東京の鳥K アカコッコ
鳥を見始めた頃,昔のどこどこは良かったという様な話をする人に対し深い憤りをおぼえた.その良かった昔を守るためになにをしたというのか.どうしてそれを我々の世代に残してくれなかったのか,と.今自分自身振り返ってどうだろうか.あらゆる自然がすさまじい勢いで破壊される様を,何もできないままに見続けてきたに過ぎない.
そんな中,昔ながらの良さを保っていて皆に勧められる数少ない場所として三宅島がある.初めて私がこの島を訪れたのは1972年のことだ.原生林に囲まれた大路池で見たカラスバト,錆が浜近くの岩の上で見たイイジマムシクイ,陸地が苦手で夜中に木にぶつかってがさがさと落下するオオミズナギドリ.そしてなによりもアカコッコ.脇腹のオレンジ色が鮮やかなこの愛らしい名前をもつこの鳥を,木々の合間にいくらでも見ることができる.大きな建物も,りっぱな道路も,ネオンのまちもないが,自然と人間の生活とがほどよく調和したこの島にすっかり魅了された.
しかし,この平和の島も平穏無事ではいられなかった.もちろん米軍の夜間発着訓練場(NLP)建設の問題だ.地元住民の粘り強い闘いにより,とりあえず中断されて,一応の危機が回避されたのは何よりの僥倖である.
今年の夏もまたこの島を訪れた.都合7回目である.1983年の噴火でこの島の景観が一部で大きく変ってしまったが,今なおアカコッコのすむ自然はよく保全され,人々のゆったりとした暮らしぶりも変っていない.「昔はよかった」と言われないために,三宅島の人々は大変な苦労をしてきたことであろう.NLP問題で今なお警戒を緩めずにいる人々に声援を送りつつ,自分の問題,道路建設反対運動にさらに力を入れることを約束して,このシリーズを閉じたい.1年間ありがとうございました.