No.05 00/03/16 ◆エヴァな雑記:その2

主体と客体

【ホントの主人公は誰だ?】
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前回の「シンジって何だったんだろう?」の続きです。

 エヴァンゲリオンと言う物語の主体は何だったんだろう?
 と言うのがずっと考えてる事です。

 「なに言ってるんだ、主人公はシンジじゃないか」と言うのも一つの解では有るんで
すが、どうもシンジが積極的に主人公としての要件を満たしているとは思えない(^^;
 つまり、立場として受動的に過ぎるんですよね。
 物語の中の世界の中心に、かなり近い所にシンジは居るんだけど、シンジが主体となっ
て物語を押し進めていた印象が無いんですね、余りにも。

 じゃあなにがエヴァの中心にあったか。
 やっぱりエヴァンゲリオンの中心に有ったのはエヴァンゲリオンだったと思うんです。

 エヴァと言うのは一つの「アイテム」なんですが、同時に世界の行く末を決める鍵で
有るモノで、立派に一個のキャラクターと言うか、「主体」として存在していた。

 んでも、エヴァはエヴァ単体で主体として成立していたのでは無く、それを作り上げ
たNERV、と同時にNERVを操っていたSEELEと死海文書が有って、その上に
乗っかっていた「象徴」がエヴァだった。
 言うなれば担がれた「神輿」。
 「エヴァ」と言うキャラクターに、それこそゲンドウ、キール、セカンドインパクト
の真相、使徒、解明されざる謎、人類補完計画なんかが絡み合って出来ていたのがエヴァ
という物語の「主体」だったんではないでしょうか。

 シンジはそれらと関わり合う事を「強要」された、「傍観者としての主人公」だった
んじゃないかなあと。

 ここで、「単なる傍観者・ケンスケ」と「傍観者としての主人公・シンジ」の違いは、
エヴァに対してシンジの意志なり行動なりが「能動的に働く」って部分です。
 つまり、物語の主体としてのエヴァ、エヴァを中心として動く流れの中で、シンジが
動けばエヴァも動く、というポジションを得ていた部分がケンスケとシンジの決定的な
違い。

 でも、同じ立場だったキャラクターはシンジ以外に居るんですね。
 言うまでもなく、アスカとレイ。

 でも、ポジションはけっこう違います。
 レイはシンジよりもずっと、エヴァの本質に近い側、「能動的じゃない側」に有って、
やはりシンジの意思なり選択なりによって変わってしまう側でした。
 一方、アスカはシンジよりもエヴァから遠い。
 アスカが影響を及ぼす範囲に、エヴァの「本質」は入っていない。
 だから、レイは「ヒト以外の存在」になってしまって、アスカは「ヒトとして」滅ん
でしまう立場に有った。

 アスカに近い立場として、ミサトが居ますね。
 ミサトの行動はシンジに強い影響を与えるけど、シンジを通してしかエヴァとは関わ
らない。
 リツコはシンジと関わらないでゲンドウを通してエヴァと関わろう、つまり世界の主
体に働きかけようとするんですが、これは物語りとして筋が通らないので結局何も出来
ないで殺されてしまいます。
 加持もそうですね。
 シンジの重要性は良く知っていたと思うんですが、自身がエヴァに近付き過ぎてこれ
も死んでしまいました。

 リツコや加持は「物語の本質」によって殺されたと言って良いと思うんです。

 つまり、エヴァと言う主体に能動的に関わる事を許されたのはシンジだけだった、と
いうのが、エヴァンゲリオンと言う物語の持っていた本質的な構造だったと考えます。

 もう話しのオチが見えてきましたね(笑)
 言いたいのは「なのにシンジは受動的だった」とまあ、前回のコラムと同じ事を違っ
た角度で言ってるだけなんです(^^;

 けれど、考えてみるとシンジ自身は積極的に動く度にえらい目に遭ってるんです。

 ヤシマ作戦までは、シンジは「乗せられちゃった主人公」で自分で何かする、出来るっ
て感じじゃなかった。
 唯一「笑えば良いと思うよ」が「主人公らしい行動」でしたが、他の部分では思い悩
みながら「状況に流されて行く」だけでした。

 7話はミサトの物語で、8話「アスカ、来日」での弐号機タンデム騎乗もシンジの行
動と言うより「巻き込まれ型」な話。
 9話のユニゾン特訓もアスカに引っ張られて行くカタチです。
 10話、マグマダイバーはやはりアスカがメインの話しでしたが、シンジはちゃんと
主人公として行動しました。でもこれは「アスカに対して」ってお話(^^;
 「笑えば良いと思うよ」をアスカに対してもやりましたって話でした。

 11話と12話では、少し主人公らしい活躍がありました。
 これが、シンジの主人公としての立場の可能性の証明だったような気がします。

 13話と14話はSEELEとNERVがメインでチルドレンは活躍なし。
 15話では加持とミサトがメイン。シンジはエヴァの側に居るゲンドウに対して言い
たい事が言えず。
 16話はシンジが調子に乗って独走した結果、使徒とエヴァによって恐い思いをするっ
て話。
 17話は次話以降へのネタフリで、18でシンジはやっと主人公らしい「行動」に出
ます。ゲンドウへの反発も含めて物語への積極的な関与、でしたが、その結果がもたら
した物は「エヴァから離れる事」でした。

