幼稚園


菜月、4歳0ヶ月。
4月9日、待ちに待った入園式。
「明日は入園式だから、晴れるといいねぇ。明日ってお天気どうなんだろう?」
そんな会話をしていたら、
「かぁさん、大丈夫だよ。さっきテレビで言ってたよ。明日は、晴れドキドキくもりだって。」
菜月のその言葉に、とーしゃんと、かぁしゃんは、バカ受けだったのだけれど...
菜月の言うとおり、入園式を迎える気分は、まさに、「晴れドキドキくもり」なのだった。


2人おそろいの服を作りました。

(菜月、4歳0ヶ月

貴裕、生後11ヶ月)


「待ちに待った」と言ったけれど、何を隠そう、待ちに待ったのは、菜月ではなく、この私なのだった( ̄▽ ̄)
菜月は、とにかく私から離れない子で、公園に行っても、けして他の子とまじって遊ぶことなんかなくて、
「かぁさんと一緒に。」
「かぁさんもこっち来て。」
砂場でも、ブランコでも、滑り台でも、いつも、私がそばにいないとダメなのだった。

家にいても同じ。
ご飯を食べるのも、トイレに行くのも、服を着替えさせるのも
「かぁさんが...」
「かぁさんと一緒に。」
ちょっと洗濯物を干しに、2階にあがっただけで、
「かぁさんがいない。おかあさーん、おかあさーん。」
と騒ぎまくった。

それは、もしかしたら、貴裕が生まれてから、ことさらひどくなったことだったかもしれないが...
貴裕1人だけでも手がかかるのに、菜月がこんな調子なもんだから、そのたいへんさたるや...


最近は少し友達の輪に

入れるように。



(菜月、3歳11ヶ月)



だいたい、菜月は、昼寝をすることがほとんどない。
それなのに、たまに眠いとグズる時は、なぜか、2人同時で...
貴裕は、眠くて大泣きで抱っこ、抱っこ。
その横で、菜月も
「眠たいから耳掻きしてよぉ。」
とグズる。

そうやって、やっと寝かしつけたとしても、、昼寝する時間は、これまた、相談したかのように、時間差で...
1人が寝れば、1人が起きる。
もぉ、それは、嫌がらせとしかいいようのない、タイミングの悪さなのだ(-_-;)
菜月がぎゃーと起き、その泣き声で、今寝かせたばかりの貴裕がびっくりして起きる。
そして、まだ眠たかったのに起きてしまった後味の悪さで、2人が2人して、寝る前よりも、もっと機嫌が悪くなるなんてことは、しょっちゅうなのだ。
しかも、貴裕は、ふとんに横になって昼寝するということが、ほとんどない。
どんなにぐっすり寝ているようでも、置けば、起きるという念の入りよう。
寝かしつけても、ずっと抱っこかおんぶをしていないと寝ない。
そして、半分やきもちもあるのか、その貴裕を、嫌がらせのように、菜月が起しに来るわけで...
1人の時は、思いもよらなかったことが、2人の育児では起こる。
子供を寝かしつける。
ただ、これだけのことが、こんなにたいへんだなんて、誰が想像できただろう。





しかも、こんな格好じゃないと

寝れない貴裕(-_-;)

(貴裕、生後5ヶ月)



そして、夜は夜で、いつまでも、ぐずぐずとグズる貴裕の横で、これまた、昼寝もしないくせに、いつまでも、テレビを見て、ちっとも寝ようとしない菜月に、つい、イライラが募り、
「いいかげんに寝なさい。」
菜月は、グズる貴裕の分まで、とばっちりを受けて怒られる。
そして、そういう怒り方をしてしまった自分に嫌気をさしながら、また日々、同じようなことを繰り返してしまう現実。
万事がそんな調子。

どっちにも十分に接してやれないというはがゆさ。
1人で、2人の子供の相手をするなんて、しょせんムリがあるのだ。
(きっぱり!)
1人なら、まだなんとかなるのに...いつもいつもそう思う。
そんなわけでで、ここんところのかぁしゃんの心の支えは、
「あともう少し。これも、菜月が幼稚園に行くまでのしんぼう。」
ということだった。


貴裕、生後11ヶ月。
寝させる、食べさせる、遊ばせる、おふろにつける。
赤ちゃんというのは、何をするにしても、手がかかるものなのだけれど...
菜月、4歳0ヶ月。
これが4年すぎると、どんなにしっかりするかと思いきや、手がかからなくなるどころか、手の焼かせ方は、かえって、より高度化(?)し、複雑化(?)する。
不思議なことに。

トイレに行けば、
「おかあさんも一緒に行ってよぉ。」
「1人でぬげない。」
「おかあさんがぬがせて。」
「なっちゃん、できるんだから1人でやって。」
と言っても、ぐずぐずぐずぐず、一向にやらない。
「お母さん、貴裕おんぶしてるから、座れないんだから。」
と言って、放っておくと、いつまでも座り込んで泣いている。


