▼Dominator act.2 |
「酷いじゃないか」 突然真後ろから声を掛けられて、アスカは驚いて受話器を落とす。 息を呑みながら振り返ると、シンジがトイレから出て来た所だった。 「アンタ……どうやって出たのよ」 「ドアを外したんだよ」 不貞腐れている割には必死でドアを叩いていると思ったが、どうやらトイレに行きたかったらしい。 自分の部屋に閉じ込められ、青くなったり赤くなったりしたであろうシンジを想像すると、少しだけ気が晴れた。 自分がタオル一枚なのも忘れて、シンジに歩み寄る。 「う……」 上気した肌に水滴を付けたままのアスカの姿に、気後れたシンジが一歩後ずさる。 「…………バカみたい」 じっと目を見詰め、そう言って鼻で笑う。 これがシンジだ、とアスカは確信する。 何故自分がシンジごときに狼狽えねばならないのだ。 閉じ込められた事に怒っていた筈なのに、目を合わせれば早くも負けを認めたようにオドオドした態度と作り笑いの向こうに隠れようとする。 そんなシンジが何故自分と同じモノを手に入れるのか……同じエヴァのパイロットだという事すら、納得出来た試しが無い。 それどころかシンクログラフは逆転し、今ではシンジが最も優れたパイロット――最良のチルドレン――として周囲に認識されている。 そんなシンジが、自分だけに許された「特別な一夜の記憶」まで手に入れたとすれば。 「加持さんに誘われたぐらいで何よ……アンタだけじゃ無いわ」 濡れた髪を掻き上げる。 シンジの喉が、ゴクリと動いた。 開いていた手が閉じ、固く拳を握り締める。 「だから何だって言うの? 自分の方が、って思ってるの? アスカは」 「はん、シンジの割には言うじゃない」 口では負けじと言い返しながら、その言葉が深く心に突き刺さったのを感じる。 何故、加持はシンジを自分と同じように扱ったりするのだろうか? シンジとアスカで比べられない事が有るとしたら、アスカに有利な部分が有るとしたら、その一点だったのに。 自分が女である事を歓迎した事など無かったが、それも加持との一夜を過ごすまでの事だ。 アスカは加持に縋っていた。 決して忘れる事など無い一夜の後、加持と二人になるチャンスを作れたのは数える程でしかない。 互いに満足出来る長さの時間を共にした事など、片手にも足らない。 それでも何も無いよりは、遥かにマシだ。 エヴァ以外に何も無いと思うよりは。 シンジに追いつけないチルドレンという立場しか持たないよりは。 だからこそ、シンジまでそれを手に入れる事が、許せない。 「アンタ見てるとイライラすんのよ!」 「……自分を見てるみたいで?」 「なっ……」 シンジの言葉に自分が傷つけられると思っていなかったアスカは、その科白に目を見開き絶句する事しか出来なかった。 アスカを睨み返すシンジの顔に、いつもの作り笑いは無い。 「アスカが嫌いなのは僕じゃないだろ。自分が嫌いなだけじゃないか……だから僕の事は放っておいてよ」 更に頭に血が上って目眩を感じた。 追い縋るようにシンジのシャツを掴む。 「もういっぺん言ってみなさいよ」 血走った目が至近距離でシンジを睨み付ける。 普段ならそんなアスカと目を合わせる事など有り得ないシンジが、見開かれた青い瞳を凝視し返す。 身体を縮める事も、首を竦める事もしない。 「何度でも言うよ。アスカは自分の事が嫌いで、勝手に僕と比べようとするから……」 パンッ、と乾いた音がしてシンジの頬が弾けた。 叩いたアスカの手の平までが熱く焼けるように痛む。 「アンタなんかと比べられたか無いわよ! 男のクセにどうしてアンタが加持さんと」 「だからそれがっ!!」 アスカの手を掴んでシンジが叫ぶ。 叩かれた頬を赤く染めながら、アスカが驚くほどの大きな声で。だが、目を見張るアスカの顔に、シンジは声のトーンを落とした。 「……関係ないだろ、アスカには」 シンジの顔から一瞬浮かんだ怒りが消え、諦めと憐れみが浮かぶ。 しかしシンジが示した憐憫の情が、逆にアスカを激昂させた。 「何よアンタ、勝ったつもり!? どうしてアンタが私を見下してんのよ」 「見下してなんてない。