No.13 01/11/28 ◆ 内輪誉め

けんけんZの「このエヴァ小説が凄い」(笑)

【 夏の終わりのコンチェルト・考】
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一年ぶりのコラム更新ですが(^^;

 今回のコラムは内輪誉めです。更に言えば「広報活動」です(^^;
 そーゆーのが嫌いな方は読まない事をオススメします。
 読んでから「身内を持ち上げるのはけしからん」とか言わないで下さい(笑)。

パイオニアへの感謝

 私もこれまで沢山の「逆立ちしても敵わない」エヴァ小説と出会いました。
 一番最初に衝撃を受けたのは林 隆博さんの「EVANGELION Another World」
 読んだのは96年冬で、まだ世間一般も春には映画で「エヴァが完結する」と思っていた頃の事です(笑)。
 97年の夏に公開されたEOE以前に全て完結しているという一種の「古典」ですが、これに出会わなかったら恐らく二次創作を始める事はなかっただろうと思います。

 その次はTakeさんの「EVANGELION -BEGINNING-」とDARUさんの「時が、走り出す」で、どっちを先に読んだか今となってはもう覚えてませんが、どちらも春の映画より前に読みました。
 自分が書く以前の純粋な読者の立場で「すげー」と思ったのが上記三作品です。
 他にも「Genesis Q」のカウンターペースに驚いたり、「かくしエヴァ」の更新ペースに驚いたり、「日アス」の濃さに驚いたりして「この世界は面白そうだ」と思ったのがエヴァ小説への取っ掛かりになりました。

 自分も書き始めた春の映画から夏のEOEまでの間では、日アスへ投稿された鈴木慶三さんの「ある少年の自慰に至る経緯」が最も印象深かった作品で、EOE以降では秘書そおこさんの「私を月まで〜」シリーズが衝撃的でした。
 その後は徐々にエヴァ小説を読む数が減ってめっきり「不真面目な読者」として今日に至っておりますが、くわたろさんの「そらの下で」や、加古いくさんと漣たきをんさんの「EVANGELION:Remembrance」等は「自分には書けない」という意味で、羨ましいと言うか妬ましいと言うか、「いつかこーゆーのも書いてみたい」と思ったりした作品です。以上、今ぱっと思い付いたのを書き出しましたが、思い出そうとすればもっと書き出せると思います。
 それこそリストにして整理しなきゃいかんぐらい(笑)。
  #評価で揉めるといかんので星は付けませんが(爆)。

 やはり「印象深い」という主観的かつ感覚的な評価では、エヴァ小説に自分自身が「慣れてしまう」以前のモノの方が深く記憶に刻まれてるんですよね。
 例えば冒頭に上げた三作と、当時人気だった三サイトに関して言えば、自分自身のエヴァへの取り組みが何処まで行っても「見上げる目線」でしか見られない(^^;
 何故なら先達を目にしていなければ今の自分が無いと分かりきっているからで、やはりそれだけパイオニアというのは、注目され良い意味で周囲に影響を与える存在なんだと思います。

 しかし一方で、だんだんスレて来るというか感覚が麻痺してきて、例えば96年当時であれば、アイデアやシュチエーションだけで読者を驚かせる事が出来たかもしれない作品も、今となっては多くの「バリエーション」の中に埋没してしまっていると思います。

 そんな中でも改めて「どんな世界にもスゴイ奴が居る」と感心するより呆れたのが、今回のコラムでご紹介したい「凄いエヴァ小説」です。

御大(笑)

 エヴァ小説界の平均年齢を引き上げていると言えばしのぱさんとトータスさんのお名前が上がると思いますが(笑)、お二人ともその「安定感」にいつも脱帽させられます。なんと言いますか、これはもう「年の功」なんでしょうね(^^;
 何を書かれても「裏打ちされたもの」を感じます。

 執筆ペースや扱うテーマの幅広さからその安定感を一際強く感じるのがトータスさんで、しのぱさんには歳に似合わぬ(失礼)「ぴゅあな感性(笑)」を感じます。
 しかし、トータスさんが「某所」でコツコツと更新ペースを維持されている一方、
しのぱさんの活動がホームグラウンドである「CREATORS GUILD」では途絶えてしまって早二年になります。

 けれど実は、しのぱさんのエヴァ小説に対する真摯な取り組みは、今も場所を移して継続中なのです。
 新たな場所とは、創作サークル「Sounds of Singles」。

 思いっきり手前味噌で恐縮ですが、私も参加しているこのサークルで、しのぱさんと同席する幸運と名誉に恵まれた事に感謝を表したいと思います。

以下宣伝となります(笑)

 しのぱさんも作品を発表している「Sounds of Singles」(以下SoSと表記)のエヴァをテーマにしたアンソロジーシリーズ「Evangelion Complex.」は、2000年夏の00、冬の01、そして2001年夏の02、冬の03と展開し以下も続刊の予定。

