帝王切開


なっちゃんは、帝王切開で生まれた。

帝王切開というと、とても特殊な出来事のように思うけど、実は、今、日本で10人に1人は帝王切開なんだそうな。

う〜ん、でも、その10分の1にはいっちゃうっていうのは、ちょっと特殊なのかな、やっぱり。

そういえば、高校の運動会の時も、10分の1の確率で、この足の遅い私がじゃんけんに負けてリレーを走ったことがあった。そういう時にだけは、めっぽう当たる確率が高いのだ、私は。

ところで、帝王切開になるには、それなりの理由があり...

私のように、逆子の場合もあれば、骨盤がせまくて普通分娩が難しい場合、多胎の場合、赤ちゃんに負担がかかる場合(たとえば病気とか)...などなどがある。


ちなみに、なぜ逆子だと帝王切開になる確率が高いかというと...

逆子だと、足から生まれて一番最後に頭が出てくることになるわけなんだけど、その順序でいくと、一番大きい頭がへその緒を圧迫する形で出てくることになる。赤ちゃんとお母さんをつなぐ生命線であるへその緒がここで断絶なんてことになると危険だということ。また、一番大きい頭が一番最後に出てくる、ということで難産になる確率が高いということなどがある。

なかなか私も物知りである。(うそ、ただの先生の受け売りだったりする)


帝王切開と決まって、私にはひとつ気がかりなことがあった。

それは、突然、お腹を切って出されても、赤ちゃんはすぐに外で息ができるんだろうか、という素朴な疑問。

ま、帝王切開で生まれる赤ちゃんなんて5万といるわけで(ほんとに5万かどうかは知らないが)、たぶんできるんだろうけど...でも。

ちゃんと普通に陣痛がきて生まれる分には、赤ちゃんにだって生まれてくる気があるんだろうから、それなりの心の準備もしてくるのだろうけど...

実は、私の赤ちゃんはまだ生まれるつもりはないかもしれず...いい子で寝てるやもしれず...と、いろいろ想像してしまうのだ。


そんなことを考えているうちにも手術日はやってくる。

そうなると、さすがにまわりもいろいろと気をつかってくれるわけだけど...

「でも、普通に産むより、帝王切開のほうがそりゃー楽で。」

と父親。

励ましのつもりかもしれないけれど、”普通に”産んだ経験もない男の人の言葉ほどあやしいものはなかったりする。

そして、

「腹を切って出すなんか、いつ退院してこれるともわからず...はぁ、気が遠くなるのぉ。」

と私よりも自分のほうが気が遠くなってたばーちゃん。

ば、ばーちゃん、死ぬわけじゃなし...一応10日後には退院する予定なんですけど(^^ゞ

そして、母親はというと

「でも...子供に『どこから生まれてきたの』って聞かれた時に、帝王切開だと『ここよ』っていうのが説明しやすくていいかもね。」

せいいっぱい考えたのかもしれないけれど、もちろん、あまり励みにならなかったのは言うまでもない(^^ゞ


そんなこんなで4月2日午後2時。

なっちゃんは生まれてきてちゃ〜んとすぐに息をしたんだけれど...

何がびっくりしたって、赤ちゃんというのは、ほんとに「おぎゃぁ」と言って生まれてくるのだ。

これにはびっくりした。

私は、菜月誕生の瞬間、

「ほんとに、おぎゃぁって言うんだなぁ。」

妙なことに1人で驚いていた。

んで、テレビのドラマで見るように、ここで看護婦さんが赤ちゃんを頭もとに連れてきてくれ、

「ああ、私の赤ちゃん!」

という感動的なご対面となるわけなんだけれど...

初対面の感想は、というと

「ははは、おもろい顔してんなぁ。」

だった(^^ゞ

生まれたての赤ちゃんは、赤くて、しわだらけで...ほんとにおもろい顔をしていた。

だから、その後、病室で先生に

「赤ちゃん、お母さんとそっくりですね。」

と言われた時は少し心外だと思ったりもしたものだ(^^ゞ


時がすぎるのは早いもので、もう7ヶ月前の話である。

たった半年前のことなのに、今では、自分が妊娠していたことも、菜月が生まれた時のことも、なんだか自分のことじゃないような気さえするから不思議なものだ。

 

菜月、生後7ヶ月。

出生時2910gだった体重も、いまや8kgを越えた。