債権法改正 要綱仮案 情報整理

第17 多数当事者

2 連帯債務者の一人について生じた事由の効力等
(1) 履行の請求(民法第434条関係)

 民法第434条を削除するものとする。

中間試案

3 連帯債務者の一人について生じた事由の効力等
 (1) 履行の請求(民法第434条関係)
   民法第434条の規律を改め,連帯債務者の一人に対する履行の請求は,当事者間に別段の合意がある場合を除き,他の連帯債務者に対してその効力を生じないものとする。

(注)連帯債務者の一人に対する履行の請求が相対的効力事由であることを原則としつつ,各債務者間に協働関係がある場合に限りこれを絶対的効力事由とするという考え方がある。

(概要)

 連帯債務者の一人に対する履行の請求について,これを絶対的効力事由としている民法第434条の規律を改め,相対的効力事由であることを原則とするものである。法令によって連帯債務関係が発生する場面などでは,連帯債務者相互間に密接な関係が存在しないことが少なくないため,履行の請求を絶対的効力事由とすることに対して,履行の請求を受けていない連帯債務者が自分の知らない間に履行遅滞に陥ったり(同法第412条第3項参照),消滅時効が中断したりする(同法第147条第1号参照)などの問題点が指摘されている。他方,履行の請求が絶対的効力を有することについて実務上の有用性が認められ,それが不当でないと考えられる場面(例えば,いわゆるペアローン)もあり得る。これらを踏まえ,相対的効力事由とすることを原則とした上で,当事者間(債権者と履行の請求の効力を及ぼし合う全ての連帯債務者との間)の別段の合意によって絶対的効力を生じさせることは妨げないものとしている。この点に関しては,相対的効力事由であることを原則としつつ,各債務者間に請求を受けたことを互いに連絡し合うことが期待できるような協働関係がある場合に限り絶対的効力事由とする旨の規定に改めるという考え方があり,これを(注)で取り上げている。

赫メモ

 規律の趣旨は、中間試案概要のとおりである。

現行法

(連帯債務者の一人に対する履行の請求)
第434条 連帯債務者の一人に対する履行の請求は、他の連帯債務者に対しても、その効力を生ずる。

斉藤芳朗弁護士判例早分かり

【不真正連帯債務において,請求は絶対的効力事由ではない】最高裁昭和57年3月4日判決・判時1042号87頁
 B1からの依頼で,Aは,B´証券会社のB2を通して株式を購入したが,B2は,B1と共謀して,株金と引換えではなく,Aが買い付けた株券をB1に交付した。Aは,昭和40年にこの事実を知ったが,B´のみを提訴し,3年経過後にB1を提訴した。
 民法719条所定の共同不法行為者が負担する損害賠償債務は,いわゆる不真正連帯債務であって連帯債務ではないから,右損害賠償債務については連帯債務に関する同法434条の規定は適用されないものと解するのが相当であり,共同不法行為が行為者の共謀にかかる場合であっても,これと結論を異にすべき理由はない。