No.11 00/11/06 ◆ 萌え論:その1

記号の恋愛 上

【 ジェンダーとヤヲイと人外少女(笑)】
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 恋愛感情とは違う「萌えの心理」を考えてみる、てのが今回のコラムです。
 少々『トンデモ系』の考察だったりしますんであんまり本気にしないで下さい(笑)。

 恋愛感情とは、ヒトのオトコがヒトのオンナ(またはヒトのオンナがヒトのオトコ)に
恋慕の情を抱く事、です<言うまでもナイですが。

 #ここでは同性愛や、異性を象徴する一部分に執着するいわゆるフェチズムは別物
 #として論じておりますので悪しからず。

 ヒトの恋愛感情の基礎部分が、本能に根差している事は言うまでも無いですが、種族
保存の本能としての恋愛、いわゆる「欲求としての」恋愛を考えます。
 ストレートに言うと「性欲中心の」恋愛感情。

 抱きたい抱かれたい、ぶっちゃけて言うと『子供作りたい』って話。

 これを仮に「有るべき姿」と考えます。
 正しいとか好ましいとか言ってるんじゃないですよ(^^;
 それがそこに有る事の理由が良く分かるってぐらいの認識です。

 つまり、無いと困るんですよ。
 子供が産まれて社会が続かないと、人類が種として生き残れないですので。
 人類が人類として存続するための「必要悪」が「恋愛感情」だとも言える。
 いや別に、ヒトがヒトを好きになって悪いって言ってる訳じゃ無いんですが(^^;
 無いと困るから有るし、今までそれに従ってやってきて上手くいってたハズなんです。

 対立する概念としてヤヲイを好む女性の心理、また人外少女に萌える男の心理っての
が有ります。
 こっちは微妙にズレてるんですな。
 人類の種の保存には役立たない一種の疑似恋愛感情

 ホモとヤヲイは違います。
 ホモは現実ですがヤヲイはファンタジーですから(笑)。
 ヤヲイはホモを奇麗にストーリーにのっけてるってな話しじゃ無いんですよ。
 別物と考えた方が良い。

 同じように、人外少女は現実の女性の代替品ではありません。
 女性は現実なんですが人外少女はファンタジーです。
 んで、女性を模して人外少女ってキャラクターが好まれてるわけでもないんですな。
 これもやはり、別物と考えた方が良い。

 ヤヲイと人外少女。
 これらに対する「萌え」に垣間見える共通項ってなんだろ? てのがこのコラム。

 相変わらず前置き長いです(笑)。


 ヤヲイは蔓延してます。
 なんだイキナリと思われるかもしれませんが、魅力的な男性キャラが複数登場するド
ラマ、アニメ、マンガと言った虚構。また複数の男性による芸能グループ。
 そういったモノが存在すれば、それをヤヲイ化して楽しんでるヒトが必ず何処かに居
ます。

 ほぼ間違いなく(^^;

 これを現実の男性が、ヤヲイを好む女性に向かって「不自然、不健全な趣味」と糾弾
するのは大きな間違い。
 別に彼女達は、現実の男性に対する性欲の代替としてこれらの「ファンタジー」を楽
しんでるんじゃナイんですよ。
 そこのところ間違えると永遠に理解出来ない。

 彼女達は「生殖と切り離された性欲」または「恋愛」に安心して没頭してるだけです。

 女性が「女性として好みの男性キャラクターに抱かれる」事を夢想するのはある意味
健全なんですが、彼女達はそれでは安心しないんですな。
 男×女のカップリングを支持する女性も大勢居ますけど、ヤヲイが好きな女性はそれ
では「飽き足らない」んです。

 何処に不満が有るのか。
 抱かれてるのが「オンナ」って点が不満なんですな(^^;


 ヤヲイに発揮される「萌え」は一種類じゃ有りません。

 一方に、受けと言われるいわゆる「女役」のキャラクターの方にヤヲイ趣味の焦点が
当たりやすい、「○○総受け」なんてカテゴライズが有ります<有るんです(笑)

 受け役のキャラクターを限定し、攻め役のキャラクターは限定しない。
 この視点でヤヲイを楽しむ時、主役となってるのは「受けキャラ」の場合が多い。
 つまり、読者の立場で感情移入して楽しんでいるのは受けの「立場」なんですね。
 受けキャラは彼女達の身代わりなんです。
 恋愛構造に代入される記号として、受動的な立場でありながら肉体的な女性性を排除
した存在が受けキャラ。
 だから当然、魅力的で愛されます。可愛いです。
 どこか女性的な感性の持ち主だったりします。性格は悪い場合も有りますが(笑)。

 受けキャラに萌える彼女達。
 彼女達は受けキャラの魅力にストレートに萌えてる訳じゃ無い。
 その「立場」や「役割」に萌えてるんですな。
 攻めキャラのイイオトコが血道を上げる、女じゃないけど愛されるキャラクターに。


