主人公・考
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実は書き溜めてあったりするあたりが貧乏性なんですが(笑)、「割とオモロイ」と おっしゃる読者様が(自己申告によると(笑))約2名ほどいらっしゃるようなので、性懲 りも無く続けます(^^; また雑談、じゃなくって今度は「ちゃんと」エヴァ本編との絡みで。 前回二回にわたってケンスケを通じて「脇役の神髄」を考察しましたので(笑)、今度 はシンジについて書いてみたいと思います。 つうか、シンジじゃなくても必ずしも良い話し。 つまり「主人公」で一席お耳を拝借<講談かい |
シンジはシンジだから主人公なんでしょうか? それとも主人公だからシンジなんでしょうか? それとも主人公だから主人公なんでしょうか? なにを言ってるのかさっぱり分からんですな(爆) 私の個人的な解釈ですが、結論から言えば、シンジは「主人公でなければ誰でも無い」 存在だったと思います。 エヴァという世界で、シンジはユイという「神」と、ゲンドウという「預言者」の間 に生を受けた「半神半人」いわゆる神人です。 神鳴る力を使いこなし、世界を救う事が出来る唯一無二の「人間代表」って立場でし たね。いろんな民族の神話に見る、類型的な「主人公」のポジションでもあります。 黄泉の国へ行って冥界の王に打ち勝って妻たるもう一人の神人を救うってのがパター ンなんですが……。 これは、神話には「死者の死せる理由」や「黄泉の国」を描く事が必要だという事と、 神話の主人公にはそういった事象すら超越するエネルギーが必要だと言う事で類型的に 現れるんじゃないかと思ってます。 ヒロイックファンタジーの原形も似たような構造……と言うか、そもそも「物語」 ってモノの基本なのかも。 なのに、シンジ本人は至って茫洋と押しが弱く、内気で悲観的で陰気です(笑)。 シンジが前向きだったらもっと面白い話しで痛快なアクションが楽しめたのかも知れ ません。でも、それって「エヴァじゃない」よね、みたいな(笑)。 つまり、そこの所が「エヴァがエヴァだった理由」なのかなあと、考えたり考えなかっ たり<どっちだ(笑) 誰でも「シンジみたいな人物」になれるんですよ。 茫洋と押しが弱く、内気で悲観的で陰気な人物。 父親に捨てられた事を恨んでいて他人とコミュニケーション取るのが下手で、女の子 が気になる割に何にも出来なくて、自己主張して否定されるのが恐いから口数が少なく なって……シンジみたいになって楽しいか?(笑)。 楽しくはないですよね。 だからなれても誰も嬉しくないし、あえてなろうと思わない(^^; でも、シンジの「立場」には唯一無二の価値が有ります。 なんてったって「人間代表」なんだから。 なれるもんならなってみたい、と思うヒトは少数派でしょうが、彼の存在そのモノが 物語になりうる、って意味で彼は「主人公」として存在するのが正しいわけです。 平たく言うと、シンジを中心に世界が回ってるんだから、シンジを主人公に据えるの が一番収まりが良い。 彼の持つ個人的な資質のパラメーターは、はっきり言って意味が薄い。 「王子様」だから童話の主人公になってるってパターンと同じですわ(^^; これがアスカだと、限界が有ります。 アスカの存在はシンジを超えられない。 アスカも含めて世界の存在がシンジに依存しちゃってるもんだから、アスカがどんな に重要なキャラクターであってもとっかえが利いちゃうんですよ。 別に、アスカがアスカじゃなくても良かった、って事です。 では、レイはどうなんでしょう? 立場としては、レイは「お姫様」なんです。 王子様が助けに来るかどうかは知ったこっちゃ無いですが(笑)、物語においての 「役回り」はそう。 レイが鍵穴でシンジが鍵<卑猥な意味では有りません(爆) もちろんとっかえは効きません。 レイの存在が無くなればシンジの立場の価値も「半減」してしまいますので。 そこの所上手く書いてるなあと思って読んだのが「錬金術師ゲンドウ」なんですけど、 あれを読むと分かりやすいですね。 