もうこの話は止めにしようよ」 握った手を振り解くように離して、一歩下がるシンジ。 「逃げる気!?」 鋭く叫んで、飛び掛かるようにして押し倒す。 テーブルの上に背中から引っくり返ったシンジの身体がコーヒーサーバを倒す。床に落ちたフラスコが割れ、煮えたぎるコーヒーが溢れて広がった。 背中を逆に曲げられて咄嗟に抵抗できないシンジの首を、アスカの手が絞めつける。 その細い手首をシンジが掴み返して揉み合う内に、身体に巻いたバスタオルが床に落ちた。 けれど二人ともそんな事には構わないままに取っ組み合った。 |
「殺してやるっ」 アスカの手は、細さに似合わぬ力強さでシンジの首を絞め上げる。 子供の喧嘩のそれでは無い。殺意のこもったその力に、シンジも手足をばたつかせて抵抗した。 「離せ、離せよっ」 「アンタなんかにっ」 激しく掴み合う二人の身体がダイニングテーブルを押しのけて、絡み合ったまま床に落ちる。 アスカの手を掴んだままで受け身が取れず、シンジは二人分の体重を乗せたまま、硬いフローリングの床に頭を打った。 「ふん、何よ。弱いったらありゃしない」 後頭部を強打して、シンジは気を失った。 血の気を失ったその白い頬を、裸の腰に手を当てたアスカが見下ろした。 「アンタなんかに渡さないわ……絶対に」 |
意識を取り戻した時、シンジは暗闇の中に居た。 前も後ろも、上下すらも分からない。 意識を失う最後の瞬間の事ははっきりと覚えていた。 紅潮したアスカの顔。 血走ったアスカの目。 首筋に食い込んだ爪の鋭い痛み。 細い指が絡み付き、喉が潰される息苦しさ。 一瞬、自分は死んだのだろうか? と有り得ないとは言い切れない最悪の事態が思い浮かんだ。 絞められていた首を確かめようと、手を動かそうとして異変に気が付く。 身体が何処も、動かない。 其処に手足が無いわけではない。細い紐か布のようなモノで縛められて居るのが分かった。 なんとか解こうと身体を捩る内に、物音がした。 シンジが身体を動かすたびに、微かにギシギシと鳴る音。それは聞き慣れた音だった。 自分の居室の小さな勉強机の前に置かれた、椅子。 いかにもな安物でしかないその椅子は、シンジが背もたれに身体をあずけて伸びをするたびに、そうやって不平を鳴らすのだった。 後ろ手に縛り上げられているらしい手の甲で、縛りつけられているモノに触れる。 金属の滑らかな感触と、湾曲したそのカタチ。間違いない。自室で、自分の椅子に拘束されているのだ。 首を巡らせて周囲を確認しようとしたが、目を見開く事も出来ず、暗闇はずっとそのままだった。 後頭部がズキズキと痛む。 耳の上を押さえつけられている感触から、シンジは恐らく目隠しをされているものと判断した。 「アスカ……アスカだろ!? ここに居るの?」 返ってきたのは、無音。 だが口を開く事は出来た。 それに、自分の声はちゃんと聞こえた。 声の反響の具合から、自分の部屋だという判断に自信を深める。 だとしたら、こんな事をしたのはアスカに間違いない。 今の彼女は何をしでかすか分かったものではない。 恐慌をきたしそうになるが、シンジはぐっと堪えて叫びたいのを我慢し、努めて平静な声で呼び掛ける。 「アスカ……アスカ? 居るんでしょ。分かったから、ちゃんと話を聞いてよ」 「はんっ。何が分かったっての!?」 唐突に、鳩尾に丸く硬い感触が食い込んだ。 「ぐうっ」 その勢いと力強さから、恐らく膝だと見当を付ける。 反動でカラカラと椅子が動き、シンジの肩と手が壁に触れた。 やはり黙って居ただけで、アスカはごく近くに居てシンジが気付くのを待っていたのだ。 もはや逃げ出す事も、抗う事も叶わない。 シンジからは手も足も出ないどころか、アスカが次に何をしようとするのかさえ分からないのだ。 「ほら、言ってみなさいよ」 顎に細く硬い、指の感触が滑る。 そのまま掴まれて、ぐっと上を向かせられる。 そして……鼻先に掛かる、吐息。 風呂上がりらしいアスカの匂いがする。 「言えば? 何が言いたいのか知らないけど、時間はたっぷり有るわ」 「な……なんでこんな事するの」 「さあ、どうしてかしらね」 アスカの手が、シンジの胸に触れた。 ただそれだけで、シンジは驚いて飛び上がりそうになる。触れられた肌が裸だったのだ。 驚いて身じろぎする。椅子が触れている腿の裏まで、素肌だった。 |
