債権法改正 要綱仮案 情報整理

第13 危険負担

1 危険負担に関する規定の削除(民法第534条・第535条関係)

 民法第534条及び第535条を削除するものとする。

中間試案

1 危険負担に関する規定の削除(民法第534条ほか関係)
 民法第534条,第535条及び第536条第1項を削除するものとする。

(注)民法第536条第1項を維持するという考え方がある。

(概要)

1 民法第534条及び第535条について
 民法第534条については,契約締結と同時に債権者が目的物の滅失又は損傷の危険を負担するとの帰結が不当であるとして,かねてから批判されている。また,その適用場面を目的物の引渡時以降とする有力な学説があるが,これを踏まえた規定については,売買のパートにおいて,いわゆる危険の移転時期に関するルールとして明文化するものとしている(後記第35,14)。そこで,同条を契約の通則として維持する必要性はないため,同条を削除するものとしている。民法第535条のうち第1項及び第2項は,同法第534条の特則であるから,その削除に伴って当然に削除することとなる。また,同法第535条第3項の規定内容は,債務不履行による損害賠償や契約の解除に関する一般ルールから導くことができ,存在意義が乏しいと考えられている。以上を踏まえ,同条を全体として削除するものとしている。

赫メモ

 要綱仮案は、中間試案の民法534条及び535条に関する部分と同じである(中間試案概要の該当部分、参照)。

現行法

(債権者の危険負担)
第534条 特定物に関する物権の設定又は移転を双務契約の目的とした場合において、その物が債務者の責めに帰することができない事由によって滅失し、又は損傷したときは、その滅失又は損傷は、債権者の負担に帰する。
2 不特定物に関する契約については、第四百一条第二項の規定によりその物が確定した時から、前項の規定を適用する。

(停止条件付双務契約における危険負担)
第535条 前条の規定は、停止条件付双務契約の目的物が条件の成否が未定である間に滅失した場合には、適用しない。
2 停止条件付双務契約の目的物が債務者の責めに帰することができない事由によって損傷したときは、その損傷は、債権者の負担に帰する。
3 停止条件付双務契約の目的物が債務者の責めに帰すべき事由によって損傷した場合において、条件が成就したときは、債権者は、その選択に従い、契約の履行の請求又は解除権の行使をすることができる。この場合においては、損害賠償の請求を妨げない。

斉藤芳朗弁護士判例早分かり

【特定物売買の目的物(ただし,占有は買主にある)が滅失したとしても,売主の売買代金債権は消滅しない】最高裁昭和24年5月31日判決・民集3巻6号226頁
  買主Aは,売主Bから,すでにAが保管していた蚊取り線香を買い受けたが,空襲により蚊取り線香が焼失した。Bからの売買代金請求事件。
  蚊取り線香の売買は特定物の売買であるから,滅失したとしても,売主の代金債権が消滅する理由はない。