第17 多数当事者
連帯債権者の一人との間の相殺について、次のような規律を設けるものとする。
債務者が連帯債権者の一人に対して債権を有する場合において、その債務者が相殺を援用したときは、その相殺は、他の連帯債権者に対してもその効力を生ずる。
8 連帯債権
連帯債権に関する規定を新設し,次のような規律を設けるものとする。
(1) 連帯債権を有する数人の債権者は,すべての債権者のために履行を請求することができ,その債務者は,すべての債権者のために各債権者に対して履行をすることができるものとする。
(2) 連帯債権者の一人と債務者との間に更改,免除又は混同があった場合においても,他の連帯債権者は,債務の全部の履行を請求することができるものとする。この場合に,その一人の連帯債権者がその権利を失わなければ分与される利益を債務者に償還しなければならないものとする。
(3) 上記(2)の場合のほか,連帯債権者の一人の行為又は一人について生じた事由は,他の連帯債権者に対してその効力を生じないものとする。
本文(1)は,不可分債権に関する民法第428条と同趣旨の規律を連帯債権について設けるものである。
本文(2)は,不可分債権者の一人と債務者との間に更改又は免除があった場合に関する民法第429条第1項と同趣旨の規律を連帯債権について設けるものである。もっとも,同項は,不可分債権者の一人と債務者との間に混同があった場合にも類推適用されると解されている(最判昭和36年3月2日民集15巻3号337頁参照)ので,これを反映させている。
本文(3)は,民法第429条第2項と同趣旨の規律を連帯債権について設けるものである。
要綱仮案は、相殺を弁済受領と同視するのが妥当であることから、絶対効の規律を設けるものである(部会資料83-2、16頁)。
(不可分債権者の一人について生じた事由等の効力)
第429条 不可分債権者の一人と債務者との間に更改又は免除があった場合においても、他の不可分債権者は、債務の全部の履行を請求することができる。この場合においては、その一人の不可分債権者がその権利を失わなければ分与される利益を債務者に償還しなければならない。
2 前項に規定する場合のほか、不可分債権者の一人の行為又は一人について生じた事由は、他の不可分債権者に対してその効力を生じない。