アスカは裸のシンジを見下ろしながら溜め息を吐いた。 やはり革の拘束具でなければ格好が付かない。 加持が持っているような……。 「良い格好よ。情けなくて、お似合いだわ」 腰掛けた格好で、手足をビニール紐で縛り上げられて椅子に括り付けられたシンジ。 白い肌に食い込んだ紐が痕をつくる。 目隠しをしている鉢巻きだけが、紅い。 そして裸体を晒している、その姿。 太股の間で萎びたままのそれに、アスカは注目していた。 「な……どうするつもり?」 「こうしてやるわよ」 こちらもやはり、裸のままのアスカの脚が宙を唸り、シンジの側頭部に叩き込まれる。 「イタッ」 何処からどんなタイミングで攻撃されるか分からないシンジは、受け身も取れない。 ひたすら恐怖に慄き身体を縮めるその様が、滑稽だった。 「痛いよ」 「当たり前でしょ」 続いて前蹴り。 何か言おうとしていたシンジが、顎の下に一激を食らって舌を噛む。 「つうっ……」 避けられない痛撃に、歯を食いしばり横を向く事しか出来ない。 「殺してやろうかと思ったけど、止めておくわ。その代わりアンタには忘れてもらう」 「な……何を?」 「決まってるでしょ」 アスカはシンジの股間に手を伸ばし、恐怖に縮こまったそれを無造作に掴んだ。 「うわっ」 派手にシンジが驚く。 縛り付けられた椅子ごと、文字通り飛び上がりそうに身体を震わせた。 「や、やめてよっ」 恐怖に声まで震えるシンジの様子に、アスカは満足そうに目を細めた。 加持とどんな夜を過ごしたのか、シンジを痛めつけて聞き出すだけでは足らない。 アスカが手に入れた、キラキラした大切な記憶に似ているであろうそれを、もっと恐ろしく救いの無い体験で塗りつぶしてしまおうと心に決めたのだ。 「止めないわよ……ふんっ、小さいわねえ」 無造作に握り締めたそれを左右に振る。 「うっ…あっ」 精一杯足を閉じてアスカの攻撃から逃れようとするシンジだったが、どんなに固く足を閉じようが、引っ張り出されたそれはもう隠す事は出来ない。 「まず、聞かせて貰おっかな。何でアンタが加持さんに誘われたりするのよ。どんな手使ったの」 「なっ……僕は何もしてないよ」 「あらそう」 再びシンジの身体がびくりと震える。 柔らかな包皮を無造作に引き降ろし、露になったつるりと丸い亀頭を直に手で握ってやった。 「たっ……痛い」 「ふーん、敏感なのね」 そのまま力一杯握り締める。シンジが歯を食いしばる。 「いたっ……やめてよっ」 「やめないわよ」 過剰な刺激に、縮こまっていたシンジのモノがピクリと反応した。快楽とは程遠いはずの刺激にすら、生理的に反応してしまう。 アスカはそんなオトコのカラダを憐れむ。 「アンタこれだけですむと思ってんの? ここにカミソリが有るわ」 嘘だった。シンジが死にもの狂いで暴れれば、刃物は危険過ぎる。 だがアスカは、シンジの机の上のペン挿しに有った十五センチほどの定規を手に、シンジの頬を撫でた。 「ウソ……やめてっ」 その硬く薄い感触にシンジが硬直する。目が見えず恐怖の中にいるシンジを騙す事など簡単過ぎた。 「皮、余ってんじゃない? 切って上げよっか」 「嫌だっ…やだっ…誰か助けて」 「あんまり大きな声だすと、最初にその舌を切るわよ」 本気に聞こえるアスカの声に、シンジが口を噤む。 「ま、どんな大声出したって何処にも聞こえやしないけど、私ウルサイのキライだから」 ゴクリとシンジが唾を飲み下す。 ミサトのマンションでは、ほとんどご近所を見かけない。 まして、ここは窓に面していない奥まった納戸の中だ。 アスカの言う通り、この体勢で助けを呼ぶのは不可能に近い。 「痛い目に遭いたく無ければ、喋ったら? ただしウルサイのは御免よ」 シンジがガクガクと首を縦に振る。 