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議員活動の制約について

(平成9年2月19日〜菊民夫調査)
(平成26年12月20日〜菊民夫再調査)
 
 

兼業の禁止(地方自治法 第92条の2)
 第九十二条の二 普通地方公共団体の議会の議員は、当該普通地方公共団体に対し請負をし、
 若しくは当該普通地方公共団体において経費を負担する事業につきその団体の長、委員会若し
 くはこれらの委任を受けた者に対し請負をする者及びその支配人叉は主として同一の行為をす
 る法人の無限責任社員、取締役若しくは監査役若しくはこれらに準ずべき者、支配人及び清算
 人たることができない。〔参照条文〕法一二七、一四二、一六六2、一六八7、一八〇の5
                  民法六三二から六四二まで。

   3月になると、兼業の禁止を政争の道具に使う人がいる!(議長問題?)
    議員は商売につながるの?建設業は悪いの?仕事には誇りと自信を。




【解 釈】


一 地方議会の議員の請負禁止の規定は、昭和21年の地方制度改正の際削除されていたものであ るが、その後における運営の実情にかんがみ、昭和31年の改正の際復活され、普通地方公共団体の長、 副知事、助役、出納長、収入役、監査委員等と同様議員も当該地方公共団体等に対する請負が禁止され ることとなった。なお、普通地方公共団体の長、副知事、助役、出納長、監査委員等については、平成 3年の改正により、当該普通地方公共団体が出資している法人で政令で定めるものについて請負禁止の 規定の適用が除外されている。(法一四二の項参照)
 
二 「請負」の意義については、当事者の一方が或る仕事 を完成し、相手方がその仕事の結果に対してこれに報酬を与えるという民法所定の請負のみならず、いや しくも営業として、地方公共団体に対して物件、労力などを供給することを目的としてなされる契約をも すべて含むものと解する。すなわち、本来の意味での請負のみならず、ひろく業務として行われる経済的 ないし営利的な取引契約をすべて含むと解するのが最も妥当である。 (大判 明37。行業宣告 明45、大1。モーターボート競争会が地方公共団体の委任を受けた施行する 場合の委任も請負に該当する。最高裁 昭32,12,3)

  ただし、本条の規定は、普通地方公共団体の議会の議員が当該団体の具体的な請負契約の締結 に対する議決等に参与することにより直接間接に事務執行に関与するものである以上は、議会運営の公正 を保証するとともに、事務執行の適正を確保するために普通地方公共団体の長の場合と同様、当該普通公 共団体との間において、請負関係に立つことを禁止しようとするものであるから、それが民法所定の請負 のみならずその他経済的ないし営利的な取引関係に立つこととなれば、当該普通地方公共団体の公正な運 営を期待することがおよそ困難となるわけである。それが民法所定の請負関係であると、その他の経済的 ないし営利的な取引関係であると、その間になんらの相違はないからである。かくのごとく民法所定の請 負のみならず、ひろく営業としてなされる経済的ないし営利的な取引契約も含まれるとしても、一定期間 にわたる継続的な取引契約に立つものでなけれはならないのであって、現金売買のごとき、たとえば、た またま災害復旧工事などのために臨時にセメントなどの物品を現金売却するがごとき、単なる一取引をな すに止まるものは「請負」には該当しないと解するべきであろう。 (前記大判 明37 行業宣告 明45)
 
  「当該地方公共団体において経費を負担する事業」 とは、その事業自体は、たとえば、機関委任の国の事務で当該普通地方公共団体の事業ではないが、その 経費は当該普通地方公共団体が負担するところのものをいうので、たとえば、河川法による河川工事のご ときものである。なお、この「経費の負担」には全額国庫負担のごとき場合でも当該団体の予算に計上さ れ、その経済に属するものは事柄 の性質上含まれるものと解される。(行実 昭31,11,28)

  「主として同一の行為をする法人」というのは、当該普通地方 公共団体に対する請負叉は当該普通地方公共団体において経費を負担する事業につき、その団体の長若し くはその団体の小佐野委任を受けた者に対する請負が、当該法人の業務の主要部分を占め、当該議員の重 要度が長の職務執行の公正、適正を損なうおそれが類型的に高いと認められる程度に至っている場合の当 該法人の意である。(行実 昭22,12,28、最判 昭62,10,20)
 