シンジ、レイ、アスカそれぞれのポジションが、エヴァをベースにしつつ、ファンタ ジーとして分かりやすく描かれていて参考になります。 同じようにとっかえが効かないのが、ゲンドウと初号機。 父親と母親ですから当然です。世界の中心に居るのはシンジだけど、シンジを産み出 すためには二つがそろう必要が有ったんだから。 逆に言うと、物語はシンジの親二人が出会う所から始まったとも言えます。 さてそれでは、どうしてあるべきモノが有るべきように収まってた割に、エヴァが納 得行かないのか?てな部分を考えてみたいと思います。 それはやっぱり、シンジが主人公としての責任を放棄しちゃったんで、話が話として 完成しなかった所に有ると思うんですよ。 主人公は世界を救う力を持ってたから主人公だったんで、世界を救わなかった主人公 なシンジを含めてエヴァの世界は完結しなかった。 フタを開けられたパンドラの箱は「希望」を残して消えてしまう。 レイはサードインパクト後に存在そのモノが瓦解してしまいましたね。 彼女が開いてサードインパクトが起きたんですが、シンジはそこに残った希望を拾わ なかった。 はじめっから全部やり直そうぜ、がTVの25.26だったんであれはあれで物語と してアリ。 生きようと思えばみんな帰って来るとユイさんが言いながら、二人しか残らなかった 映画版のエンドは物語として破綻しちゃってる(-_-;) 分かりにくいんですよね。 まあ色々と解釈は有るんでしょうけど、あれではまるで、シンジが世界と引き換えに アスカを選んだみたいに見える。 まあ、そこが新しいと言えば新しかったんですけど(^^; 世界が消えてなくなって、女の子と二人っきり。 ふつう「主人公」はそういう事はやりません(笑)。 つまり、主人公としての責任よりも碇シンジとして行動しちゃったように見えてる所 が新しい。 それも最後の最後に、それまでカラッポだったハズのシンジがですね。 本来、エヴァって物語はシンジを通じて「シンジ自身」を描いてるんじゃないんです。 シンジを通じてしか書けない「世界」を書いてるわけです。 つまり、シンジ自身はホントは最期までカラッポの存在で良かった。 カラッポの方が観客が自分自身を投影しやすい分、世界の方を描きやすいわけですな。 |
でも最期、アスカにこだわって首を絞めちゃう(笑)。 あれがまだ、レイと二人だったら新しい世界の始まりって事で分かりやすい物語になっ たと思うんですけど(^^; じゃあどうすれば、エヴァの世界に納得出来るんでしょう? 簡単ですね、シンジがちゃんと主人公になれば良いんです。 例えば世界が終わるパンドラの箱が開くのを阻止する。 例えばパンドラの箱をこさえた父親をぶっ殺す(笑)。 例えばパンドラの箱が開いて飛び散った世界の欠片をもう一度積み上げる。 そういう事をしてくれたら、エヴァの世界も「終わる」んでしょう。 でも、それやっちゃうと、今度は「シンジ」じゃない(爆) いわゆる「スーパーシンジ」なSSに違和感感じるのも同じ所かもしれない(^^; 「シンジ自身」をカッコ良く書いちゃうと、回りの世界の方に焦点が行かないんです。 もちろんシンジが主人公なのにカッコ良くなかったっていう、エヴァのネガを解決す るためにそういうタイプのSSが産まれてくるってのは分かってます。 でも、「立場」が主人公なわりに行動も性格も「おおよそ主人公らしくない」っての がエヴァのエヴァたる所以ですから、「主人公である事」と「シンジである事」が初め から噛み合ってなかった(^^; だから、エヴァの世界がこうして残っていくわけです。 私や、あなたの心の中で、納得出来ないままずるずると生き残ってる。 いつまでも「心に残る作品」が作りたかったんなら、ガイナックスの戦略は「大成功」 です。わたしゃ納得させてもらってすっきりしたかったんですけどね(笑) 今回の話しにオチはありません(爆)。 次回以降のコラムへの布石ってことで。 それでわ(^_^)/~ |
次回へ続く▽ |
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