「水に入る」へ 水の途中 投稿者:はなぶさ 投稿日:08月18日(水)00時15分10秒 光の温かさが残る水面が私の口を越えて、今までに体験したこと の無い角度で水面の輝きを見ながら、さらに進み続けた。 髪の毛の間に水が入り込んで、まるで海草のようにゆらめきなが ら私にいつまでも付いて来る。私は完全に水に中に入ったようだ。 私はもう自分の足で進む必要は無くなった。 水は遠くをぼやけさせ、私の目の前に過去の幻影を投影はじめる。 冷たい流れや暖かい淀みが現実と幻影の間に境界を無くさせてい るよう。私は森の中で一人の老人と出会っていた。あの皺の奥に 思慮深い瞳がある。私は彼に話を聞いたときから、未知の森のあ る女性のことを知った。彼女の不幸は私にも分かった。 なんとかしようと考えて、結局なんともならなかった。老人も彼 女のために泣いた。私も涙を流し、夜が明けるまで泣いた。 私には何をすることもできやしない。そういうことだ。簡単なこ とで、絶対の真理だ。だから、私はここでこのまま死んでゆく。 「水の底、あるいは茂み」へ