このテキストは、占術の全くの初心者にも理解出来るよう、極力専門用語や
専門の知識を必要としないように配慮するつもりだが、どうしても中国占術の
最低限の用語と基礎知識は必要とならざるを得ない。
本章は、風水を学ぶ上の、風水以前の中国占術の最低限の基礎知識を解説す
るもである。したがって、以下の項目だけは面倒だが是非覚えていただきたい。
古代ギリシャでは、宇宙の万物の構成要素を「地・水・火・風」の4元
素と考えたように、古代の中国人は「木」「火」「土」「金」「水」の5
元素を宇宙の構成要素と考えました。これを五行説と言います。この五行
説は中国占術の中核を成す理論であり、風水のみならず四柱推命や算命
学・奇門遁甲・六壬・気学等中国を発祥とするほとんどの占術は、この理
論上に構築された技法です。
5方 | 5季 | 5色 | 5常 | 5情 | 5臓 | 5感 | 八卦 | |
木 | 東 | 春 | 青 | 仁 | 努 | 肝臓 | 視 | 震・巽 |
火 | 南 | 夏 | 赤 | 礼 | 楽 | 心臓 | 聴 | 離 |
土 | 中央 | 土用 | 黄 | 信 | 欲 | 脾臓 | 臭 | 坤・艮 |
金 | 西 | 秋 | 白 | 義 | 喜 | 肺臓 | 味 | 乾・兌 |
水 | 北 | 冬 | 黒 | 智 | 哀 | 腎臓 | 触 | 坎 |
ある特定の五行が別の特定の五行を強める関係で「生じる」と言います。
木は火を生じ、火は土を生じ、土は金を生じ、金は水を生じ、水は木を
生じる。
木 → 火 → 土 → 金 → 水 →
木
― 相生関係の覚えかた ―
「木」は燃えると「火」を生じ、
「火」が燃えつきると灰(土)となる
大地(土)は鉱物を蔵し、土中からは鉱物(金)が発掘されます。
鉱物(金)を冷やすと、表面には露(水)が集まります。
「水」は樹木(木)の根を潤し、養います。
ある特定の五行が別の五行を制する関係で「刻する」と言います。
木は土を剋し、土は水を剋し、水は火を剋し、火は金を剋し、金は木
を剋する。
木 → 土 → 水 → 火 → 金 →
木
― 相剋関係の覚えかた ―
樹木(木)は、「土」に根を張り土の養分を奪います。
地面(土)は、「水」を吸収します。
「水」は、炎(火)を消化します。
炎(火)は、金属(金)を熱で溶かします。
斧(金)は、樹木(木)を切り倒します。
「五行相生図」 | 「五行相剋図」 | |
水→木→火 | 金→木→土 | |
↑ ↓ | ↑ ↓ | |
金 ← 土 | 火 ← 水 |
五行の相生と相剋の関係を整理すると、五行と五行の関係には、
5種類の関係のパターン があることが解る、以下に整理して置き
ましょう。
a.同じ五行どうしの関係
例えば「木」に対して、同じ「木」の関係です。同じ五行で
すから互いに強め合う関係で「比和」と言います。
木と木、火と火、土と土、金と金、水と水の関係。
b.生じる関係
例えば「木」は「火」を生じます。木は火を生じ強めますが、
火を生じる為に、木は自身のエネルギーを消耗し、木は弱まり
ます。
木は火を生じる。→ 木は弱まり、火は強くなる。
火は土を生じる。→ 火は弱まり、土は強くなる。
土は金を生じる。→ 土は弱まり、金は強くなる。
金は水を生じる。→ 金は弱まり、水は強くなる。
水は木を生じる。→ 水は弱まり、木は強くなる。
c.生じられる関係
例えば「木」は「水」から生じられます。水から生じられた
木は強くなります。
木は水に生じられる。→ 木は強められ、水は弱まる。
水は金に生じられる。→ 水は強められ、金は弱まる。
金は土に生じられる。→ 金は強められ、土は弱まる。
土は火に生じられる。→ 土は強められ、火は弱まる。
火は木に生じられる。→ 火は強められ、木は弱まる。
