債権法改正 要綱仮案 情報整理

第18 保証債務

3 保証人の求償権
(1) 委託を受けた保証人の求償権(民法第459条関係)

 民法第459条の規律を次のように改めるものとする。
ア 保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、過失なく債権者に弁済をすべき旨の裁判の言渡しを受け、又は主たる債務者に代わって弁済をし、その他自己の財産をもって債務を消滅させるべき行為をしたときは、その保証人は、主たる債務の免責を得るために支出した金銭その他の財産の額(当該財産の額が主たる債務の免責を得た額を超える場合にあっては、その免責を得た額)について、主たる債務者に対して求償権を有する。
イ 民法第442条第2項の規定は、アの場合について準用する。(民法第459条第2項と同文)
ウ 保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、保証人が主たる債務の履行についての期限が到来する前に弁済をし、その他自己の財産をもって債務を消滅させるべき行為をしたときは、主たる債務者は、主たる債務の履行についての期限が到来した後に、債務が消滅した当時利益を受けた限度において、償還すれば足りる。
エ ウの償還は、主たる債務の履行についての期限以後の法定利息及びその期限以後に履行したとしても避けることができなかった費用その他の損害の賠償を包含する。

中間試案

3 保証人の求償権
 (1) 委託を受けた保証人の求償権(民法第459条・第460条関係)
  民法第459条及び第460条の規律を基本的に維持した上で,次のように改めるものとする。
  ア 民法第459条第1項の規律に付け加えて,保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において,主たる債務の期限が到来する前に,弁済その他自己の財産をもって債務を消滅させるべき行為をしたときは,主たる債務者は,主たる債務の期限が到来した後に,債務が消滅した当時に利益を受けた限度で,同項による求償に応ずれば足りるものとする。

(概要)

 本文アは,委託を受けた保証人が主たる債務の期限の到来前に弁済等をした場合の求償権について,そのような弁済等は委託の趣旨に反するものと評価できることから,委託を受けない保証人の求償権(民法第462条第1項)と同様の規律とするものである。

赫メモ

 要綱仮案(1)アは、連帯債務におけるのと同様に、求償額は、出捐額が共同免責額以下であるときには出捐額が基準となり、その出捐額が共同免責額を超える場合にはその共同免責額が基準となるという考え方にしたがって規定を設けるものである。
 要綱仮案(1)イは、民法459条2項を維持するものである。
 要綱仮案(1)ウは、主債務者が有する期限の利益を害することにないよう、主債務の期限到来後に求償することができるという判例(大判大正3年6月15日)の立場を明文化し、主債務者は主債務の期限到来後に求償に応ずれば足りることを明らかにしている。
 要綱仮案(1)エは、委託を受けた保証人の求償権の範囲を定める442条から、保証人が主債務の期限到来後に弁済等をしていれば求償することができなかったものを除外するため、期限前弁済をした保証人の求償権の範囲を、主債務の履行期以後の法定利率及び主債務の履行期以後に履行したとしても避けることができなかった費用その他の損害の賠償に限定するものである(以上につき、部会資料67A、28頁)。

現行法

(委託を受けた保証人の求償権)
第459条 保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、過失なく債権者に弁済をすべき旨の裁判の言渡しを受け、又は主たる債務者に代わって弁済をし、その他自己の財産をもって債務を消滅させるべき行為をしたときは、その保証人は、主たる債務者に対して求償権を有する。
2 第四百四十二条第二項の規定は、前項の場合について準用する。

斉藤芳朗弁護士判例早分かり

【主債務の弁済期前に,保証人は主債務者に対して求償することはできない】大審院大正3年6月15日判決・民録20輯476頁
 事案は不明である(保証人による期限前弁済は,保証債務の履行ではないとして,主債務者が上告した事件のようである)。
 保証人は主たる債務者の期限の利益を害することができないので,債務の弁済期前にあっては,主債務者の承諾を得た場合を除き,保証人において求償を行うことはできない。