あっかんべぇ〜( ̄▽ ̄)

(菜月、3歳11ヶ月)


ご飯を作っていれば、
「なっちゃんのは、おべんとう箱に入れてほしいの。」
台所のマットにへたりこんでゴネる。
「そんなことしてる暇ないよ。かぁさん、忙しいんだから。」
と言ってみたものの、そんな言い方はなかったかな、と反省して、夕食を作る手を休めて、菜月のために、おべんとう箱に、おにぎりとおかずと詰めてやる。
それなのに、結局は、2口、3口食べただけで
「ごちそうさま。」
「せっかく作ったのに、なんで食べないの?」
と聞けば、眠いだの、もうおなかがいっぱいだの、あまり食べ過ぎたらおなかが痛くなっちゃうだのと、屁理屈のレパートリーは、かなり広い(−_− )( −_−)
そして、夜11時くらいになって、おなかがすいたと大泣きし、
「おにぎり作ってぇ、かぁさーん。」
「今日だけは作ってあげるから、明日からは、ちゃんとみんなが食べる時に、なっちゃんもしっかり食べないとだめだよ。」
と約束する。

でも、次の日になると...
「なっちゃん、お魚じゃなくて、からあげが食べたかった。」
と、口もつけずに、ご飯だけ食べて、ごちそうさま。
でも、たぶん、からあげを作っていたら、
「からあげじゃなくて...」
と言うのだ。
そして、寝る前になると、おなかがすいたから、と泣く(-_-;)

「おもちゃ、おかたづけして。」
と言えば、
「疲れたから。」
「おなかが減ったから。」
「もう、おかたづけは飽きちゃった。」
「うるさくすると、貴裕君が起きちゃうから。」
「おばあちゃんがやってよ。」
やはり、屁理屈のレパートリーは、かなり広い(−_− )( −_−)


幼稚園に持っていくものを

並べて、大喜びの菜月

(菜月、3歳7ヶ月)



「アンパンマンのお弁当箱」が

お気に入り!

(菜月、3歳11ヶ月)


0歳児と4歳児。
形に違いはあれ、2人が2人、好き放題、本能のまま、なんの遠慮もなく、わがままを言う。
子供ってやつは...ほんとに(−_− )( −_−)

ほとほと、うんざりして、
「んもぉ、さっさと幼稚園に行ってくれたらいいのに...」
何度も何度もそう思う。
そんな毎日の繰り返しなのだ。


2人連れはしんどいっす。

(菜月、3歳11ヶ月

貴裕、生後10ヶ月)


でも、そう思いつつ...
いざ、ほんとに入園する日がさしせまり、現実のものとなってくると...
幼稚園で、菜月が、1人ぽつんとたたずんで、泣いている姿が目に浮かぶのだ。
ちゃんとトイレって言えるだろうか?
友達と遊べるだろうか?
自分の思ってることを先生に言えるだろうか?
心配はつきない。
そして、なんだか、幼稚園に行かせるのが、かわいそうな気持ちさえしてくる。
これほど、待ちわびていたのに。
なんだか、何も、今年から幼稚園に行かさなくてよかったかなぁなんて、往生際の悪い気持ちにさえなる。
複雑な心境。


そして、迎えた入園式。
この日は、
「とーしゃんも、かぁしゃんも貴裕も、みんな一緒に行くからね。」
の言葉に、菜月の表情もいくぶんなごやかだった。
前日には、
「なっちゃん、お名前呼ばれたら、ちゃんと返事できるかな?ちょっと練習してみようか?」
お返事の練習もした。
「たにぐち なつきさん。」
「は〜あ〜いぃ〜♪」
ちょっと勘違いな返事ではあったけど、返事もできた(^^ゞ

が、当日は、一言も発しなかった菜月。
「たにぐち なつきちゃん」
先生に2度呼ばれたけれど、固まったままであり...
しかも、18名のクラスメートの中で、返事ができなかったのは、菜月1人だけだった(^^ゞ


「晴れドキドキくもり」の入園式

(菜月、4歳0ヶ月)


そして翌日。
はじめての登園日。
もっともっと、イヤだイヤだといってたいへんな朝になるかと思いきや、いつもと変らない朝だった。
が、幼稚園バッジをつけて、水筒とかばんをさげ、
「さ、そろそろ行こうか?」
そう言った瞬間、さっと顔がこわばり、玄関で靴をはく菜月の目は、涙でいっぱいだった。
バス停まで向かう途中、バスを待つ10分の間、なんとか気をまぎらせようとするんだけれど、菜月の顔はこわばったままで...
不安でいっぱいだったのだろう。
やっと一言、涙声で、
「帰りはどうすればいいの?」
そう聞いた。


玄関前で記念撮影

(菜月、4歳0ヶ月

貴裕、生後11ヶ月)



