反抗期


菜月が生まれて、まだ1ヶ月もたたない頃のことだった。
私のおばあちゃんが、寝ている菜月の顔をのぞきこんで言ったのだ。
「こんなに小さくても、これがあんたの力になってくれる。」
と。

おばあちゃんは、それから数週間後、突然なくなってしまったので、私にとって、その言葉は特に忘れられない言葉となった。
その頃、生まれたばかりの菜月を抱え、まだ新米かぁしゃんは、ほんとに、私たちがこの子をこれから育てていくんだなぁ、と少し不安な気持ちだったこともあり、おばあちゃんの言ったその言葉には、はっとする思いだった。

「育てる、育てる」
と思うと重圧になる。
でも、この子は、今はこんなに小さくても、いづれは、私を超えて、私を支えてくれる大きな存在になっていくのかなぁ、と、そんなふうに思ったのだった。


こんなに小さくても...

(生後0ヶ月)


そして、あれから2年。
菜月、2歳と1ヶ月。
反抗期真っ盛り。
「力になってくれる」どころか、若干2歳にして、若干(?)30歳と数ヶ月のかぁしゃんと、対等に張り合ってケンカできる今日この頃。

「ねんねしようか?」
「しないの!」
「ちっち出たかなぁ?」
「出てないの!」
「ご飯食べようか?」
「しないの!」
こちらの言うことには、とりあえず、ぜんぶ反対を言う。
それはもう、実にうれしそうに、意気揚揚とでも言おうか、そうすることを「誇り」とすらしている、そんな態度なのだ。


「写真撮るからこっち向いて」と言えば

意地でも顔をあげない菜月

(2歳1ヶ月)



何かさせようとすると、
「しないの!」
と言い放って、走って逃げて行く。
パンツをはかせる、服を着替えさせる、ご飯を食べさせる、おふろに連れていく、体を洗う、歯磨きさせる、トイレに連れていく。
何をとっても、何ひとつ物事がスムーズにすすむということがない。
非常に疲れる。
最後には、追いかけていく気力さえ失う。
「ええ〜い、ええかげんにせぇ〜!!」
ほえたくもなるというものだ。
がおぉ〜( ̄▽ ̄)


そして、寝ている時まで足蹴にされる

(2歳1ヶ月)


トイレに行くことを、断固としてこばむようになった菜月。
ところが、ふと見ると、
「ぽぽちゃん、ちっちしようか?」
そう言いながら、人形のぽぽちゃんを連れてトイレの前に立っている。
これは、しめしめと
「じゃぁ、かぁさんがドア開けてあげるね。」
と、ドアに手を伸ばした瞬間、
「しないの!」
だだだだだ〜っと走り去る。

「抱っこするの、抱っこするの!」
座りこんでだだをこねるので、仕方ないなぁと
「荷物持ってるからね、抱っこはできないよ。おんぶしてあげる。」
しゃがんだとたん、
「しないの!」
だだだだだ〜っと走り去る。


逃げ足はめっぽう速い!

(2歳1ヶ月)


「公園に行くのよぉ。公園行きたいのよぉ。」
朝起きた瞬間から、ゴネまくり。
掃除機もかけたい。シーツも洗いたい。やりたいことはいっぱいあるのに、
「よし、仕方がない。じゃー、公園行こうか!」
意を決して、言った瞬間
「いかないの!」
何なんだ、いったい...

ところが、
「じゃー、かあさんだけ行こうかなぁ。」
と言うと、
「なっちゃんも行くぅ!」
「あまのじゃく」とは、まさにこのことだ。
とにかく、ぜったいに反対を言う。
そうれは、もう、おもしろいほどに。


公園大好き。水たまり大好き。

(2歳1ヶ月)


しかも、反対を言うだけではない。
「シャボン玉したいのよぉ。シャボン玉したい!」
あんまり言うので、じゃーシャボン玉をしようかと、ベランダにシャボン玉を持ち出せば、
「なっちゃんはできないよ。アメちゃん食べてるからね。」
と言い放つ。
立派に口答えもする。


マイブームは「しゃぼん玉」

(2歳1ヶ月)


公園に行こうというので、砂場セットにボールにお茶にと、たくさん荷物を持ち、玄関を出る。出たとたんに、
「抱っこしてぇ〜、抱っこしてぇ〜。」
「公園行くんでしょ?じゃー歩いて行こう。」
「抱っこするぅ〜。」
「じゃー帰ろう。どうする?帰る?歩いて公園行く?」
「歩く...」
「抱っこするなら帰る」と言われ、しぶしぶ歩きはじめる菜月。

ところが、最近では、
「抱っこしてぇ、抱っこしてよぉ。」
と言うので、
「抱っこできないよ。かぁさん、いっぱい荷物持ってるもの。」
と言うと、
「じゃー帰る!」
反対に、「おどし文句」も使う。

でも...ちょっと考えてごらん、菜月。
「帰る」って、あぁ〜た、別に私が公園に行きたいわけじゃーないのよ、私が。
あぁ〜たが行きたいって言うから、このくそ暑いのに、ついていってあげてるのよ、私は。
何なんだ、いったい...


悪いと知っていても、わざとする。
何度言っても、コップのお茶をひっくり返す。
「ごめんなさいは?」
と言うと
「ごめんなさい...じゃないの!」
と言い放つ。

たまにあやまったかと思えば、
「ごめん、ごめん。なっちゃん、ひっかかっちゃったんだよ。」
まるで、ダチのようなあやまりっぷり。

かと思えば、何を思ったか、昨日のできごとを、突然思い出したかのように
「お茶こぼしてごめんなさいね。」
なんていってみたりする。
何なんだ、いったい...


公園でやるように、家でもお茶をこぼす

(2歳1ヶ月)


菜月、2歳1ヶ月。
たかだか2歳にして、これだけ大人を振り回せるとは、たいしたもんだ。
「こんなに小さくても、これがあんたの力になってくれる。」
おばあちゃんは言ったけど、その日は遠い、と思う今日この頃。

そして、先日。
「なっちゃんは、今、完全な第一反抗期やね。」
お義母さんに言われ...
「第一反抗期」ってことは、その後に「第二反抗期」もあるわけね(T△T)
なんて思ったわけであり...

「こんなに小さくても、これがあんたの力になってくれる。」
おばあちゃんは言ったけど、やはり、その日は遥かに遠い、と思う今日この頃。

ほんとに、そんな日はやってくるのだろうか...(^^;;;


やりたい放題の菜月しゃん

(2歳1ヶ月)