第15 債権者代位権
訴えによる債権者代位権の行使について、次のような規律を設けるものとする。
債権者は、1により訴えをもって債務者に属する権利を行使したときは、遅滞なく、債務者に対し、訴訟告知をしなければならない。
8 訴えの提起による債権者代位権の行使の場合の訴訟告知
債権者は,訴えの提起によって前記1の代位行使をしたときは,遅滞なく,債務者に対し,訴訟告知をしなければならないものとする。
債権者代位訴訟を提起した代位債権者は債務者に対する訴訟告知をしなければならないとするものであり,株主代表訴訟に関する会社法第849条第3項を参考として,合理的な規律を補うものである。債権者代位訴訟における代位債権者の地位は,株主代表訴訟における株主と同じく法定訴訟担当と解されており,その判決の効力は被担当者である債務者にも及ぶとされているにもかかわらず(民事訴訟法第115条第1項第2号),現在は債務者に対する訴訟告知を要する旨の規定がないため,その手続保障の観点から問題があるとの指摘がされている。
規律の趣旨は、中間試案概要のとおりである。
【代位訴訟の判決の効力は当然に債務者に及ぶことを前提として判断が示された事例】大阪地裁昭和45年5月28日判決・下民集21巻5〜6号720頁
AはBから建物を賃借していたところ,AはBに代位して,建物を占有しているCに対して明渡しを求め,A勝訴の判決が確定した。Bは,この判決に対して執行文付与を受け,Cに対する執行を申し立てたところ,Cから請求異議訴訟が提訴された。
AC間の代位訴訟の判決の効力は当然に代位訴訟の債務者であったBに及ぶ。
AB間の賃貸借契約は昭和38年に適法に解除されているが,代位訴訟の裁判所は解除後であるにもかかわらず,Aが代位債権を有することを前提としてAを勝訴される判決を言い渡している。Aは,解除とともに代位訴訟における代位債権を失うことによって民訴法115条1項2号の他人のための訴訟担当者としての適格を喪失したが,代位訴訟の判決はこれを看過してなされており,代位債務者であったBとの関係においては,当事者適格看過の判決はその効力を及ぼさない。また,この点は,代位債務者Bのみならず,第三債務者Cもこれを主張し得る。