第17 多数当事者
民法第432条の規律を次のように改めるものとする。
債務の目的がその性質上可分である場合において、法令の規定又は当事者の意思表示によって数人が連帯して債務を負担するときは、債権者は、その連帯債務者の一人に対し、又は同時に若しくは順次に全ての連帯債務者に対し、全部又は一部の履行を請求することができる。
1 債務者が複数の場合
(1) 同一の債務について数人の債務者がある場合において,当該債務の内容がその性質上可分であるときは,各債務者は,分割債務を負担するものとする。ただし,法令又は法律行為の定めがある場合には,各債務者は,連帯債務を負担するものとする。
(2) 同一の債務について数人の債務者がある場合において,当該債務の内容がその性質上不可分であるときは,各債務者は,不可分債務を負担するものとする。
同一の債務について複数の債務者がある場合に関して,分割債務(民法第427条),連帯債務(同法第432条),不可分債務(同法第430条)の分類を明確化する規定を設けるものである。
本文(1)は,債務の内容が性質上可分である場合について,分割主義(民法第427条)を原則とした上で,その例外として,法令又は法律行為の定めによって連帯債務が成立するものとしている。これは,連帯債務の発生原因に関する一般的な理解を明文化するものである。
本文(2)は,債務の内容が性質上不可分である場合には,各債務者は,専ら不可分債務を負担するものとしている。これにより,連帯債務と不可分債務とは,内容が性質上可分か不可分かによって区別されることになる。現行法の下では,内容が性質上可分であっても当事者の意思表示によって不可分債務にすることができると解されているが(不可分債権に関する民法第428条参照),本文では,これを連帯債務に分類するものとしている。
規律の趣旨は、中間試案概要のとおりである。要綱仮案においては、連帯債務がどのような場合に成立するかと、連帯債務の基本的な効力(民法432条)をあわせて規定することとしており、中間試案とは規定方法が異なっているだけで考え方を変更するものではない(部会資料67A、2頁)。なお、要綱仮案においては民法427条は改正せず、また、不可分債務については要綱仮案5のとおりである。
【コメント】
要綱仮案における連帯債務の規律をもって、いわゆる不真正連帯債務の概念が不要となり、連帯債務の規律が一本化されたとみるべきか否かは、なお、検討を要するものである。審議の過程において、不真正連帯債務の取扱いに関する議論をあえて回避してきたことは明らかであり、これまでの部会資料や審議の経過をもって、不真正連帯債務の不要性の根拠にすることはできない。
混同、更改の絶対効と連帯債務者間の求償ルールの点で、要綱仮案の規律は、不真正連帯債務についての現行判例法理と異なる。
(履行の請求)
第432条 数人が連帯債務を負担するときは、債権者は、その連帯債務者の一人に対し、又は同時に若しくは順次にすべての連帯債務者に対し、全部又は一部の履行を請求することができる。