「昨日は何処に行ってたの?」 「か、加持さんちだよ。車に乗って、大観山でご飯食べて……どっか遊びにでも行かないかって言われて」 「ふーん、どんな家だった?」 アスカ自身は、加持のプライベートな空間に足を踏み入れた事は無かった。逢うのはいつも、モーテルだ。 「えっ…と……そんなに広くない、でも高そうなマンション。NERVの官舎じゃないって加持さんが言ってた」 「それ、セーフハウス?」 「う、うん。多分そう」 仕事場より官舎より、さらに加持のプライベートな場所の奥深くへと、シンジは足を踏み入れた事になる。 アスカがシンジを凝視する視線は、冷たく冴えた。 「で、どうなったの?」 「え、ど、どうって?」 「何が有ったか全部言えっていってんのよ」 再びシンジの敏感な先端を握る。 今度はいきなり力一杯握るのではなく、根元から扱き上げるように押し包み、最後に先端を握った。 もはや過剰な刺激に対する生理的な反応だけでは説明が付かない。シンジのモノは鼓動が伝わるほどに張り詰めはじめていた。 「うっ…あっ……一緒にお酒を少し、呑んで……色々話した」 「どんな事を?」 「恐い事や嫌な事……エヴァに乗ってて苦しい事、聞いてもらったんだ」 「ふーん」 シンジが言わずとも、その会話の内容は想像が付いた。アスカも同じように、加持を求めたのだから。 アスカの興味は手の中で張り詰めるそれへと移っていく。 「……で、どっちから?」 「どっちって?」 「男同士でそんな事するのには抵抗があったでしょ? 最初のキッカケはどっちよ」 「わ、分からないよ、そんな事」 「じゃあ、何されたの?」 「え……うっ……キス、とか」 「だけじゃないでしょ」 「だって……くっ」 硬さを増し自立したシンジのモノを、アスカは扱きはじめた。先端から透明な先走りが滴になって零れる。 「全部思い出して、洗いざらい喋りなさいよ」 「嫌だよ」 「まだそんな事言う?」 「うっ……うわっ」 アスカはシンジが縛り付けられた椅子ごと、床に引き倒した。バランスを崩した椅子から投げ出され床に落ちるまでの不安定な瞬間を、目隠しされたシンジは恐ろしく長く味わった事だろう。 床に落ちてもシンジの身体は自由にはならない。 手も足も、椅子に括りつけられたまま、不自然に身体を折り曲げた姿勢で身動きが取れなくなる。 「痛たた……」 直に床についた膝や、後ろ手に縛り上げられて身動きの取れないまま落ちた顔が痛むのだろう。 体勢が変わってシンジの股間を弄ぶのが難しくなった。わざわざひっくり返すのも手間だ。 アスカはうつ伏せに倒れたシンジの突き出された丸い尻を撫でた。 「喋るつもりが無いなら良いわよ。身体に聞くわ」 机の上に、加持から借りた諸々が揃っている。 逢う暇が作れないならせめてとせがんで譲り受けた、加持のコレクションの一部だ。 普段は自慰に使っている。加持がそれらをどう使って自分を弄ぶのか思い出しながら。 「うわっ…ヤダッ」 持ち上げられた尻の真ん中に冷たいローションを滴らされて、シンジが身体を捩って逃げようとする。 アスカは背中に跨って、不自由な体勢のまま逃げようとするシンジの身体押さえつけた。 そうして滴らしたローションを塗り広げていく。 シンジのアヌスは肌の白さから想像した通り、性器のように綺麗な肉色をしていた。 アスカの肢体に欲情した加持が、同じようにシンジを欲したとしても不思議は無いと思えた。 それが、忌々しい。 「やっ…止めて」 尻の谷間を滑るように蠢くアスカの細い指に、シンジが許しを請う。その弱々しい声は、恐らく加持に対しても囁かれた事だろう。 女々しい、とアスカは思う。シンジは身体だけでなく、その性格や声音まで抱かれる為の資質を備えているように思えて、さらに忌々しい。 「良かったんでしょ、加持さんにされて……だったら大人しくしなさい」 アスカを背中に乗せたまま、なんとか逃れようと身体を捩るシンジの尻を、ピシャリと叩き付ける。 丸く見える尻の割には柔らかさが足らない。 やはり、オトコの身体だ。 