債権法改正 要綱仮案 情報整理

第17 多数当事者

6 連帯債権

 連帯債権者の請求権等について、次のような規律を設けるものとする。
 債権の目的がその性質上可分である場合において、法令の規定又は当事者の意思表示によって数人が連帯して債権を有するときは、各債権者は、全ての債権者のために全部又は一部の履行を請求することができ、債務者は、全ての債権者のために各債権者に対して履行をすることができる。

中間試案

6 債権者が複数の場合
 (1) 同一の債権について数人の債権者がある場合において,当該債権の内容がその性質上可分であるときは,各債権者は,分割債権を有するものとする。ただし,法令又は法律行為の定めがある場合には,各債権者は,連帯債権を有するものとする。
 (2) 同一の債権について数人の債権者がある場合において,当該債権の内容がその性質上不可分であるときは,各債権者は,不可分債権を有するものとする。

8 連帯債権
 連帯債権に関する規定を新設し,次のような規律を設けるものとする。
 (1) 連帯債権を有する数人の債権者は,すべての債権者のために履行を請求することができ,その債務者は,すべての債権者のために各債権者に対して履行をすることができるものとする。

(概要)

 同一の債権について複数の債権者がある場合に関し,分割債権(民法第427条)と不可分債権(同法第428条)に解釈によって認められている連帯債権を加えた3つの類型があることを踏まえ,同一の債務について数人の債務者がいる場合(前記1)と同様に,分類を明確化する規定を設けるものである。
 本文6(1)は,債権の内容が性質上可分である場合について,分割主義(民法第427条)を原則とした上で,その例外として,法令又は法律行為の定めによって連帯債権が成立するものとしている。
 本文6(2)は,債権の内容が性質上不可分である場合には,各債権者は,専ら不可分債権を有するものとしている。これにより,連帯債権と不可分債権とは,内容が性質上可分か不可分かによって区別されることになる。民法第428条は,内容が性質上可分であっても,当事者の意思表示によって不可分債権にすることができると定めているが,本文は,これを連帯債権に分類するものと改めている。

 本文8(1)は,不可分債権に関する民法第428条と同趣旨の規律を連帯債権について設けるものである。

赫メモ

 要綱仮案は、債権の目的が性質上不可分である場合に、複数の債権者があるときを不可分債権、債権目的が性質上可分であるが法律上の規定または意思表示によって複数の債権者が連帯して債権を有する場合を連帯債権と概念整理することとして、連帯債権の規律を設けるものである。

現行法

(不可分債権) 
第428条 債権の目的がその性質上又は当事者の意思表示によって不可分である場合において、数人の債権者があるときは、各債権者はすべての債権者のために履行を請求し、債務者はすべての債権者のために各債権者に対して履行をすることができる。

斉藤芳朗弁護士判例早分かり


【民法613条1項に定める賃貸人の転借人に対する賃料請求権と転貸人の転借人に対する賃料請求権とは連帯債権類似の関係になる,とされた事例】東京地裁平成14年12月27日判決・判時1833号68頁
 A1がA2に対して建物を賃借し,A2がBに転貸していたところ,A1が賃貸借契約を解除し,A2に対して,民法613条1項に基づき転借料を支払うように求めた。Bは転借料を供託した。
 賃貸人の転借人に対する賃料請求が転貸人の転借人に対する賃料請求に優失するものと解すことはできず,賃貸人の転借人に対する賃料請求権と転貸人の転借人に対する賃料請求権とは連帯債権類似の関係になるものと認められる。
 Bによる供託は,前記の民法613条1項の解釈を前提とする限り,債権者を確知し得ないとするものではないが,A1とA2との間に賃貸借契約の解約告知をめぐる紛争が係属していた等の事情に照らすと,Bが債権者を確知し得ないとした点に過失があるものとは認められず,有効。