 もう一つ、ヤヲイに特徴的な萌えが有ります。
 さっき言った受けキャラへの没入、感情移入的な萌えの対極に、攻めキャラに感情移
入して受けキャラをどうこうしたいと言う欲求の萌えも有ります。
 こちらはトランスジェンダーの表れかと思います。

 彼女達の性欲の対象は「オトコ」です。
 攻めと受けに分解されてオトコの記号がバラバラに分解されてます。
 でも、どっちもオトコ。女性性が介入する余地は残ってない。
 オトコに萌える場合にも、自身の女性性を一旦排除して、記号としてのオトコすなわ
ち攻めキャラに没入して受けキャラと恋愛する。

 構造としては「捻じれ」てます。
 回りくどいんですよね。迂遠な構造をわざわざ用意して、周到に女性性を排除した上
で虚構の恋愛を描くのが、ヤヲイというファンタジーな分けです。

 なんでか?
 簡単です。
「恋愛」したいからですな。

 では何故、女のキャラクターの立場に萌えて、女のキャラを主役にしてファンタジー
を作らないんでしょうか?

 ここまで来ると言うまでも無いですね。邪魔なんですよ、「女」って定義が。

 言い換えると、「無色透明な存在」つまり「女としての役割を離れて」恋愛したい。
 けれど「私」や没入すべきキャラクターが「女だから」愛されるのでは不満なんです
ね。

 女って符合には色んなモノがくっついてきます。好むと好まざるとに関わらず。
 平たく言うと子供を孕んで産んで育てる性が「女性・性」です。
 女性は女性であると同時に、将来発揮されるであろう母性を期待されて恋愛の対象に
なっちゃうんですね。
 これが、我慢ならない。
 将来生まれる子供とセットで「女」では駄目なんですよ(^^;

 これはジェンダーの問題なんですね。
 性差に止まらない、性的役割・生物的分業の差違の問題です。
 彼女達は、性的役割を脱ぎ捨ててもなお愛される存在に憧れちゃうわけです。

 つまり、もてない女の子がヤヲイに走るって図式は成立しないんですよ(^^;

 先にも言いましたがジェンダーの問題なんですな。
 自分に期待されてる性的役割を離れて恋愛したい、愛されたいって願ってるわけです
から、現実に男にもてる・もてないはこの際「無関係」なんです。
 むしろ、男にもてる自分の中に「期待されてる母性」に気付いてヤヲイにのめり込ん
じゃうヒトも居るでしょう。もてない方が素直に「もてる女」に憧れるかもしれない。
 ヤヲイの世界に入り込んじゃってる女の子にとって、現実に自分が持ってる性的役割
は、出来れば脱ぎ捨ててしまいたい重過ぎるコートみたいなもんなんです。


 人外少女萌えの方を考えます。
 こちらは男性の立場の萌えのサンプルとして取り上げます。
 現実の女性なんかより、おおよそリアルとは言いかねるキャラクターとしての少女の
方に萌えてしまう男性の方の心理。
 全てのキャラクターが大体同じモノを内包してるんですが、その中でも特に、設定か
らして「人間外の少女」ってキャラクターに焦点を当てます。

 いわゆる萌えを狙ったキャラクターに共通するのは、リアリズムではないんですね。
 現実に居そうな女の子を見事に活写したからって、萌えるわけでは無いんです。

 アニメ声と言われる声のトーンが有ります。おおよそ成熟した女性のモノとは言い難
い声ですな。手足のシェイプも等身も、もっと言えば顔の造作だってリアリティとはか
け離れてるキャラクターが多い。

 我々はキャラクターの持ってる記号に萌えてるんですよ。
 で、その記号ってのは「リアルな女らしさ」とは違った所に有る。
 むしろリアルな女から離れた方が「受ける」。

 現実の女性と恋愛すると、男性にも性的役割が期待されます。
 成熟した男としての役割を持たされるんですな。

 言うまでも無く、それは父性です。

 女性のモノほど分かりやすくはないですが、気付かないフリをして見過ごすには少々
大きい。
 性的役割は一人の女性と家庭を築いてそれを守る事を要求してます。
 で、男はそこは人生の墓場だと思ってる(笑)。

 恋愛に真面目と不真面目が有るのかどうか私は知りませんが(笑)、それほど本気でな
い相手から絶対言われたくないらしい一言が有るそうですね。私は知りませんが(爆)。

「出来ちゃったみたい」
「アナタの子供よ」

 生きてる以上、性欲、つまり本能と性的役割は切り離せない。
「しちゃった」んなら「しちゃった結果」の責任を取らなきゃいけない(^^;
 それが、男性に課せられたジェンダーです。
 孕んだ女性が確実に「母性」を負わされる程には強力ではありません。
 強力ではありませんが、でもやっぱり期待される「父性」ってのは確かに存在するん
ですな。

 ここで、人外少女って言うファンタジーが生まれる。
 それは「孕まない女の子」っていうファンタジーです。
 性欲の対象としての記号は保持しつつ、性的に成熟しないってコトですが、性欲と再
生産が結びつかないってファンタジーなんですな。

