまでの調査で,道路建設はあらたな自動車交通を増大させているだけだ,として政策を転換しているのです.また,アメリカ,フランスでも,さまざまな自動車交通抑制策が講じられていることが報告されています.さらに,高速の地下化によるオープンスペース確保を住民参加で実現しているボストンでの事例は,地上も地下も道路にしてしまう環六とは全く発想が異なり,私たちの運動にも役立ちそうです.
そしてなにより評価したいのは,道路建設が環境改善につながる,という主張がどこにも書いてない点です.東京都のこれまでの環境施策にはすべて環状道路等の整備という一言が入っており,私たちが受けた判決によれば,それはどんな道路でもどんどん建設を進めていいという意味だったのです.再三にわたってこの点の是正を求めたきた結果かも知れません.
なお,http://www.kankyo.metro.tokyo.jp/hakusyo/index.htmで全文を見ることができます.
この白書刊行に当って,石原知事は以下のようなメッセージを発表しました.今後もその姿勢を厳しく監視していきましょう.
「刊行に当って」
今日の環境問題は、既に経済性と五分五分のトレードオフで済む段階をはるかに超え、極めて深刻な状況にあります。
東京には、多様な都市機能が高度に集積し、私たちは文明の便益を享受していますが、その反面で、有害化学物質の氾濫による環境や食品の汚染、水と緑の減少によるヒートアイランド現象の進行など、環境の悪化も東京に集約的に現れています。
東京が直面する様々な環境問題の中で、今、最も緊急に取り組まなくてならないのは、浮遊粒子状物質や二酸化窒素などによる大気汚染の問題であり、その最大の要因となっているディーゼル車排ガスの規制強化を一日も早く実現しなければなりません。
自動車公害は、東京だけでなく全国の大都市で等しく大きな問題となっており、本来ならば国が率先してその解決に乗り出すべき課題ですが、この分野での国の取組は全く不十分な状況にあります。
このため昨年8月から「ディーゼル車NO作戦」を開始し、まず東京からディーゼル車規制を行っていくことを目標として掲げました。東京都のこの問題提起は既に国や産業界を動かしはじめておりますが、今後さらに東京都が率先して施策を展開することにより、日本全体へと拡げていきたいと思っております。
この「東京都環境白書2000」では、特に自動車公害問題について集中的に検討し、現在の国の自動車排ガス規制の問題点を指摘するとともに、欧米諸国の先進的な政策と東京都が進めようとしている施策の方向性について示しています。
本白書は、東京のみならず我が国の自動車公害対策を一層前進させていく大きな力になるものと確信しています。
多くの都民、事業者の皆さんが「東京都環境白書2000」に目を通され、環境問題への認識を深めるうえで大いに活用されることを期待しております。
東京都知事 石原 慎太郎
川崎の土壌脱硝装置を見学しました
去る4月7日,会員5人が産業道路と横羽線の交差点の池上新田公園内に設置された土壌脱硝装置を見学しました.運用を開始したばかりで土壌が安定していないためにデータが安定していませんでしたが,2層にして土地の有効利用をはかっている点が注目されます.土壌脱硝装置は排ガスを濾過するために大きな面積を必要としますが,これなら,環六の限られた幅員の中にも余裕をもって設置することができるはずです.今後とも土壌脱硝装置の導入を強く訴えていく必要があります.