  「当該法人の業務」について、具体的にいかほどの 部分を占めれば、主要部分を占め、当該議員の重要度が長の職務執行の公正、適正を損なうおそれが類型 的に高いと認められる程度に至っているものと認めることができるかについては、請負金額と当該法人の 通常の場合における全業務分量(金額に換算した分量)との比率等によって、個々具体的に判断する外は ない。「たることができない」とは、前条の「兼ねることができない」というのと同義である。すなわち、 普通地方公共団体の議会の議員が、本条所定の請負をしたり、請負法人の無限責任社員、取締役等になっ たときには第一二七条所定の手続きにより、議員の職を失うことになるわけである。しかしながら、一方、 議員のなした請負契約の締結文は請負法人の無限責任社員、取締役等への就任行為の効力については、な んらの影響も受けないものと解する。けだし、本条の兼業禁止の規定は、議会の議員の身分保持の要件を 定めるものであって、議会の議員のなした請負契約の締結叉は請負法人の無限責任社員、取締役等への就 任行為の効力について規定するものではないからである。
 
三 「これらに準ずべき者」とは、法人の無限責任社員、 取締役若しくは監査役と同等程度の執行力と責任とを当該法人に対して有する者の意である。 (行実 昭31,10,22)
自転車競技法に基づく自転車振興会の理事、監事、小型自動車競争法に基づく小型自動車競争会の副会 長等はこれら施行団体が主として当該普通地方公共団体の競輪、自動車競争の実地に当たっている場合 は該当する。(行実 昭31,9,28・昭31,10,22。最高裁 昭32,12,3)
 
 
 

【運 用】


一 当該普通地方公共団体叉はその団体の長などに対して請負をした者(以下「請負者」という。)と 契約して、その請負者に対して同一行為の請負をするいわゆる下請負は、「請負」には含まれないと解される(行実 昭27,6,21)。本条の規定は、当該普通地方公共団体に対して直接請負をする 事を禁止したものであって、すでに、当該普通地方公共団体とは直接なんらの関係も生じない下請負については、なんら関知するところではないからである。したがって、たとえ、その下請負が請負者が請負ったところの行為ないし業務内容の全部を一括して、さらにその請負者に対して請負うもので あるとしても、それが「下請負」である限りは、「請負」には該当しない。しかしながら、実際には、 下請負の形でなされていても、右のごとき一括請負などの方法によって、実質上それが元請負と異ならない単に名目を下請負ということにしたに過ぎないような場合もありうるのであって、このようなことは、本条の趣旨をまったく没却した脱法的な行為というべく妥当を欠くものといわざるを得ない(行実 昭27,11,27)。また、普通地方公共団体の議会の議員の配偶者や子弟が請負するということも、なんら本条の関知するところではない。しかしながら、実際において、議員がそれら配偶 者や子弟の請負について実質的な支配力を及ぼし、全く配偶者や子弟の請負は名目のみで、実質はその議員が請け負っているのとなんら異ならないような場合もありうるのであって、このような事態も、同じく本条の規定の趣旨から極力避けられねばならないところである。実際の運用において注目 されねばならない点と考える。
 
二 実際には、本条の規定する請負をなしたか、或いは主として同一の行為をする法人の無限責任社員 叉は取締役等の地位についていたか否かについて明瞭でなく、関係者の間において、見解が一致しない場合がありうることも容易に想像されるところである。このような場合に、第一二七条所定の手続 によってそれを決定することになるものである。

三 議員が本条所定の請負関係に立つときは、第一二七条所定の手続きにより、当該普通地方公共団体 の議会の議員の職を失うこととなるが、すでに数カ月も以前にそのような関係に立っていたことが後になって明らかになったような場合は、その間に当該議員の加わってなされた議会の議決は違法たる を免れない。その出席の有無が議決の結果に影響を及ぼさなかったとしても同様である。この場合に は第一七六条第5項文は第7項の審査の申立て叉は出訴により当該議決叉は選挙が取り消されるまでは、当該議決叉は選挙は当然に無効となるわけではない(行判 昭31,5,21)。なお、当該議員の出席の有無が議決の結果に影響を及ぼさなかった場合においては当該議決が無効とはいえないとする判例がある(行判 大11,2,16)。
 
