債権法改正 要綱仮案 情報整理

第17 多数当事者

4 連帯債務者間の求償関係
(3) 負担部分を有する連帯債務者が全て無資力者である場合の求償関係(民法第444条関係)

 民法第444条の規律を次のように改めるものとする。
ア 連帯債務者の中に償還をする資力のない者があるときは、その償還をすることができない部分は、求償者及び他の資力のある者の間で、各自の負担部分に応じて分割して負担する。(民法第444条本文と同文)
イ アの場合において、求償者及び他の資力のある者がいずれも負担部分を有しない者であるときは、その償還をすることができない部分は、求償者及び他の資力のある者の間で、平等の割合で分割して負担する。
ウ ア及びイにかかわらず、償還を受けることができないことについて求償者に過失があるときは、他の連帯債務者に対して分担を請求することができない。

中間試案

4 連帯債務者間の求償関係
 (3) 負担部分を有する連帯債務者が全て無資力者である場合の求償関係(民法第444条本文関係)
  民法第444条本文の規律に付け加えて,負担部分を有する全ての連帯債務者が償還をする資力を有しない場合において,負担部分を有しない連帯債務者の一人が弁済をし,その他自己の財産をもって共同の免責を得たときは,その連帯債務者は,負担部分を有しない他の連帯債務者のうちの資力がある者に対し,平等の割合で分割してその償還を請求することができるものとする。

(概要)

 負担部分を有する全ての連帯債務者が無資力である場合において,負担部分を有しない複数の連帯債務者のうちの一人が弁済等をしたときは,求償者と他の有資力者との間で平等に負担をすべきであるとする判例法理(大判大正3年10月13日民録20輯751頁)を明文化するものである。

赫メモ

 要綱仮案アは、民法444条本文と同じである。
 要綱仮案イの規律の趣旨は、中間試案4(3)に関する中間試案概要のとおりである。
 要綱仮案ウの規律の趣旨は、民法444条ただし書と同じである。

現行法

(償還をする資力のない者の負担部分の分担)
第444条 連帯債務者の中に償還をする資力のない者があるときは、その償還をすることができない部分は、求償者及び他の資力のある者の間で、各自の負担部分に応じて分割して負担する。ただし、求償者に過失があるときは、他の連帯債務者に対して分担を請求することができない。

斉藤芳朗弁護士判例早分かり

【負担部分がゼロの連帯債務者が弁済した場合で,負担部分を有する連帯債務者が無資力であったときは,負担部分がゼロの連帯債務者に対して求償することができる】大審院大正3年10月13日判決・民録20輯751頁(参考)
 AがB1・B2・B3に対して金銭を貸し付け,負担割合が100%のB1がこれを受け取り費消した。B1が無資力となったため,負担部分がゼロであるB2がAに対して債務全額を弁済し,同じく負担部分がゼロであるB3に対して求償した。
 負担部分を超えて損失を分担させる民法444条の規定は,公平を旨とするものであり,その精神から考えて,負担部分のない者であっても,平等に負担させる趣旨と考えられる。