「いっ…いやっ」 アスカはわざわざ、一番太いバイブを選んだ。 加持との経験が当然始めてだろう。シンジのアヌスはまだ異物を受け入れる事に慣れていないに違いない。 だからこそ、加持のモノを思わせるような大きさの張り型を選んだ。 「痛いっ、そんなの入るわけ無いよ」 「入るわよ。加持さんに抱かれたんでしょ」 「違う。加持さんはそんな無理矢理しない」 「ふーん、優しくされて、嬉しかったの? 男の癖に」 さすがにいきなり太いバイブは無理だった。 中も濡れていないし、シンジは手足は動かせないが身体を固くする事は出来るのだ。 アスカは自分の手と指に、滴る程のローションを零す。 「こんなキタナイとこホントは触りたかないけどね」 そう言いながら、指を一本滑り込ませる。 シンジが精一杯抵抗しているにも関わらず、潤滑された指先はつるりと胎内へ侵入した。 「うっ…あっ」 「ふーん」 他人の胎内を指で犯すのは初めてだ。 その締め付ける狭さと熱さに驚く。 自分を指で犯す事など珍しくも無い。だがその時は、それを受け入れる身体の中に神経を集中していて、入り込む方の指先にはさほど神経を使わない。 だが今は、シンジの体温と狭さを感じる指先の感覚が全てだ。 アスカは中まで潤滑油を塗り広げるように、狭いシンジの胎内で指先を動かした。 絡み付くような、その肉の感触を味わう。 締め付けてくるシンジの筋肉の筋一つ一つが感じ取れそうな程に密着する、胎内。 「アンタ、具合良さそうじゃない。加持さんも楽しんだでしょうね」 滴る程のローションを更に増しながら、アスカは一本の指を抜き差しして身体の中へそのぬめりを導いた。 シンジが抵抗を止め、息が上がっているのが分かった。太股で挟み付けた肋骨が、規則正しく息を吸い込んでいる感触がする。 「あぁ…や……やめて」 女のように喘ぐシンジが、おかしい。 アスカは抜き差ししている指にもう一本指を添える。 「あっ…あっつうっ」 閉じていたシンジの穴に、二本の指が揃って入り込む。捻じ込まれる感触に痛みを感じたのか、シンジは反射的に身体を固くしていた力を弛めていた。 回して抉るように、さらにローションを塗り付ける。 二本の指を呑み込んだそこは、たとえ力を抜いていてもそれ以上の余地は無い。 先程まで一本で感じていた時以上に、シンジの胎内の感触がはっきりと分かった。 ローションで滑り、吸い付くように胎内の襞を感じた。 身体の出口で働く一本一本の筋組織がイメージ出来るほどに鋭敏な指先の感覚。 「狭いわねぇ。大したもんだわ」 こんな狭い場所を加持は犯せたのだろうか? と疑う程に、シンジのそこは「入り口」には程遠かった。 穴と言うよりむしろ、点でしかない。 身体に開いた僅かな隙間だ。 「で、中でも感じるの? 男の癖に」 「い……痛いだけだよ。もう止めて」 シンジの声に、痛みに耐えるのとは違う色が聞こえた。 アヌスの性感はアスカも知っている。 加持との僅かな逢瀬を楽しむ為に、自分の身体を隅々まで知ろうとしたのだ。 借りてきた玩具もただ加持を思い出す為だけではなく、次に逢った時にもっと楽しめるように、それらに慣れる意味が有った。 そして事実、アスカは僅かな期間でそれに適応していた。後ろを犯され「感じる」事も今では珍しくない。 「ウソツキ。感じてるくせに」 シンジの息は短く、忙しない。痛みに耐え、無理な体勢の上アスカに圧し掛かられて息が苦しいというのも有るだろうが、それだけな筈が無い。 「ちがっ…ああっう」 アスカは指先に力を込める。 シンジの中を押し広げると、抵抗していた筋肉が諦めたように解れていく。そうして開いた僅かな隙間に、更にローションを注ぎ足す。 アスカの細い指が出入りするたびに水音を立て、溢れるほどに。 「前からも垂れてるわ。よっぽど感じるのね」 シンジの股間で張り詰めたそれの先から、透明な滴が糸を引いて床に染みを作っていた。 後ろの性感はいかに鋭敏であろうと、それだけで頂点に達するには足らない。 男の場合は更に奥深くへと刺激を進めて、前立腺を裏から刺激すれば「漏れて」出るように達する事も有るのだと言う。 