四 本条に該当するとした事例には次のようなものがある。
   (1) 市町村の議会の議員が一部事務組合の議会の議員を兼ねている場合において
    も、一部事務組合に対する請負をすることはできない(行実 昭31,9,28)
   (2) 議会の議員が森林組合の理事叉は監事となっているとき、その組合が当該市
    町村に対し請負する場合は、本条の適用がある(行実 昭32,5,20)。
   (3) 会社の支店長でも当該会社の支配人その他の役職員を兼ねている場合は本条
    に該当する(行実 昭31,9,28)。



【失職及び資格決定】


   第百二十七条 普通地方公共団体の議会の議員が被選挙権を有しない者であるとき叉は第九十二条の2の規定に該当するときは、その職を失う。その被選挙権の有無叉は同条の規定に該当するかどうかは、議員が公職選挙法第十一条若しくは同法弐百五拾弐条叉は政治資金規正法(昭和23年 法律第百九十四号)第二十八条の規定に該当するため被選挙権を有しない場合を除くほか、議会がこれを決定する。この場合においては、出席議員の3分の2以上の多数によりこれを決定しなければならない。
  A 都道府県の議会の議員は、住所を移したため被選挙権を失っても、その住所が同
    一都道府県の区域内にあるときは、そのためにその職を失うことはない。
  B 第一項の場合においては、議員は、第百十七条の規定に関わらず、その会議に出
    席して自己の資格に関し弁明することはできるが決定に加わることができない。
  C 第百十八条第五項及び第六項の規定は、第一項の場合にこれを準用する。



【長の兼業禁止】


  第百四十二条 普通地方公共団体の長は、当該普通地方公共団体に対し請負をし、若しくは当該普 通地方公共団体において経費を負担する事業につきその団体の長、委員会若しくは委員若しくはこれ らの委任を受けた者に対し請負をする者及びその支配人叉は主として同一の行為をする法人(当該普 通地方公共団体が出資している法人で政令で定める者を除く。)の無限責任社員、取締役若しくは監 査役若しくはこれらに準ずべき者、支配人及び清算人たることができない。


【失 職】


  第百四十三条 普通地方公共医団体の長が被選挙権を有しなくなったとき叉は前条の規定に該当す るときは、その職を失う。その被選挙権の有無叉は同条の規定に該当するかどうかは、普通地方公共 団体の長が公職選挙法第十一条若しくは同法第二百五十二条叉は政治資金規正法第二十八条の規定に 該当するため被選挙権を有しない場合を除くほか、当該普通地方公共団体の選挙管理委員会がこれを 決定しなければならない。
 A 前項の規定による決定は、文書をもってし、その理由をつけてこれを本人に交付し
   なければならない。
 B 第一項の規定による決定に不服がある者は、都道府県にあっては自治大臣、市町
   村にあっては都道府県知事に審査請求をすることができる。
 C 前項の審査請求に関する行政不服審査法(昭和37年法律第160号)第一四条第
   一項本文の期間は、第一項の決定があった日の翌日から起算して21日以内とする。

三 「地方公共団体」(2)とは、すべての地方公共団体を含む。一部事務組合叉は広域連合も含まれ ることはいうまでもない。財産区の議会の議員との兼職もできない(法二九六。行実 昭38,3,2 7)。ただし、一部事務組合叉は広域連合の議会の議員との兼職については、当該議員が一部事務組 合叉は広域連合を組織する地方公共団体の議員である場合には、本法第二八七条第2項叉は第二九一 条の4第4項により差しつかえないこととされている。(なお、選挙令九〇5参照)。

四 「常務の職員」(2)とは、地方公務員法第3条第3項第2号及び同項第3号にいう「非常勤」に 対応する観念で、常時勤務する職員を指し、常時勤務する者であれば、一般職たると特別職たるとを 問わない。雇員、雇用の類も常務であれば含まれる。

五 普通地方公共団体の議員は、本条による外、他の法令により、次に揚げる職との兼務が禁止されて いる。
 (1) 裁判官(裁判所法五二1)
 (2) 教育委員会の委員(地教法六)
 (3) 海区漁業調整委員(漁業法九五)



兼職の禁止(第92条)
1 普通地方公共団体の議会の議員は、衆議院議員又は参議院議員と兼ねることができない。
2 普通地方公共団体の議会の議員は、地方公共団体の議会の議員及び常勤の職員と兼ねることができない。

