『テーマ館』 第27回テーマ「ドラゴン」


「ドラゴン変身」へ

ドラゴン黙示録 投稿者:はなぶさ  投稿日:07月03日(土)23時57分18秒

      ミサイルの爆風と閃光を感じながらドラゴンになった私は空を飛び回った。そ
      うだ、私はドラゴンなのだ。爆発の威力は私に振動を与えたが、私の体を傷つ
      けることは出来なかった。私は逃げながら、力の行使について考えていた。

      そうこうしていると、世界中でドラゴンの数が増えていることに気が付いた。
      ヒマラヤの上空では三匹のドラゴンと出会った。ドラゴンにはドラゴンの気持
      ちがよくわかる。彼らは何を為すべきかを考えていた。力を得たものは、それ
      を有効に使いたいものなのだ。私と同じだ。

      私たちは人間を殺戮することにした。その理由は簡単だった。今はもう199
      9年の7月だし、それを遂行できるのは我々ドラゴンだと思ったのだ。集まっ
      たドラゴンは数百匹になっていた。そこで、殺戮分担を考えた。せっかくの力
      を使えないドラゴンが生じないという不公平を避けたいからだ。

      そんなとき、思慮深い中国出身のドラゴンが異論を唱えた。どうやら、そのド
      ラゴンは人間との共生を考えているようだ。しかし、我々はそのドラゴンを焼
      き殺し、世界の人類を滅ぼした。簡単なことだった。

      我々はドラゴンとして生き、そして新しい時代を観察することにした。ドラゴ
      ンには死は存在しないのだ。すると、新しいサルたちが、新しい進化を遂げて
      新しい文明を作りはじめた。彼らは人間と違う文明を作っていくことが出来る
      かが私たちの関心事になった。

      しかし、私たちは彼ら新しい文明の担い手が、まるで呪われたかのように、人
      間とそっくりの文明を作り上げるのを見て、がっかりした。そして、はじめて
      中国のドラゴンが言っていた共生の意味が分かったのだ。何度繰り返しても、
      本当に満足の行く文明なんて築けないから、共に生き、そして文明の成熟を見
      守るべきだと考えたのだ。リセットしても何にもならない、進歩とは乗り越え
      ていくことなのだと言いたかったのか。

      そこで、私たちドラゴンは地球を離れた。本当の理想文明を探す旅をしようと
      思ったからだ。人類に対する鎮魂の旅でもある。

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