d.剋する関係
例えば「木」は「土」を剋します。木は土を剋して弱めます
が、土を剋する為に木は自身のエネルギーを消耗し、木は弱ま
ります。
木は土を剋する。→ 木は弱まり、土も弱まる。
土は水を剋する。→ 土は弱まり、水も弱まる。
水は火を剋する。→ 水は弱まり、火も弱まる。
火は金を剋する。→ 火は弱まり、金も弱まる。
金は木を剋する。→ 金は弱まり、木も弱まる。
e.剋される関係
例えば「木」は「金」から剋されます。金から剋された木は弱
められます。
木は金から剋される。→ 木は弱められ、金も弱まる。
金は火から剋される。→ 金は弱められ、火も弱まる。
火は水から剋される。→ 火は弱められ、水も弱まる。
水は土から剋される。→ 水は弱められ、土も弱まる。
土は木から剋される。→ 土は弱められ、木も弱まる。
八卦とは、「乾・兌・離・震・巽・坎・艮・坤」の8つの要素で、易を
構成する要素で「小成卦」と言われる。この八卦が2個重なると8×2=
64で六十四卦が出来る。
八卦や易については、本来これだけで1つの学問であり、これを解説を
書くとなると相当の量となり、それだけでゆうに単行本の1冊や2冊程度
は楽に書ける。したがって、八卦や易についての詳しい内容については、
市販の単行本に1度トライしていただくこととして、ここでは風水の八方
位の解説において不可欠の最低限の知識の解説に留めたい。
正象 | 方位 | 五行 | 人物 | 象意 | |
乾 | 天 | 西北 | 金 | 父 | 目上・寺社・学校・庁・交通・貴金属等 |
兌 | 沢 | 西 | 金 | 少女 | 弁舌・口論・色情・喜び・飲食・貨幣・趣味 |
離 | 火 | 南 | 火 | 中女 | 文書・印鑑・試験・学問・派手・華やか・別れ |
震 | 雷 | 東 | 木 | 長男 | 音楽・電気・電話・発展・驚き・効く |
巽 | 風 | 東南 | 木 | 長女 | 香り・利益・信用・評判・交際・整う・完成 |
坎 | 水 | 北 | 水 | 中男 | セックス・暗い場所・苦労・秘密 |
艮 | 山 | 東北 | 土 | 少男 | 変化・改革・貯蓄・銀行・静止・地味・ケチ |
坤 | 地 | 西南 | 土 | 母 | 衣類・田畑・勤勉・誠実・平凡・大衆的 |
さて、風水や奇門遁甲・気学等の方位学では、方位を八方位に分けて、
それぞれに八卦の小成卦を割り振ります。下記に、さらに八方位の五行を
加えて図にまとめてみました。八方位の五行は、それぞれの方位の八卦の
五行です。尚、風水や中国占術では図表は必ず上が南で下が北になります。
八方位
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九星とは「一白・二黒・三碧・四録・五黄・六白・七赤・八白・九紫」の
の9つの虚星(実在しない星。)のことで、中国占術においては方位学や風
水等で多様される。日本の気学や九星術でも使用されており、市販の開運暦
等でも良く見かけるので、九星自体は割合と日本でも馴染みがあると思いま
す。
この九星には、定位と言って本来の場所というのが決まっています。
九星定位盤
四緑 | 九紫 | 二黒 |
三碧 | 五黄 | 七赤 |
八白 | 一白 | 六白 |
さて、この九星がそれぞれ入っている場所を、先程の八卦の方位より
一白が座す場所を、坎宮あるいは坎位
二黒が座す場所を、坤宮あるいは坤位
三碧が座す場所を、震宮あるいは震位
四録が座す場所を、巽宮あるいは巽位
六白が座す場所を、乾宮あるいは乾位
七赤が座す場所を、兌宮あるいは兌位
八白が座す場所を、艮宮あるいは艮位
九紫が座す場所を、離宮あるいは離位
とそれぞれ呼びます。
五黄の座す場所は、八卦方位がありませんので中宮と呼ばれます。