※ 平成13年4月1日施行の改正規定
2 普通地方公共団体の議会の議員は、地方公共団体の議会の議員並びに常勤の職員及び地方公務員法(昭和25年法律第261号)第28条の5第1項に規定する短時間勤務の職を占める職員(以下「再任用短時間勤務職員」という。)と兼ねることができない。




【運 用】  


一 普通地方公共団体の議会の議員と兼職を禁止されている職に在る者は、多くの場合、公職選挙法第 89条の規定により、在職のまま立候補を禁じられているため、不都合を生ずる場合は少ないのであ るが、中には当選の告知をうけた後同法第百三条に所定する手続きをとらなければならない場合もある。
 
二 現に議員であるものに対し、そのことを知らずに地方公共団体の常勤の職員に任用する発令行為が あったときは、当該発令行為は当然に無効とは解され難い。したがって、両方の身分を有することと なる場合には直ちにそのいずれかを辞することが必要であるが、辞さない場合は前の身分を失うものと解すべきである。同時に、両方の身分を有するものとして行った行為は、前の身分にかかるものに ついては無効と解さざるを得ない。
 
三 「常務」であるか否につき、疑義の生ずる場合も多いが、次のような場合はいずれも常勤の職員と 解して取り扱うべきである。
   (1) 隔日勤務、一週に一度定められた曜日の勤務等の職員であって、職務内容が一
    般の常務職員と同様の者
   (2) 3ヶ月、6ヶ月等期限を限って臨時に雇 され、その期間中毎日出勤し、常時
    勤務する者
   (3) 或る事業につき事業終了までの期間を限って雇 され、その間常時勤務する者
      (行実 昭26,8,15)




 当選人が請負関係にある場合の届出受理(参照条文)
 
  法104条、市町村の選挙における当選人が、当該市町村に対し、自治法第92条の2叉は第
 142条に規定する請負関係を有している場合において、その者から請負関係を有しなくなった
 旨の届出(当選の告知を受けた日から5日以内)をうけること
 



【参 照】

1 請負とは、@民法第632条所定の請負すなわち当事者の一方が或る仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してこれに報酬を与えることを約することを内容とする契約のみならずAいやしくも営業として地方公共団体に対し物件、労力などを供給することを目的としてなされる契約も含む。
 
2 請負とは、広く俗に請負と称するすべてを包含し、必ずしも営利の意思を伴うことを要せず、営利の余地のないものであっても該当することがあり、業とすると否と及び報酬の多少を問わない。また、請負関係が継続的であると一時的であるとを問わない。
 
3 自治法第92条の2叉は同法第142条の規定の主要内容を列挙すると、次のとおりである。
  (一)地方公共団体の議会の議員叉は長は、当該地方公共団体と請負をする者及びそ
    の支配人となることができない。
  (二)地方公共団体の議会の議員叉は長は、当該地方公共団体において経費を負担す
    る事業につきその団体の長、委員会若しくは委員若しくはこれらの委任を受け
    た者に対し請負をする者及びその支配人となることはできない。〔提選155〕
  (三)主として右と同一の行為をする法人の無限責任社員、取締役若しくは監査役若
    しくはこれらに準ずべき者、支配人、清算人となることができない。
 
4 3(三)の「主として」とは、おおむねその法人の業務の主要部分が、当該地方公共団体叉はその機関に対する請負で占めているものを意味し、請負金額とその法人の通常の場 合の企業務量(金額に換算)との比率が50%以上である場合には業務量の主要部分を占めるものに該当する。
 
5 「当該地方公共団体において経費を負担する事業」とは、たとえば地方公共団体の機関に委任された国の事務等で当該地方公共団体の事業ではないが、その経費を当該地方公共団体が負担するもの(全額国庫負担でも、当該団体の予算に計上され、その経済に属するものは、事柄の性質上、含ま
  れる。)に該当する。                                  




 【行政実例】


 議員の立場は明確に 
●市議会議員が文具店を個人経営し、年2回定期的に市に文房具を年間売上の約10%を納入するような場合、その契約内容が、当該市に対し定期的に納入する契約であるときは、自治法第92条の2に規定する請負に該当する(昭31.12.18実例)。
 
○議員が契約当事者叉はその支配人でない限り、自治法第92条の2にいう請負には該当しない(昭31.12.18実例)。
○法第104条の「当選人」とは選挙会において当選人と決定された者をいう(昭34.7.14実例)。
 
