債権法改正 要綱仮案 情報整理

第12 契約の解除

4 債権者に帰責事由がある場合の解除

 債権者に帰責事由がある場合の解除について、次のような規律を設けるものとする。
 債務の不履行が債権者の責めに帰すべき事由によるものであるときは、債権者は、1から3までによる契約の解除をすることができない。

中間試案

第12 危険負担
 2 債権者の責めに帰すべき事由による不履行の場合の解除権の制限(民法第536条第2項関係)
  (1) 債務者がその債務を履行しない場合において,その不履行が契約の趣旨に照らして債権者の責めに帰すべき事由によるものであるときは,債権者は,契約の解除をすることができないものとする。
  (2) 上記(1)により債権者が契約の解除をすることができない場合には,債務者は,履行請求権の限界事由があることにより自己の債務を免れるときであっても,反対給付の請求をすることができるものとする。この場合において,債務者は,自己の債務を免れたことにより利益を得たときは,それを債権者に償還しなければならないものとする。

(概要)

 本文(1)は,債権者の帰責事由による履行不能の場面に関する民法第536条第2項の実質的な規律を維持しつつ,民法第536条第1項を削除し解除に一元化すること(前記1)に伴う所要の修正を加えるものである。ここでは,債権者が解除権を行使することができないことの帰結として,現行法と同様に反対給付を受ける権利が消滅しないという効果を導いている。また,「債権者の責めに帰すべき事由」という要件の存否につき,契約の趣旨に照らして判断することを明示している。債権者の帰責事由がある場合に解除権を否定すべきことは,履行不能か履行遅滞かによって異なるものではないと解されることから,履行請求権の限界事由(不能)があるか否かは要件としていない。
 本文(2)は,本文(1)により債権者が契約を解除することができない場合に,債務者が履行請求権の限界により自己の債務を免れるときであっても,反対給付を請求することができる旨を規定するものであり,民法第536条第2項の規律を維持するものである。同項の「反対給付を受ける権利を失わない」との文言については,これによって未発生の反対給付請求権が発生するか否かが明確でないとの指摘があることを踏まえ,反対給付の請求をすることができるという規定ぶりに改めることとしている。債務者が自己の債務を免れた場合に,それにより得た利益を償還する義務を負うとする点は,同項後段を維持するものである。
 なお,本文(2)と同趣旨のルールが契約各則に設けられる場合には,それが優先的に適用される(賃貸借につき,後記第38,10。請負につき,後記第40,1(3)。委任につき,後記第41,3(3)。雇用につき,後記第42,1(2))。

赫メモ

 債権者に帰責事由がある場合には債務不履行解除ができないとするものであり、民法536条2項において債務者の帰責事由に基づく履行不能の場合に債権者が反対給付にかかる債務を免れないものとされることと同じ趣旨に基づくものである。
 なお、審議過程で、債権者と債務者の双方に帰責事由がある場合の取扱いについて議論があったが、現行法(民法536条2項と543条の適用場面)にも存在する問題であり、引続き解釈に委ねられる。

現行法


斉藤芳朗弁護士判例早分かり