No.14 02/03/19 ◆ 萌え論:その3

萌え領域の最前線 上

【 萌え領域はどこまで広がるのか?】
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 久しぶりに電波なコラムの更新であります。
 今回はツカミは無しです(笑)。

萌えの範疇

 「萌えの領域は何処まで広がるのだろうか?」等というかなり無駄な事をここのところ考えてるわけですが、思い至ったのは「萌える対象」が異性である必要や、虚構の中のカップルが「男×女の組み合わせ」である必要性が、実際のところはずいぶん薄いのではないか、という事です。

 一つの材料は萌えキャラの無性化という現象。
 非人化と言い換えても良いわけですが、人外キャラ=萌えキャラという図式がアニメエロゲマンガ小説と領域を拡大しつつ定着しつつあると見ます。

 理想の萌えを追求すれば、成熟と共に萌え対象としての価値が下がる生身の女性に対する性衝動は、萌えの理想から遠い。
 もはや「リアルである事」は「萌えの理想」にとっては障害でしかない。

 もう一つの材料は「お尻エッチの普及率(C)ろじぱら」に象徴される性タブーへの挑戦。
 まごう事無く変態プレイであるはずの「お尻エッチ」ですが、アナルを性器の代替に使わざるを得ない歪んだ性風俗産業の規制により、オーラルSEXも普及し尽くした感が有ります。
 AVではもはや二穴プレイは当たり前になり、タブーをタブーで無くする「普及による価値の低減効果」が既に表れていると見ます。

 そのどちらも、動機は生殖行為の無性化だと思うんですね。

 今まで書いてきた通り、「健全な性欲」を「無価値化する」流れは止まる所が有りません。もう一歩進めば「成熟した男女による健全な性交渉」とは、保健体育の教科書に登場する「子供を作る行為」でしか無くなる気がしています……と言うかもうなってる(笑)。
 避妊前提の性交渉は本来「健全」では無いので(^^;

 ゴム被せるのも外に出すのも、ピルを飲ませて中出しするのも「生殖」に関係しない性行為である点では同じです。
 つまり「ちゃんとした性行為」は性欲産業の「飯の種」から外れてしまうんですよね。

 私はこれを「性欲のドーナツ化現象」もしくは「性欲の空洞化現象」と捉えていますが、当たり前の事が陳腐化し無価値化していくのは流行文化の宿命ですから、萌え産業も風俗産業もファッションの枠内にある限り逃れられない宿命ですね。好みの問題ではなく、しょうがない事と考えます(^^;

 では、空洞化の次に来るのは何か、を考えないと考察の意味が無いんで考えるわけですが、これは流行ですから予測は不可能なんですよ(^^;
 各種のドーナツ化現象と同じく「周辺領域の隆盛」を当てはめて考えるわけなんですけど、その「周辺」と言うのが恐ろしく広い>性欲

 例えばロリ規制法を考えてみます。子供の人権を守る事は必要不可欠ですから、性産業の搾取から子供の肉体を防衛する措置は当然必要だと思います。
 ですが、すると逆に「規制によって守られた実体」が手に入らないが故に、虚構の中の代替物が「陳腐化しないで長持ちする」という効果が考えられる(^^;
 さらに、少女買春が国外でなされた行為であっても処罰されるとなれば、もはや虚構の中に逃げ込む以外に無い。
 私はロリコン趣味を一概に「悪い」と言うつもりは有りません。
 犯罪行為は別として、そういう性癖が産まれた下地は実は「ドーナツ化」の方に理由がある可能性が考えられますから、個々のロリコン趣味者を糾弾した所で始まらん話でも有る(^^;

 大人の男女がフリーセックス化すればするほど、ロリに価値が産まれる。
 子供を性の搾取から守ろうと規制を強化すればするほど、価値が高まる。
 禁酒法時代に酒の密造を行ってマフィアが財政基盤を獲得したように、強力な規制や禁忌は「価値の増大」を産むんですね。