 そこで連載されている「夏の終わりのコンチェルト」に関して以下思う所を述べ
たいと思います。
 #つまり今まで前振りでして、相変わらずフリが長くて申し訳ないですm(_ _)m

「夏の終わりのコンチェルト」は、エヴァ小説の分類に従えば「異世界モノ」とか「別設定」と呼ばれるモノです。キャラクターの設定をエヴァ本編から借用し、別の世界観と時間軸の中に放り込んだ物語。
 「夏の終わりのコンチェルト」は優れた少女漫画的作品だと思う、というのはEvangelion Complex.00の編集作業を担当した2000年夏に表明した感想です。今もその思いは変わっていないのですが、何が少女漫画かってな部分をいまさらですが振り返りつつ、この優れたエヴァ小説の紹介し広く推薦したいと思います。

「夏の終わりのコンチェルト」は少女漫画か否か?

 ようやく本題ですが、私はこの作品の第一部を編集者として取り扱いました。
 2000年夏の「Evangelion Complex.00」はCD-Rを媒体としていましたが、HTMLの編集とオーサリングを担当していました。
 txtで原稿頂いて一読して、編集しながら二読して、誤字脱字を探しながら三読したんですが、思った事は上記の通り「少女漫画だなー」って事でした(^^;

 それも昔よく有った、いわゆる古典ジャンルの少女漫画。
 私自身が好きな少女漫画のパターンでも有るんですが、
「天才的な才能を持つ主人公」が居て「その芸術性を高める相手(恋人?)」ってのが居て「芸術を競うライバル」てのが出てきてってやつ(^^;
 いわゆる「お約束」っつうパターンな訳ですが。

 主人公はたいてい人間的に何処か変なんですな(笑)。
 まず自分の才能には確実に自信を持っていない。
 表現する事に悩み、迷い、時には挫折してそれでも「私にはこの道しかない」っていうようなドラマが有って。
 俳優だったりピアニストだったりダンサーだったりバレリーナだったり、ドラマの主題となる職種は色々なんですが、物語の構造は似たようなもので。
 皆さんもそんな漫画読んだ事有ると思うんですよ。……有りますよね?(^^;
 古典では「ガラスの仮面(俳優)」とか「スワン(バレリーナ)」とか。
 個人的に好きな槙村さとるでは「ダンシング・ジェネレーション」みたいな。

「夏の終わりのコンチェルト」には同じ構造を感じたんです。
 ここではシンジが主人公でチェリストで、アスカがピアニストで……これ以上はネタバレになるので止めておきますが、エヴァキャラが皆、音楽に関わる何らかの立場に居てっていう「異世界設定モノ」なのです。

 この手の構造を取った作品のキモは、「主人公の芸術性そのものを伝える」事。
 そこがキモであると同時に「難しさ」でもあるんですが、これって凄く高いハードルなんですよね。
 バレリーナの「動き」にしろ、ピアニストの奏でる「旋律」にしろ、俳優の「演技力」にしろ、文章にした場合の説得力、伝わる「気持ち良さの」限界ってモノが有るんです。

「夏の終わりのコンチェルト」の「物語としての表現」を考えた時、一番簡単なのは映画にしちゃって、ホントに「すげーチェリスト」や「すげーピアニスト」の演奏を画面にかぶせちゃう事です。これはもう文句の付けようが無い(笑)。
 素人が聞いてもぐうの音もでないほどすげー演奏が出来る主人公、って言う設定の為にぐうの音もでねーほどすげー音楽を使えば良いんです(笑)。
 ……力技ですな。でもSS書きにはこの力技は使えないんです(^^;
 使いたかったら映画監督になるしかない。

 漫画家で大家って言われる方々が、そこをどうやってるかって言うと、ひたすら丁寧な筆致で「それを読者に分からせる」しかないんですよね。
 バレエのマンガ書いてるヒトはホントにバレエを研究してると思うんです。
 それは自分がバレエを踊るための勉強じゃなくて、分からん素人でもバレエの面白さが分かるように伝えるための勉強、てのをしてる。
 ややこしいですが、単にバレリーナがバレエのマンガ書いても多分つまらないって事なんです。踊っている楽しさ、バレリーナ自身の気持ち良さと、それを読んでる読者の気持ち良いポイントはどうしたって「ズレる」んで。

 どういう事かと言えば、多分バレリーナが書いたバレエマンガが面白く読めるのはバレリーナだけって事です。それはバレリーナにだけ分かる高尚な芸術性を備えているんだろうけど、素人には何の役にもたたんのですね。
 惜しい事では有りますが仕方の無い事で(^^;
 このパターンの少女漫画の難しさがそこに有る。
「知ってりゃ書けるとは限らない」けれど「知らなきゃ確実に書けない」んです。

