東京の鳥G オオタカ 


 

自転車で神楽坂を通りかかった時だ.視界の一部をタカの影が横切る.あわてて見上げると,オオタカだ.白い下面,幅の広い翼,比較的長い尾,よく見ると鷹斑模様も分かる.ハイタカ,ツミより明らかに大きい.珍しい鳥を見るといつものことながら興奮してしまう.こんなところにオオタカがいたぞ,すごい!

しかし喜んではいられない.こんな都会にオオタカが棲めるはずがない,無事に本来の棲息地に帰ってくれと願う気持ちになる.

オオタカは,多摩の山地や狭山丘陵などで見られるがその数は多くない.太陽の光を受けて光合成により植物が育ち,その葉を食べる昆虫がいて,それを食べる小鳥類,そしてそれを食べるタカがいる.このような食物連鎖を1段上がる毎に生物量は著しく減少する.生態系の頂点に立つ猛禽類は貧弱な自然では生きられないのである.豊かな自然の中では食物連鎖は地中にも広がっている.植物が葉を落とし,それがバクテリアにより分解され,トビムシ,ミミズなどに食べられ,それを食べるオサムシやムカデがいて,それらを食べるモグラがいて,それを食べるフクロウなどの鳥がいる.地面の中を突っつく鳥とそれを食べるタカという経路もある.人の目に触れない地面の中でも多くの生命が育まれている.そうしたしっかりした基盤があってこそタカが棲めるのである.都会の緑はどうだろうか.木の根元がコンクリートで固められていたり,落葉の掃除や草取りが行き届いている公園で,タカを期待することはできない.緑化の大切さがいわれるが,残念ながら本当の自然の回復をめざした緑を見ることはできない.

東京の鳥Fへ  東京の鳥Hへ

メニューへ戻る

ホームへ戻る