 もう一つの「人外萌え」は更に明確化するでしょうが、こちらは結果的にそれで価値を失うかもしれない。
 例えば3Dキャラをアイドル扱いしてみたり、2Dキャラを実体化する如く精巧で実物大のフィギアが出回ったりしてますが、その行き着く所はやはり価値の解体でしかありません(^^;
 メイドロボが普及し「安物家電」と化したら誰も「マルチ萌え」とは言わなくなるジレンマ(笑)。

 さて、AFにロリに人外と「性欲の周辺」を眺めてきましたが、これまで敢えて踏み込まなかった領域が(^^;

 言うまでも無く「やおい文化」ですね。
 どうも次の波はここから来るんじゃないか、と言うのが私の読み。
「女性の為のヤオイ読み物」の商業的成功は今更言うまでも有りませんが、対女性の性欲産業としては、もはやノーマルなレディスコミックを駆逐するイキオイで各種出版業界がこれに取り組んでます。
 んで、成功してる。これも当然の帰結なんですな。

 何故ならヤオイは陳腐化しないんですよ(笑)。

 女性の望む「男しか出て来ない物語」の効用は陳腐化の防止という観点で、供給側にも望ましい。
 また、生身のホモビデオをヤオイ腐女子が競って手に入れようとするかと言えば、これは絶対しないんですわ。「リアルな男」を希求しないからヤオイが有ると言っても良い。それはまごう事無くファンタジーであり、ファンタジーである所に価値が有るとも言えます。それがヤオイなんですな。
 だからマジホモを感じさせるヤオイはヤオイとしては欠陥商品です(笑)。
 マジホモにコミットしていく「リアルの追求」は、ファンタジーを離れて消費されるリアルさに食われてしまう「ヤオイと言うジャンルの自殺行為」ですから、そっちへ向かっちゃいかん。向かわないからこそ、永遠にヤオイは「周辺領域」として成長が見込める部分が有ると思ってます。

萌えとヤヲイの融合?

 さてここまで考えまして、必然的に今度は「ヤオイの周辺」に「男性向けヤオイ」というジャンルが産まれて「男の為のヤオイ」が男女の性欲産業の中間に育つ可能性が有るんじゃないか、と思い至りました(^^;

 つまり「萌える相手が女性性を備える必要が無い」もしくは「女性性が無い方が良い」のであるならば、別に性的に未成熟な段階の「女の子」や生身以外の「機械」や「それ以外の器官」まで動員して「萌える対象」を女の子のカタチにとどめる必要は無いんじゃないかと。

 世間の大勢がそれに気付けばトレンドが一変する可能性が有る(笑)。

 もちろん男性向けだからと言って女性向ヤオイとカタチを違えてリアルを希求する必要は無い。むしろ今まで通りのモノで入り口のハードルさえ低くしておけばオケ。そのぐらい「萌えとヤオイは近付いている」と見ます(^^;

 では具体的にどうハードルを低くすれば良いかと言えば、これはまずヤオイに出てくるキャラの一方を「萌えキャラ化」する必要性が有ります。
 例えば成人男性同士のヤオイではハードル高い(笑)。萌えに擦り寄る為には「ショタ」であった方が入り易い。
 性欲の対象にしにくい順位が「男>男の子>女の子>女」でしょうから、男性向けヤオイのショタ化は必然だと思います。

 これは同時にヤオイをマジホモから遠ざける効果も有る。
 マジホモと言うのはある程度の確率で「リバ有り」の世界なんですな。
 つまり役割が固定化されない「性欲のフリーゾーン」として成立してる。そこにコミットしていくとヤオイは自滅するんですね。リバ(裏返しの意)を認めるヤオイも有りますが、それは男性向けにはなりにくいと思います。
 何故なら求められるのは「代替物として萌え対象」ですから、自分が愛される必要は(女性向と違って)始めから無いんで無視した方が成立し易い。

 だからヤオイを謳いながら実体は「少年愛」の領域になる。女性性の代替物としての少年。それは「安心して萌えられる対象」の究極のカタチかもしれない(笑)。
 ま、何も少年愛なんて新しいモノでもなんでもアリませんで、明治までの日本は衆道文化に寛容でしたし、もともとそれを禁ずる宗教的な圧力も有りませんし、一旦流行れば認知されるのにもそれほど抵抗はないんじゃなかろうかと。
理論と実践(苦笑)

