東京の鳥@ コアジサシ


 

東京からまっすぐ南へ2000km,熱帯の海は絵の具を溶かしたように真っ青でいながら,不純物を含まないその水はあくまで透明だ.世界でも最もきれいなこの海のどこかでウナギが産卵している.3週間にわたるその調査を終えて船は東京へ向かう.またあの東京の雑踏での日常生活に戻るのかと思うと気が重い.

海は熱帯の明るい青から,しだいに黒潮の濃い青に変ってくる.それとともにまだ日本から500km以上も離れているうちから海にはゴミが見られるようになり,やがて伊豆七島にかかるとゴミだらけになってくる.そして東京湾にはいると海は濁った茶色になり,羽田沖に着くともはやどぶとしか呼びようがない.これが本当にあの熱帯の海と一つながりの海なのだろうか.

突然キリリ,キリリと鳥の鳴き声.コアジサシだ.カモメの近縁だが,翼が細くずっとスマートである.日本各地に生息し,水の上を飛び回り,餌の小魚を見つけると飛び込んで捕らえる.アジを刺すということからのネーミングだ.大井の東京港野鳥公園にでも巣があるのだろうか.必死に魚を探し回っている.やめろ,やめろ,こんなところの魚が食えるか.なんで東京なんかに棲んでいるんだ.南に行けばまだけがれを知らない海がある.東京なんかに棲めるか.

翌日,私も東京の住民に戻っていた.

東京に鳥が棲むということ.素人ながら四半世紀にわたって鳥を見続けてきた中から東京と鳥の関わりあいといった視点で日頃感じていることを紹介していきたい.

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