 幻想です。
 理想です。
 有り得ません。

 シツコイですか?(笑)

 でも、有り得ないから希求するんですね、我々は。
 男に父性を求めない、永遠に大人にならない少女っていう幻想。
 それは、性衝動の欲求にしたがって「蹂躪」しても「責任問題」が発生しないってい
う幻想でもあるんです(笑)。

 キャラクターはみな少女なんですよ。
 成熟しない。孕まない。「責任とって」と言わない(笑)。
 それを男にとって「都合の良いオンナ」の記号と言われてしまえばそれまでです。

 でも、それには反論したくなる部分が有るんですよね。
 我々は別に「女性・性」、オンナの記号を求めてるんじゃないんですよ(^^;
 出来れば現実の女性なんて「不便極まりないモノ」以外のモノを、って求めた結果が
ああいうモノなんですな(笑)。

 つまり現実の女性の「デッドコピー」じゃない。
 別物なんです。
 ホモとヤヲイが別なように!(笑)

 我々は女性が持ってる種々の記号に萌えます。
 整った顔立ちに甘えた声、細い手足のシェイプや曲線的なウェスト・ヒップのライン、
豊かなバスト。
 男性的な無骨さとは対極にある、柔らかで滑らかなボディスタイルに欲情する。
 また人外少女は理性的・論理的では無いセリフを喋ったりしますね。
 ほぇほぇ〜とかうぐぅとか〜だにょ、とか(笑)。
 精神的に成熟していない(つまり大人で無い)事の現れがああいった舌っ足らずなセリ
フが示してるモノでしょう。
 それらは、庇護されるべき弱者の記号です。

 それらを「都合の良いオンナ」の記号と言ってしまえばそれまでですが、我々は別に
現実の女性のそれらを求めるとは限らない。
 現実の女性を相手にそれらの要素、つまり記号に欲情する事は、性的役割への入り口
なんですよね。役割を負いたくない我々にとっては、劣情も性的役割に連なるトラップ
の一種なんです。

 だから我々は、女性・性を排除したオンナの記号に「安心して」萌える。
 その先に性的役割のトラップが無い恋愛対象に、ですね。
 現実の女性より遥かにストレートに我々の欲求を具現化したモノがああいうモノなん
です。


 つまりですねえ、現実の恋愛とは別の次元に存在するのが「萌え」なんじゃないんで
しょうか、てのが言いたい事なんですよ。
 もしろ、現実の恋愛の方が「純粋な萌え」の「不完全なコピー」なのかもしれない、
とすら思ってしまいます(^^;

 現実に、自分が受けの少年になって男に抱かれるなんて事は出来ません。
 現実に、自分が攻めの男になって可愛い少年を抱くなんて事も出来ません。
 現実に、歳を取らず成熟しない、永遠の少女を手に入れるなんて事も出来ません。

 だから我々は、幻想の中に手に入れる事の出来無いフィギア(文字通り「記号」です)
を夢見てそれに「萌える」んです。

 女のまま理想的な男と結婚して、腹を痛めて子供を産んでも、歳を取って旦那の性欲
は別の若い女に向いて、母親を終わった自分は役割を終えたように枯れてしまう。
 そんな現実。

 好みの女性をモノにして、楽しい夜を重ね、そのうち飽きても子供が出来てて、一生
子供と家庭の為に稼ぎを運ぶだけの人生。
 そんな現実。

 もし「どちらかだけを」実際に手に入れられるのなら、現実の幸福と幻想の記号のど
ちらを選びます?(^^;

 もっと分かりやすくしましょうか。
 クラスで一番可愛かった「あの娘」とリアル・マルチ。今欲しいのはどっち?

 #ここでアヤナミを引き合いに出すのは「卑怯」なのであえてやりません(笑)。

 我々(人外少女やヤヲイといった虚構を求める我々です)は、現実に起きうる恋愛のド
ラマに、既に純粋なロマンを感じなくなってしまったのかもしれない。
 メディアが発達してあらゆる部分で欲望を助長しながら、現実の困難さもまた情報と
して知り過ぎるぐらいに「知ってる」んで。

 だから性的役割とは切り離せない、制約に満ちた現実の恋愛には既に興味を半ば失っ
てる。興味は失わないまでも、それを求めるよりはもっと純粋なモノを見付けてしまっ
た。もしくは産み出してしまった。

 平たく言うとそれは「性的役割」と「性欲」の分離なんです。
 分離された純粋な欲求が「萌え」なんです。
 母性や父性を伴わない、つまり責任や役割を伴わない、純粋な恋愛や恋愛対象を求め
てるんですな。

 夢想するもっとも純粋な恋愛の形態がヤヲイであり、もっとも純粋な恋愛対象が人外
少女ってわけです……激しく不健全ですねぇ(笑)。

 我々の世代はメディアと結婚してしまったのかもしれません(-_-;)
 出生率は当分上向かないだろう、って予言をこのコラムの上半分の結論とします(爆)。

 下に続きます(^^;

次回へ続く▽

制作・著作 「よごれに」けんけんZ
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