○法第104条は自治法第92条の2叉は同法第142条に規定する関係を有する当選人に対して届出義務を課する規定であり、当選人が当選の告知を受ける以前において既に右の自治法に規定する関係を有しなくなっている場合についてまで届出義務を課したものではない(昭34.7.14実例)。
 
○議員の請負とその効力について。
 法第92条の2の規定に反して、議員が請負契約を結んだとき、当該請負契約は有効であるか?
 (回答) 契約は有効である。(昭和32年2月11日行政課長回答〜京都議会会議会局長宛)
 
●入札制度と本条の関係
  (一) 地方自治法第92条の2の施行によりその会社の取締役の内に市議会議会議員が就任している故を
      以て当該市の工事請負入札に参加することを拒否されているがそれは適当な措置と解してよいか?
    (回答)  地方自治法第92条の2の規定は請負個人が、当該団体等に対して主として請負する法人の役
      職員たることを禁ずるものであり、指名競争入札及びせり売りの入札資格の制限については、会計
      (財務)規則の定めるところによる。ただし当該法人と契約を締結することにより同条違反となるとき
      は入札を制限することは差し支えないものと解する。
 
  (二) 本条文中に規定されていないいわゆる会社社長、顧問、相談役、職員等に当該市議会議員が就任
       している場合は本条文に抵触しないからその市の工事請負入札に参加せしめるべきであると解して
       よいか?
    (回答)  取締役、監査役等と同等程度の執行力と責任とを当該法人に対して有するものは、「これ
      に準ずべき者」に該当する。
 
  (三) 当会社は昭和25年に市のいわゆる代行機関的性格を以て設立されたものであるので市が出資総額
      の100分の30に相当する額を出資
している関係上市議会から取締役として議員を4名(総員12名)
       を送り出している現況であるがこのような場合でも市議会議員が取締又監査役に名を連ねている限
       り入札に参の加できないもと解すべきか或いは設立の目的と市が多額の出資をしている株主であ
       る関係から強いて取締役たる市会議員を辞職せしめなくとも入札に参加せしめる落札の場合は請
       負せしめるべきと解してよいか?
    (回答)  市との請負が当該会社の業務の主要部分を占める場合においては、前段お見込みのとおり。
 
  (四) 市議会議員が取締役である会社といえども当該市から請け負う工事金額がその会社の事業分量に比
      し僅少である場合(例えば年間請負金額の3分の一以内)は差し支えなし
       と解する向きもあるがどうか?
    (回答)  三により承知されたい。




 【判 例】


●府県制第6条第9項にいう請負は、営利の意思を伴うことを必要としないから、県から災害復旧治水工事を請負った者が仮に営利の意思を有しなっかたとしても、同項にいう「府県の為請負を為す者」に該当する(明45.2.5行裁判決)
 
●政府の請負をする者とは、民法上の請負をする者を指称するのみならず、政府から一定の報酬を得て、その需用を供給することを業とする、いわゆる御用達のごとき者を包含する(大4.12.28大審院判決)。
 
●請負をする者とは、現に請負契約により義務を負担する者のみを指するものと解すべきである(大7.6.14行裁判決)。
 
●自治法124条にいう請負とは、民法上の請負契約だけではなく、請負的要素を有する売買叉は委任(準委任)等の契約を包含するものと解すべきである(昭34.9.19名古屋高裁判決)。
 
●県に対し県報を印刷することを請け負い、発行のつど、県で買い上げることを約定した場合は、県に対し請負をするものでないとはいえない(明34.4.12行裁判決)。
 
●市の予算を納入することを契約し納入した者は、市に対し請負をする者にあたる(大7.7.5行裁判決)。
 
●新聞の経営者が、県に対し、一定の報酬を得て新聞紙上に県の諸公文を掲載することを約した場合、その経営者は、県に対し請負をする者に該当する(大14.7.17行裁判決)。
 
●町の注文を受け、町名、町長氏名、収入役氏名及び年月日を印刷した用紙を納入し、町から報酬
 を受けた者は、町に対し請負をする者に該当する(昭2.9.27行裁判決)。
 