だがアスカの小さな手では、シンジのそこまでは手が届かない。 シンジは鋭敏な皮膚感覚だけを刺激され、滾りきった性器は飢えた獣のように涎を垂らす。 そうして焦らすのも、悪く無い。 「ヤラシイ身体」 そう呟きながら、アスカも興奮していた。 加持はシンジを抱いて、間違いなく楽しんだだろう。 シンジの身体はしなやかで、反応は素直だった。 たとえシンジを憎んでいなくとも、もっと犯してやりたくなるに違いない。 アスカは胎内に入り込んだ指を抜きつつ、先程は侵入に失敗した張り型を入り口に添える。 指を滑らせ、入れ違うように力を込めた。 「うっ…うああっ……痛い…痛いよ」 ギリギリと、頑丈に作られているはずの張り型が手の中で歪む。それほど狭い場所を穿とうとしているのだ。 腕の力だけでは入り込んでいかない。 アスカは腕を突っ張って、体重を掛けてシンジの中へとそれを押し込んでいく。 「イッ…痛ッ…助けて」 ようやく半分まで飲み込んで、それ以上刺さらなくなった。 歯を食いしばって耐えるシンジ。 目隠しに巻いた鉢巻きが濡れている。 アスカはシンジの泣いた顔を見たくなった。 後ろに突っ込んだまま、強引にシンジの身体を仰向けにさせる。椅子がガチャガチャと纏わり付いて鬱陶しくなり、足の戒めだけは解いてやった。 アヌスに楔を打ち込まれて居る限り、シンジは下半身を自由には出来ないはずだ。 仰向けにして目隠しを外す。 「う……ぅあ」 苦しい息で呻きながら、シンジは真上から照らす電灯の眩しさに目をしばたかせる。 「あ……アスカ……もう抜いて」 後ろ手に縛り上げた縛めは解いていないから、シンジは背中の下に自分の手が挟まって、相変わらず上体を動かす事が出来無い。 下半身はアスカの目論見通り、深々と突き刺さったモノの痛みに耐えるのに必死で、縛めを解かれたのに動かす事が出来ない様だった。 アスカは身動きできないシンジの足の間に入り込むと、胎内を抉る張り型を膝で押さえつける。 そして深く身体を折って、シンジのモノを両手で握ると唇を寄せた。 「ううっ……うあっ」 痛々しいほど血管が浮き、心拍に合わせて揺れるそれは、サイズこそ大した事はないのだが、追い詰められ爆発寸前といった迫力が有った。 その裏筋を、アスカはゆっくりと舐め上げる。 「だっ……ダメだよ。そんな」 「加持さんにもされたんでしょ。後ろと一緒にやられた? 良かった?」 「あ、あうっ」 赤く泣き腫らしたシンジの目元。 まるで紅色のアイシャドウを引いたように大きな目の輪郭が強調され、ますます女性的な表情に見える。 そんなシンジが、アスカが与える刺激に眉根を寄せて抵抗する。 「イかせてあげるわ。加持さんにされたよりもっと」 「ど、どうしてそんな事するの?」 「決まってるでしょ。アンタがキライだからよっ!」 加持との一夜で、シンジは何度逝かされたのだろうか? 聞いても答えるとは思えないが、シンジの様子から、何度も繰り返し搾り尽くされたと見て間違い無いだろう。 口の中に深く咥え、舌先で突つきまわすように転がすと、弾けたように反応する。 ビクンビクンと脈動するそれは放出の絶頂が近い証しの筈だが、シンジは一向に至らない。 「よっぽど疲れてんのね」 口を離すと、唾液に塗れたそれを手の平でゆっくりと擦り上げる。そうしながら後ろに突き入れたモノにスイッチを入れた。 「ああっ……やっ…やだっ」 シンジの眦からまた涙が零れた。 どうやら、狭い場所にギリギリに収まるそれが動くのは、耐え難い苦痛らしい。 しかし、アスカの手に弄ばれるそそり立つモノは、胎内の振動に連なるように妖しく揺れ動いた。 「痛い? 気持ち良い? どっちよ」 前を優しく擦り上げながら、後ろで蠢くそれに更に手で動きを加える。 応える余裕を無くしたシンジは、ただ間断無く短い喘ぎ声を漏らすのみだった。 「うっ……うあっ……あっ…はっ…う」 息を吐こうとしているのか、それとも呑もうとしているのか。シンジの吐息は乱れ、時に鳴咽が混じる。 アスカは今日始めて、満ち足りた気分になった。 