今まで1日じゅう一緒だった。
ある日、突然、かぁしゃんと離れて、1人で知らない場所に行く。
何をしていいのかもわからない。
知っている人もいない。
すごく不安だったに違いない。
「かぁさん、ずっと、ここで、なっちゃんのこと待ってるからね。」
そう言うと、
「うん...」
菜月は、今にも泣きそうな顔で、それでも、自分から私の手を離して、バスに乗って行った。
もっともっと、大泣きで、私の手を離さないんじゃないかと思っていた。
必死に涙をこらえる菜月の顔を見ていると、こっちが涙が出てきた。

少しでもしっかりしてもらおうと、知らず知らずのうちに、
「なっちゃんも、もうすぐ幼稚園でしょ。なんでも1人でやらなくちゃ。」
最近、そんな怒り方をしていた。
菜月は、菜月なりに感じて、がんばろうとしていたのだ。


菜月、入園おめでとう。

(菜月、4歳0ヶ月)


でも、2日目。
「今日は、雨だから、幼稚園はないかもしれないよ。」
菜月が言った。
3日目。
「なっちゃん、今日は、幼稚園、やめにしようかな。」
菜月が言った。

菜月はもしかして、最初の登園日、今日1日だと思ってがんばったのかもしれない。
2日目の夜。
「なっちゃん、そんなにいっぱいは行けないよ。」
と言った。

「今日は幼稚園あるの?」
毎朝おきてくるたびに、聞いた。
「とーさんが会社に行く日は、なっちゃんも幼稚園だよ。」
と言うと、スーツに着替え、ネクタイを結ぶとーしゃんに
「とーさん、会社行かないでよぉ〜。」
とすがった。

「どうして、幼稚園に行かないといけないの?」
「どうして、かぁさんは行けないの?」
1日に、何度も何度も口にした。
「じゃぁ、かぁさんがすぐにお迎えに来てよ。すぐにだよ。」
とも言った。



菜月、3歳0ヶ月の絵


菜月、4歳0ヶ月の絵


でも、保護者会のあった日。
「なっちゃん1人じゃ行けないよ。」
と涙顔で言う菜月に、
「今日は、かぁさんも幼稚園行くから、帰りは一緒に帰ろうか?」
と言ったところ、
「かぁさんがすぐに迎えに来てよ。すぐにだよ。」
と菜月。
「わかった。じゃーすぐ行く。ビューンって飛んで行こうかな。」
「かぁさん、飛べるっけ?」
「飛べないか...じゃぁ、タッタッタッタッタッて走っていこうかな。」
そう言うと、はじめて、少しだけ笑顔をのぞかせ、
「ゆっくりでいいよ。こけると、痛い痛いになっちゃうからね。」
そんなやさしさも、のぞかせた。
そして、
「バイキンマンは強いから、1人で行けるのだ!」
目に涙をいっぱいためて、精一杯強がってみせた。


アンパンマン大好き♪

(菜月、4歳0ヶ月)


今日も、バスの中に乗って、こっちを振り返った途端、こらえきれないように、見る見る涙があふれていた菜月。
大泣きで、
「行かない!」
とゴネれば、
「ほれほれ、しっかりしなさい。」
と言える。
でも、我慢して我慢して、必死で、涙をこらえて、がんばっている菜月を見ると、
「もう、今日は行かなくてもいいよ。」
つい、そう声をかけてやりたくなるのだ。
それが、たとえ、何の解決にならないとしても...


これが、なっちゃんの

幼稚園バッグなのだー


(菜月、3歳6ヶ月)


「ちょっとだけ行って、シール、ぺッタンして(出席簿に毎日シールを貼るのだ)すぐ帰っておいで。かぁさん、ここで待ってるからね。」
毎日そう言って送り出す。
「幼稚園から帰って、昼から、かぁさんと何して遊ぶか、考えといて。」
そういうと、少しだけ笑顔がのぞく。

そして5日目。
「今日も、シール、ぺッタンしに行こうね。」
というと、
「シール、ぺッタンして、いっぱいいっぱい、いっぱ〜いにになって、貼るところがなくなったら、もう幼稚園に行かなくてもいい?」
「.....」
(次のページがあるよ、とは言えないのだった)
毎日毎日、幼稚園に行かなくてもいい理由を探しもとめる日々。


これ着て入園式に行くの。

(菜月、4歳0ヶ月)


菜月、4歳0ヶ月。
それでも、やっぱり朝になると、幼稚園に行かなくちゃいけないとわかっているのだ。
菜月は、菜月なりに、必死でがんばろうとしている。
がんばっている菜月に、これ以上
「がんばって行きなさい。」
なんて言えない。

でも、心の中では、いつも応援してるよ。
がんばれ、菜月。


菜月、がんばれ〜

(菜月、4歳0ヶ月

貴裕、生後11ヶ月)