東京の鳥I キジバト
都内でハトというと,ドバトとキジバトである.ドバトというのは生物学的な名称ではない.ヨーロッパでカワラバトから家禽として作られ飼育されていたものが,半野性化したもので,公園や神社など,餌をもらえるところならどこにでもいる.一方キジバトは完全に野性で,人の手から餌を取るようなまねをしない.あまり目立たないが,しっかりと都会に適応して暮らしている.デーデポッポポーといういかにものんびりした声は,授業中にしばしば睡魔に襲われた学生時代の記憶と結び付いている.
多くの鳥は卵や雛を大切に保護するため,柔らかい草や,羽毛などでクッションを作る.しかしキジバトは枯れ枝を組合わせただけの直径20〜30cmの粗末な巣を木の上に作る.この鳥の巣を見つけるのはそれほど難しくない.巣材となる枝を口にくわえて飛んでいるのを追えばよい.
通勤途中の街路樹にこの鳥の巣を見つけた.環状6号線,通称山手通りという幹線道路である.見上げているところを目の前の商店の主人に尋ねられて,つい巣のあることを教えてしまった.翌日通ってみると,なんと巣の目の前の枝に餌台が取り付けてあった.抱卵中,育雛中の鳥はとても神経質になっている.キジバトは卵を残してその巣を放棄してしまった.
鳥の巣を見つけましたがどうしたらいいでしょうか,という相談を受けることがある.どうしたらいいでしょうかといわれても親鳥以上に子育てがうまい人がいる訳がなく,ほおっておくしかないでしょうに.なんとも人間は思い上がった,お節介な存在だ.