 19話では思い直して、ますます主人公っぽく「僕はエヴァ初号機のパイロット」って
叫んでましたが、その結果はエヴァにシンジが取り込まれてしまうと言う事件となって
現れ、20話へとつながりました。

 何だかこの辺(17・18・19・20)の流れって象徴的だったと思うんですよね。
 シンジが動かないと物語が始まらない。なのに、動く度にシンジは自分よりもっと大
きな力を思い知らされて「辛い思い」をしてる。
 言うなれば「主人公なのに世界を動かせない」んです。

 21話で物語の始まった地点、つまりゲンドウとユイの出会いが示されて、ますます
シンジの主人公としての立場がハッキリします。
 大きな流れとしてはSEELEやゲンドウの思惑、死海文書やエヴァの謎が少しづつ
ベールを脱いで、シンジのポジションの重要性も確実になってきてるんですが、シンジ
自身に対して「主人公として行動した結果、得たモノ」ってのは示されないんですな(^^;

 んで、22話。
 アスカのピンチにシンジは「主人公なのに、動いちゃいけない」って命令を受けて、
結局何にも出来ません。
 あそこでまた命令を無視してたら、その後の話しが違って来たと思うんですけどねえ
・・・でもそれってエヴァじゃない(笑)。

 続く23話、今度はレイのピンチ。
 助けに行った主人公の目の前で自決、という、まあ何とまあここまで来るとシンジが
可哀想じゃないのってな話(^^;

 トドメの24話。
 「主人公として」初めて得た「親友」を自ら手にかけなきゃいけないって話しになり
ました。まともな「物語り」としては、ここでちゃんちゃん、と終わってる。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・どうなんでしょうね(^^;

 シンジが影響を及ぼしていたのって、アスカやレイと言った周りのキャラまでで止まっ
てて、エヴァの本質まで届いていなかったように見えるんです。
 シンジが主人公としてのポテンシャルをフルに使えば、エヴァを通じて物語り全体を
動かす事が可能だったにもかかわらず、そういう風にはストーリーが進まなかった。

 むしろ、受動的だったシンジに、次々襲い掛かる不幸(笑)。
 主人公としての力を使ってそれらを切り抜こうとすればするほど、物語の主体である
エヴァによって辛い目を見る。
 ひょっとしたら、1話から24話までを通して言われていたのは
「エヴァには誰もかなわない」ってストーリーだったのかもしれないと思えるんです(爆)。

 TVの25・26話は、その「エヴァが主人公でしかない話し」を御破算にして、
「一からやり直すって手も有るけど、どうよ?」って可能性の提示でした。
 だからシンジは何も出来ない主人公でも「ここに居ても良いんだ!」なんて悟っちゃっ
て、拍手されたりしてるわけだったんですが(笑)、映画版はもうちょっと根が深い(^^;

 アスカは量産機にやられちゃうんだけど、今度もシンジは助けに行けない。
 助けに行けなったのに、アスカの「やられっぷり」はキッチリ見せ付けられるって嫌
がらせはまたきっちりと受けるんですが(笑)。
 続いてレイに、また助けてもらえるのかと思ったら、今度はレイはエヴァより恐い
「理解する事も出来ないような超越的なモノ」に化けちゃってシンジをビビらせて
終わり(爆)。

 おいらがシンジだったら、多分こう言いますね。
「どないせえっちゅうんじゃ!」(笑)

 人間代表・碇シンジに対して、エヴァを象徴とする物語の主体が、力を見せ付けて追
いつめ続けた物語になっちゃってるんですよ>映画版
 ジャンプだったらそれでも、努力・友情・勝利って事になるんでしょうが(笑)、そこ
をシンジが勝ち抜かなかった所が「新しい」(核爆)。

 エヴァがエヴァだった所以ですよね。
 シンジというカラッポの主人公にシンクロして見ていても、カタルシスの得られない
物語として終わっちゃったんですよ。
 得られなかったカタルシスを得ようとして、今もまだエヴァが生き残ってる。

 だから、どうにも「確信犯」だったんじゃねえかって気がしてしょうがないんですよ
ね(^^;

 さて、エヴァの構造が見えてきました。

 アスカ>ただのヒト、なので何をヤられても仕方が無い
 レイ>ヒトでは無いので、どんなカタチになっても仕方が無い
 ミサト>シンジのために頑張って、死んじゃう
 加持とリツコ>エヴァに近付き過ぎて死んじゃう

 シンジが頑張る>エヴァ(が象徴する物語の本質)によって罰を受ける
 シンジが頑張らない>それでも物語は流れていく

 詰まる所、シンジに主人公としての能動的な行動を「させないように」って物語だっ
たんじゃないかなあって気さえするんですよね。

 巻き込まれ型の受動的な主人公が、結局その立場を生かす事無く終わってしまった。
 と要約すればそんな感じなんだけど、そこには「シンジの資質・責任」の問題よりも
遥かに大きな「物語を支配し続けたエヴァ」ってモノが見えてくるような……(^^;

 今回もやっぱり、オチないまま次回以降につながります(^^;

それでわ(^_^)/~
次回へ続く▽

制作・著作 「よごれに」けんけんZ
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