 フリが長かったですが、そこが上手いんですよ>しのぱさん

 私にはピアノの演奏の良し悪しなんて分かりません。
 そりゃ聞いてて上手いなーとか、気持ちの良い演奏だなーって事は有る。
 けど、どうすりゃ上手いのか、どういうのが気持ち良い事なのかは知り得ない事象なんです。でもそこを知らなきゃ物語として「気持ち良い音が鳴っている場面」は書けん、という難しさ。
 私も作中でシンジにチェロを弾かせた事が有りますけど、私自身はチェロなんて「触った事も無い」です(苦笑)。実物をしげしげと間近で見てみた事だって無い。だから上っすべりしてるし書いてたって楽しくない(^^;

 「夏の終わりのコンチェルト」では、シンジがどんなふうにチェロを扱うのか、そこから繰り出される旋律をどんな精神で探っているのか、そんな事がしのぱさんの文章のおかげで分かるんですね(もしくは分かったつもりになれる(笑))。

 そんなシンジの演奏が素晴らしいって事は、これはもう想像でしかない。なんせ聞いて無いんだもん(笑)。でも「素晴らしいに違いない」って読者が確信するだけの説得力が有るんです。
 繰り返しになりますが、このジャンルの物語の気持ち良さのキモはそこ。
「こいつの芸術性は素晴らしいんだ」と納得して読み進められるかどうか。
 実際には見る事が出来無い「芸術性」に触れた気分になれるかどうか。
 その点に掛かっています。

 しのぱさんの書くアスカのピアノ、シンジのチェロ……etc。
 どれもドキドキするほど素晴らしい演奏が、「読者の中」で鳴るだけの筆致が確かに有る。私のような凡人では「作者の中」でだって鳴る事の無い音楽が、文章に宿っている。それは、文章の表現力だけじゃない、しのぱさんの音楽への感性、知識、そして経験に裏打ちされていると思うんですよね。
 同じ書き手としては、素直に羨ましいです。
 それだけの経験があるしのぱさんの人生が羨ましい。
  #そんな事は言うだけ無駄です(笑)。

 そんな訳で、この「気持ち良さの続き」を是非また味わいたいと思ってしまう。
 私にとっては間違い無く「今連載中のエヴァ小説」で一番面白く、一番続きが楽しみなのが「夏の終わりのコンチェルト」です。一読者として、この物語に出てくるシンジやアスカやレイの奏でる「音楽の」ファンなのです。

Web公開の是非

 仮にも代価を頂いて販売したアンソロジーの連載作を、連載途中でWebへ転載する事への抵抗感というのは、SoSの編集部内にも有りました。
 そうは言っても、第一部が載った「Evangelion Complex.00」や第二部が載った「01」は既に売り切ってしまって、欲しいとおっしゃる方が居てもどうしようも有りません(^^;
 しかし、この物語は「埋もれさせるには惜しい」価値が有る。

 正直悩みました。

 今回Webへの再録を編集部内で最初に主張したのはかく言う私でして(笑)、その意図する所とは「広く共有されるべき作品が有るとすれば、本作は正にそれである」との信念です。
 そうは言っても他の収録作を全部Webに載せる訳には行きません(^^;
 印刷媒体を撤退し活動の場をWebへ集約するならまだしも、まだ在庫の有るアンソロの収録分まで公開する訳にも行きません。
 折衷案として「売り切った後、一年以上」を経過し「やはり公開すべき」と判断されるなら、連載中でもWebに上げようという事になりました。

 ある意味自分で自分の首を絞める訳になる公開ですが(笑)、弱小サークルに過ぎないSoSの「エヴァ小説への恩返し」として、この作品は広く読んで頂きたい、と考えております。
 ご購入頂いた読者の皆様には、平にご容赦願いたいと存じますm(_ _)m
 また、未見の方には「一見の価値有り」と「声を大にして」言いたい。
 もちろん続きが気になった方には新刊をお買い上げ頂きたい(笑)。

「エヴァ小説における一つの到達点」としてこの作品が皆様の記憶に止まるとすれば、一読者(ファン)として、また作品の推薦者として、これほど嬉しい事は無いと思っております。

 以上「サークルの広報」なんだか「ファンの公開感想」なんだか良く分かりませんが、多分両方です(笑)。ある意味「ファンのワガママ」で公開する訳です(^^;
 ぶっちゃけた話し好きなんですよ。
 だからみんなにも好きになって欲しい(笑)。
 しのぱさんにご迷惑をお掛けする事が有れば私の責任です。

 多分迷惑掛けるので先に謝っておきます。ごめんなさいm(_ _)m

SoSのオフィシャルページはこちら↓
次回へ続く▽

制作・著作 「よごれに」けんけんZ
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