債権法改正 要綱仮案 情報整理

第18 保証債務

1 保証債務の付従性(民法第448条関係)

 民法第448条の規律を次のように改めるものとする。
(1) 保証人の負担が債務の目的又は態様において主たる債務より重いときは、これを主たる債務の限度に減縮する。(民法第448条と同文)
(2) 主たる債務の目的又は態様が保証契約の締結後に加重されたときであっても、保証人の負担は加重されない。

中間試案

1 保証債務の付従性(民法第448条関係)
 保証債務の付従性に関する民法第448条の規律を維持した上で,新たに次のような規律を付け加えるものとする。
 (1) 主たる債務の目的又は態様が保証契約の締結後に減縮された場合には,保証人の負担は,主たる債務の限度に減縮されるものとする。
 (2) 主たる債務の目的又は態様が保証契約の締結後に加重された場合には,保証人の負担は,加重されないものとする。

(概要)

 本文(1)は,民法第448条の解釈として,保証契約の締結後に主債務の目的又は態様が減縮された場合には,保証人の負担もそれに応じて減縮されるとされている(大連判明治37年12月13日民録10輯1591頁参照)ことから,これを明文化するものである。
 本文(2)は,保証契約の締結後に主債務の目的又は態様が加重された場合の処理について,一般的な理解を明文化するものである。

赫メモ

 要綱仮案(1)は、民法448条を維持するものである。
 要綱仮案(2)の規律の趣旨は、中間試案(2)に関する中間試案概要のとおりである。
 中間試案(1)の規律については、民法448条に委ねれば足りるとの判断から、当該規律を設けることが見送られた(第77回議事録28頁)。

現行法

(保証人の負担が主たる債務より重い場合)
第448条 保証人の負担が債務の目的又は態様において主たる債務より重いときは、これを主たる債務の限度に減縮する。

斉藤芳朗弁護士判例早分かり

@ 【主債務の弁済期が延長されれば,保証債務の弁済期も延長される】大審院明治37年12月13日判決・民録10輯1591頁
  AのBに対する主債務の弁済期は明治24年であったところ,弁済期が明治31年に延期された。Aは明治33年に保証人Cに対する訴訟を提訴した。
  何人といえども自己の関与しない契約の効力をもって対抗させられるべきものではないことは一般の原則ではあるが,この原則にも例外がある。保証債務は主たる債務の弁済を確保する従たる債務であるから特にその従たる債務を消滅させる事由がない限りはその性質として常に主たる債務と運命を共にする。したがって,主たる債務の弁済期を延長するのは,たとえ保証人が自らこれに関与しなかったとしてもその効力は当然に保証債務に及ぶ。

A 【主債務免除の効力は,保証債務にも及ぶ】東京地裁平成8年6月21日判決・判タ955号177頁
  AはBに対してリース料債権330万円を有していたが,Bの任意整理に際して,30%の配当を受ける等の任意整理案を了承し配当を受けた。その後,配当を受けることができなかった70%について,Bの保証人(Bの代表取締役)Cに対して保証債務の履行を求めた。
  連帯保証人の債務は主債務に付従する性質を有するから,主債務に対する期限の猶予や債権の放棄がなされた場合,保証人において,主債務の内容が制限されたにもかかわらず,あえて従前の債務全額について債権者に対して債務を負担することを認める意思表示をする等保証人が付従性を有しない独立の付務を負担するに至ったと解し得ない限り,期限の猶予や債権の放棄の効果は連帯保証債務にも及ぶ。

B 【保証債務は付従性を有するが,主債務が免除されたとしても保証人が付従性を有しない独立の債務を負担した場合は別である】最高裁昭和46年10月26日判決・民集25感7号1019頁
  AはBに対して売掛金740万円を有していたが,Bの任意整理に際して呈示された整理案には,BはAに対して20%の配当を行い残余の債務は免除するが,Bの保証人C(Bの代表取締役)に対しては債権全額を取り立てることができる旨明記されていた。
  Cが任意整理案を承諾したとすれば,CはAに対し,BのAに対する債務の一部が免除されたにもかかわらず,あえて免除部分を含む債務全額につきAに対しその履行をなすべき債務を負担する旨の意思表示をしたものと解することができる。原審は,CがAに対して負担する債務は,主債務者をBとする連帯保証債務であるから,主債務に付従する性質を有し,主債務が免除された限度においては,連帯保証債務も消滅すると判断するもののように解される。もとより,連帯保証債務が右のような付従性を有することは,原判示のとおりではあるが,Cが前述のように特段の意思表示をした場合においては,Cは意思表示によって主たる債務につき免除があった部分につき付従性を有しない独立の債務を負担するに至ったものというべく,Cが負担していた連帯保証債務はその限度においてその性質を変じたものというべきである。