●法人が、府県に対し主として請負をするものであるかどうかは、問題を決定すべき時期に接着する既往業務上の実際上の成績により、法人が府県から受ける収入が、その収入の主要部分を占めるかどうかにより決定すべきである(大5.5.19行裁判決)。
 
●モーターボート競争会は、施工者たる市に対し、主として請負をする法人にあたる(昭32.12.3最高裁判決)。
 
●請負の範囲 自治法第92条の2にいう「請負」とは、同条の2の後記法意にかんがみ、民法第632条所定の請負ばかりでなく、ひろく業務として行われる経済的ないし営利的な取引契約であって、一定期間の継続性を有するものを含むと解されるので、市農協綾瀬市に対する前記信用事業、すなわち市農協の綾瀬市に対する資金の貸付け及び綾瀬市からの貯金叉は定期積金の受け入れは、いずれも右にいう「請負」に該当するものというべきである(昭60.12.24東京高裁判決)。
 
○県のため請負った工事が選挙期日に終了しているときは、保証責任の期限中であっても、県に対し請負関係にあるとはいえない(明38.2.20行裁判決)。
 
○町役場に対し木炭売却の予約をしたにすぎない者は、町に対し請負をする者にあたらない(大3.5.2行裁判決)。
 
○県の辞令書をうけて県立中学校医を嘱託されている者は、手当を受けていても、県に対し請負をする者とはいえない(大5.3.3行裁判決)。

○新聞社が市の申込に応じ広告を掲載した場合、広告料を割引する旨の契約をしたからといって、新聞社が市に対し請負をする者とはいえない(大8.6.27行裁判決)。
 
○あらかじめ印刷してある用紙を町に納入したからといって、それだけでは、その印刷業者を町に対し請負をする者とはいえない(大15.6.3行裁判決)。
 
○県民の市弁にかかる警察署及び中学校に電気を供給している会社は、県との間に請負契約をしているものとは認められない(明38.2.17行裁判決)。

○市のため市街用電燈を供給する電気会社は、市に対し主として請負をする法人ではない(大2.11.29行裁判決)。

○町の徴収事務、金庫事務の取扱をし、有価証券の保護預、委託売買をし、町の一時借入金に応ずる銀行は、これらの業務がその銀行の主要なる業務と認められない以上、町に対し主として請負をする法人とはいえない(大7.12.16行裁判決)。

 
○電燈会社の市に対する電燈供給による収入が、同会社の総収入のうち僅小部分にすぎない場合は、同電燈会社が、市に対し主として請負をする法人であるとはいえない(大11.3.18行裁判決)。

○都道府県の許可を受け、採取料を納付して、砂利採取事業を行う会社は、都道府県に対し請負をする法人とはいえない(昭35.9.2最高裁判決)。

○自治法第92条の2にいう「主として同一の行為をする法人」とは、当該地方公共団体及び当該地方公共団体において経費を負担する事業についてその団体において経費を負担する事業についてその団体の長等との請負が当該法人の業務量の主要部分を占める法人を指するものであり、その判決は個々具体的になされるべきであるが、ここにいう「主として」とは、請負関係を有しているか否かを決すべき時期に接着する既往の業務実績により、おおむね当該法人の業務量の主要部分が当該地方公共団体に対する請負で占められているものを意味すると解するのが相当であり、当該法人の業務量の地方公共団体の請負関係費全体に占める割合は考慮すべきではない(昭51.12.20高松高裁判決)。

○自治法第92条の2にいう「主として同一の行為をする法人」とは、普通地方公共団体に対する請負または普通地方公共団体において経費を負担する事業についてその団体の長等に対する請負が全業務の主要部分を占める法人をいい、右の主要部分を占めるか否かの判断は、これを決すべき時期に近接する当該法人の既往の業務実績に基づき、右請負の金額と当該法人の全業務量を金額に換算したものとの比率等によって個々具体的になされるべきである(昭60.12.24東京高判決)。

   
○当該普通地方公共団体等に対する請負量が当該法人の全体の業務量の半分を超える場合は、そのこと自体において、当該法人は「主として同一行為をする法人」に当たるものというべきであるが、右請負量が当該法人の全体の業務量の半分を超えない場合であっても、当該請負が当該法人の業務の主要部分を占め、その重要度が長の職務執行の公正、適正を損なうおそれが類型的に高いと認められる程度にまで至っているような事情があるときは、「主として同一の行為をする法人」に当るといいうる。(昭62.10.20最高裁)。