 とまあ、幾らゴタクを並べた所で考察の為の考察に意味は有りません(^^;

 有りませんので「実践で」その効果を計ってみよう、と制作したのが今回書いた「Dilemma」です。このシリーズがスカトロ、初モノ調教にアナルプレイとレベルアップしてきたのは男性向けヤオイの為の布石でもありまして(爆)、お尻を使うエッチが「萌え」として成立するなら「そこに性差は無い」かもしれない、という可能性へのチャレンジです(^^;

 加持×シンジというカップリングは「男性向けヤオイ」というコンセプトから導き出される必然なんです。だからカップリングどうこうと言うよりもこのお話では「シンジの萌えキャラ化」にもっとも相応しい組み合わせとして加持を選んでます。

 カヲルだとシンジと近すぎるんですわ。近すぎて書きにくい。
 カヲルで書くならむしろシンジを主人公にし、カヲルを理想の恋人に据えた「感情移入の為の代替物」としてのヤオイ、つまり女性向の方がやり易いと思うんですよ。
 だから女性向ヤオイの世界でEVAキャラでヤオイと言えばカヲシンになるのもこれは必然であろうと思います。
 んで私としては女性向ヤオイは端から眼中に無いですので、加持シン。

 物語としてはこれまで通り加持の一人称です>「Dilemma」
 加持の視点でしか書かない意味も同じ。萌えキャラとしてのシンジは「外から眺める対象物」であった方がハードル低いんですな。
 しかし、余りに萌えに擦り寄った「ショタ理想としてのシンジ像」を提示してしまうと、それはヤオイの効果を計る手段として片手落ち。ですから出来る限り「女の子みたいなシンジ」で無く「本編通りのシンジ」に近いモノにしようと四苦八苦しました。

 とは言え、エヴァの主人公で有るシンジがファンフィクションでも主人公である事が多いので、このパラダイムシフトは実は「男性向けヤオイ」というコンセプト以上に受け入れにくいかもしれない(^^;

 加持にシンクロして読んでもらえれば良いのですが、シンジにシンクロしちゃうといきなりハードル高くなってしまいます(笑)。
 そう読まないように予防線を引いてはいるんですが……やっぱり難しいでしょうねえ。シンジになったつもりで読むと書いた自分でもかなり気持ち悪いシロモノです(爆)。

 まあ、次に来るのはそこだ、とも思うんですが(^^;
 つまり女性の為の感情移入の手段であった「受けキャラ」に、男性が視点を置いて「シンクロしつつ萌える」物語。こっちは今作以上にハードル高くて難しいと思います。思いますが……避けては通れない道でも有る(笑)。
 何故か「そこまで進んではいけない」気もしていますけど(爆)、いつかは書いてみたいと思ってます。やって見てやっぱり男性向けになりそうにも無かったらその後で修正すれば良いかなと。

 実際には男性向けヤオイが「一般化するような時代になったら嫌だな」と思ってますが(爆)、どーもそっちに進んでいるように見えてしょうがない(^^;
 片棒担いでおいて嫌だも何も有りませんけどね(笑)。

 とりあえず「シンジきゅん……ハァハァ」な向きにはチャレンジして頂きたいと思います>「Dilemma」

 ただし、ヤオイ慣れた腐女子の方には「ぬるい」です、多分(^^;
 今回「男性向けヤオイが成立する可能性を探る」為に、割にゲロ甘いお約束方面にストーリー振ってますので、これまでのシリーズと「同じレベル」の調教モノを期待されるとツライ部分が有ったりします。

 と言うか、慣れた人には「単なるお約束プレイ」でしか無いです。
 自分の限界が「お約束」でいっぱいいっぱいだと認めるのは書き手として恥ずかしい限りなんですけど、書けんモノはしょうがないんで(苦笑)。
 「新人のデビュー作」って事で勘弁して頂きたいと思っております。

 さて、以上は昨年末に掲示板へ書いたモノをほぼそのまま使っております。
 が、しかし、実践してみて返ってきた反応により、私は上記の考察を組み立て直さざるを得ない事態に直面いたしました。

 てなアタリで続く(笑)。
次回へ続く▽

制作・著作 「よごれに」けんけんZ
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