嗜虐心が満ち足りていく……ずっと前から自分はこうしたかったのではないかと思ったほどだ。 「声も出せない? よっぽど良いのね。こんなふうに無茶苦茶にされるのが」 シンジに締め付けられ、苦しそうにモーターが唸る。 張り型の振動を手に感じながら、それを乱暴に出し入れする。 「いや……助け…て。加持さん」 苦しい吐息と共に吐かれたその言葉が、アスカを打ちのめした。 こんなになってもまだ、シンジは忘れるどころか加持を求めていた。 「誰も助けになんて来やしないわよ」 アスカはシンジの腰の上に、逆を向いて跨った。 シンジがバージンを奪った加持を忘れられないなら、アスカがもう一つ奪うまでだ。 それが復讐と言えるかどうか、もはや分からない。 ただ、もっとシンジを苦しめる事にはなるだろう。 「なっ……なに考え……あっ…ああっ」 シンジを責めながら、アスカは濡れていた。 濡れるどころでは無い。滴らせ、血を集め、口を開いて待ち望んでいた。 加持が自分にしたようにシンジを虐め、そうする事でまるで加持に弄ばれているような錯覚に陥る。 目の前のシンジに欲情しているのか、その向こうに想う加持に欲情しているのか、それとも歯止めを失った自分自身に酔っているのか。 そのどれでも有り、どれでも無い。 ただシンジを呑み込みたい。貪りたい。それだけだ。 「んっ」 シンジの先端を自分の淫裂に導き、手を離しても直立するよう先を咥えた所で止まった。 首を巡らせてシンジの顔を振り返る。 シンジがそれを望んでいないであろう事は間違い無い。弱々しく首を振り、声にならない声が「ヤ・メ・テ」とせがんでいる。 アスカは膝立ちになり、ゆっくりと腰を下ろす。 「ふっ……ん……ああっ」 滾った胎内の鋭敏な感覚が、シンジの皮膚の感触まではっきりと捉えた。 溢れる愛液が押しのけられて零れて落ちる。 シンジのモノを全て胎内に納めると、身体の奥底で触れ合った。 先端と、突き当たり……亀頭と子宮が出会った感触を、シンジも感じているだろうか? 「くっくくく」 何故か笑みが零れた。 眦を濡らして眉根を寄せるシンジの痛々しい顔ほど愉快なモノは無い。 アスカは後ろ向きにシンジに跨ったまま、シンジの足の間へと手を伸ばす。 後ろに突き立ったモノが抜け落ちそうになっていた。 それを再びシンジの奥底へまで、押し込む。 「ううっ……ああっ…あっ」 それに押されたかのように、シンジのモノが膨らむ。 アスカは腰を押し付けるようにして、シンジの上で身体を揺らしはじめた。 「だ……やっ……め」 搾り取り、吸い付くように蠢く胎内を感じる。 自分の胎の中も脈打っているし、シンジのモノも脈打っている。密着した粘膜が伝える鼓動。 けれど、アスカには刺激が足らなかった。 後ろ向きでは自分の一番敏感な秘芯を擦り付けるべき場所が無いし、なにより苦痛に歪むシンジの顔が見えない。 アスカはベッドの上に手を伸ばすと、枕を取ってシンジの尻の後ろに収めた。 張り型が抜け落ちないようにそれで押さえつける。 力を抜くと身体の中に深々と刺さる事になり、シンジは苦しい体勢で上にアスカを乗せたまま、腰を支えなければならない。 細い身体がいつまでそんな負荷に耐えられるだろうか? そしておいて、シンジの上で身体を回した。 胎の中でシンジのモノが捩じれていく。 その感触に、このまま捩じ切ってしまいたい衝動に駆られる。自分の入り口に歯が生えていれば、食い千切ったに違いない。 |
「どう……見える?」 目を瞑って耐えるシンジの頬を、アスカが撫でた。 恐る恐る目を見開いたシンジに、足を開いて繋がった部分を見せ付ける。 「うう……あ……アスカ」 「アンタに名前呼ばれたってゾッとするだけよ」 「だ…ダメだよ、こんな」 「何がダメ?」 「う……で、出ちゃう」 「出したら良いじゃない。全部吸い尽くしてやるわ」 アスカは繋がった部分に手を添えると、柔らかな陰唇を掻き分けるように押し広げた。 |
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