   
○平成26年5月28日 朝日新聞(朝刊)より
議員2親等規制は「合憲」 公共工事受注で最高裁
 自治体が発注する工事を,議員の2親等以内の親族が経営する企業が受注することを制約した条例が憲法に違反するかが争われた訴訟の上告審判決が27日あった。最高裁第三小法廷(岡部喜代子裁判長)は「議員の地位を失わせるなど法的な強制力を伴わない限り,2親等規制は合憲」との初判断を示した。4人の裁判官全員一致の意見。2親等規制を「違憲」とした二審・広島高裁判決を一部破棄し,審理を同高裁に差し戻した。小法廷は規制について「議員の職務執行の公平さに市民の疑惑や不信を招く行為を防ぎ,議会の公正な運営に市民の信頼を確保するうえで正当なもの」と指摘した。  広島県府中市議会は2008年3月,議員活動に関する政治倫理条例を制定。このなかで,議員の2親等以内の親族が経営する企業が市発注工事を受注した場合,議員は,親族に契約を辞退させるよう努力しなければならないと定めた。11年10月の二審判決は「2親等規制は無効」と判断した。

○【解釈】地方議会政治倫理条例において、議員は、二親等以内の親族が経営する企業に対し市の工事請負契約等の辞退届を徴して提出するよう努めなければならないとする規定が憲法22条1項・29条に違反しないとされた。この判例は企業側の辞退規定も憲法21条1項に違反しないとされた憲法判断は、目的・効果基準で審査されているが、いずれも努力規定であること、議会の自律的判断が尊重されるべきこと、公正或いはこれに対する信頼を害するおそれはあること等が重視されています。議員には、違反時の公表・辞職勧告措置等の不利益があるとしても、合理性の枠内との判断のようです。議員の公共的立場や自律権に対する最高裁の考え方が示された事案(最高裁 2014.05.27)

   
射水市議会議員 市民同志会 幹事長 菊民夫 ●【解釈】府中市(広島)議会議員政治倫理条例4条3項に違反したとして、議員らによる審査請求、市議会による警告等をすべき旨の決議、議長による警告等を受けた事に対し、「条例は違憲で無効、損害賠償」を求めた事件が最高裁まで争われた。
 地方自治法92条の2がその規制を上回る条例による規制を認めていないから,同条項の規制を上回る本件倫理条例4条の規定は無効である旨主張している。しかしながら、地方自治法92条の2の規定,その他地方自治法の規定上,議員の兼職禁止規定を同法92条2の範囲に限定する明文の規定はなく,議員の兼職禁止の範囲・態様を規制するのに地方の実情・地域の特性,すなわち,当該普通地方公共団体の規模,産業構造,公共企業に対する依存度,過去の不正行為の有無・態様等を考慮して取り決めることが許されないとする理由は見出せない。地方自治法92条2の規定を上回るあるいは異なる規制をする本件 倫理条例の制定が直ちに無効であると認めることはできない
   
(最高裁は2014年5月27日に合憲判決を出した)  tamio 2015.12.20記述

   ● 議員提出議案 射水市政治倫理条例(案) 2015年3月9日(本会議 否決)
   ● 地方自治法に踏み込めない自民党(案)なら、新しい条例はいらない! (笑い)
   ● 菊民夫の議会質問の2015.03にリンク


 【兼職の禁止・兼業の禁止〜地方自治法第92条】


第92条
1 普通地方公共団体の議会の議員は、衆議院議員又は参議院議員と兼ねることができない。
2 普通地方公共団体の議会の議員は、地方公共団体の議会の議員及び常勤の職員と兼ねることができな
  い。

※ 平成13年4月1日施行の改正規定
2 普通地方公共団体の議会の議員は、地方公共団体の議会の議員並びに常勤の職員及び地方公務員法(昭和25年法律第261号)第28条の5第1項に規定する短時間勤務の職を占める職員(以下「再任用短時間勤務職員」という。)と兼ねることができない。


第92条の2
 普通地方公共団体の議会の議員は、当該普通地方公共団体に対し請負をする者及びその支配人又は主として同一の行為をする法人の無限責任社員、取締役若しくは監査役若しくはこれらに準ずべき者、支配人及び清算人たることができない。


 【100条委員会】

 執行機関に対する議会の監視機能を実効あるものとするために,地方自治法第100条は,議会は市町村の事務に関して調査を行い,関係人の出頭,証言や記録の提出などを求めることができるとする強力な権限を認めています。
 この地方自治法第100条の調査権に基づいて,「公有財産の払い下げに係る不正疑惑」,「職員採用のあっせんの真相解明」などを目的として設置される委員会が「100条委員会」といわれるものです。
 なお,100条委員会の請求に対して,正当な理由がないのに記録の提出を拒んだりすると,議会の告発によって,6ヶ月以下の禁錮または10万円以下の罰金に処せられることがあります(地方自治法100条3項)。

 【100条委員会の設置〜特別委員会】


 常設の委員会である「常任委員会」に対して,特に付託されたことがらについて審議するため,必要に応じて条例により設置されるのが「特別委員会」です(地方自治法110条1項)。  特別委員会が設置されるのは,次のような場合です(中島正郎『最新会議規則・委員会条例・傍聴規則逐条解説』)。
  1. 政治的に必要があることがらを審議しようとするとき
  2. 2つ以上の常任委員会にまたがることがらを審議しようとするとき
  3. 連合審査会(常任委員会どうしが合同して審査をすること。)では目的が果たせないとき
  4. 総合的な施策を樹立しようとするとき
  5. 地方自治法第100条に基づく調査をしようとするとき(この目的のために設置される特別委員会を俗に「100条委員会」といいます。)
  6. 議員としての資格や懲罰などを審査するとき

 そのような理由で設置される特別委員会の例としては「決算審査特別委員会」,「広域行政特別委員会」,「まちづくり対策特別委員会」などが挙げられます。  特別委員会は,付託された事件の審査や調査が終了すれば消滅しますが(地方自治法110条2項),常設的に置かれていることが少なくありません。


 【あっせん利得罪】

公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰に関する法律
(平成十二年十一月二十九日法律第百三十号)

 あっせん利得処罰法は、国会議員とその公設秘書、地方議員、首長を対象に、国や自治体の契約や行政処分に関して、公務員に口利きをした見返りに報酬を受けた場合、処罰されることを定めている。刑法のあっせん収賄罪は、公務員に不正な行為をさせた場合に適用されるが、あっせん利得処罰法は合法的な行為をさせた場合でも、報酬を受けていれば適用される。

(公職者あっせん利得)
第一条
 衆議院議員、参議院議員又は地方公共団体の議会の議員若しくは長(以下「公職にある者」という。)が、国若しくは地方公共団体が締結する売買、貸借、請負その他の契約又は特定の者に対する行政庁の処分に関し、請託を受けて、その権限に基づく影響力を行使して公務員にその職務上の行為をさせるように、又はさせないようにあっせんをすること又はしたことにつき、その報酬として財産上の利益を収受したときは、三年以下の懲役に処する。
 2  公職にある者が、国又は地方公共団体が資本金の二分の一以上を出資している法人が締結する売買、貸借、請負その他の契約に関し、請託を受けて、その権限に基づく影響力を行使して当該法人の役員又は職員にその職務上の行為をさせるように、又はさせないようにあっせんをすること又はしたことにつき、その報酬として財産上の利益を収受したときも、前項と同様とする。

(議員秘書あっせん利得)
第二条
 衆議院議員又は参議院議員の秘書(国会法 (昭和二十二年法律第七十九号)第百三十二条 に規定する秘書をいう。以下同じ。)が、国若しくは地方公共団体が締結する売買、貸借、請負その他の契約又は特定の者に対する行政庁の処分に関し、請託を受けて、当該衆議院議員又は当該参議院議員の権限に基づく影響力を行使して公務員にその職務上の行為をさせるように、又はさせないようにあっせんをすること又はしたことにつき、その報酬として財産上の利益を収受したときは、二年以下の懲役に処する。
 2  衆議院議員又は参議院議員の秘書が、国又は地方公共団体が資本金の二分の一以上を出資している法人が締結する売買、貸借、請負その他の契約に関し、請託を受けて、当該衆議院議員又は当該参議院議員の権限に基づく影響力を行使して当該法人の役員又は職員にその職務上の行為をさせるように、又はさせないようにあっせんをすること又はしたことにつき、その報酬として財産上の利益を収受したときも、前項と同様とする。


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