債権法改正 要綱仮案 情報整理

第18 保証債務

6 保証人保護の方策の拡充
(2) 契約締結時の情報提供義務

 契約締結時の情報提供義務について、次のような規律を設けるものとする。
ア 主たる債務者は、事業のために負担する債務についての保証を委託するときは、委託を受ける者(法人を除く。)に対し、次に掲げる事項に関する情報を提供しなければならない。
 (ア) 財産及び収支の状況
 (イ) 主たる債務以外に負担している債務の有無並びにその額及び履行状況
 (ウ) 主たる債務の担保として他に提供し、又は提供しようとするものがあるときは、その旨及びその内容
イ 主たる債務者がアの説明をせず、又は事実と異なる説明をしたために委託を受けた者がアの(ア)から(ウ)までに掲げる事項について誤認をし、それによって保証契約の申込み又はその承諾の意思表示をした場合において、主たる債務者がアの説明をせず、又は事実と異なる説明をしたことを債権者が知り、又は知ることができたときは、保証人は、保証契約を取り消すことができる。

中間試案

6 保証人保護の方策の拡充
 (2) 契約締結時の説明義務,情報提供義務
   事業者である債権者が,個人を保証人とする保証契約を締結しようとする場合には,保証人に対し,次のような事項を説明しなければならないものとし,債権者がこれを怠ったときは,保証人がその保証契約を取り消すことができるものとするかどうかについて,引き続き検討する。
  ア 保証人は主たる債務者がその債務を履行しないときにその履行をする責任を負うこと。
  イ 連帯保証である場合には,連帯保証人は催告の抗弁,検索の抗弁及び分別の利益を有しないこと。
  ウ 主たる債務の内容(元本の額,利息・損害金の内容,条件・期限の定め等)
  エ 保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合には,主たる債務者の[信用状況]

(概要)

 契約締結時の説明義務・情報提供義務に関する規定を設けることについて,引き続き検討すべき課題として取り上げたものであり,前記(1)の検討結果を踏まえた上で,更に検討を進める必要がある。取り分け主たる債務者の「信用状況」(本文エ)に関しては,債権者が主たる債務者の信用状況を把握しているとは限らず,仮に把握していたとしても企業秘密に当たるという意見がある一方で,契約締結時に債権者が知っているか,又は容易に知ることができた主たる債務者の財産状態(資産,収入等)や,主たる債務者が債務を履行することができなくなるおそれに関する事実(弁済計画等)を説明の対象とすることを提案する意見があったことなどを踏まえて,説明すべき要件とその具体的内容等について,更に検討する必要がある。

赫メモ

 要綱仮案アは、保証人が、主債務者から「絶対に迷惑をかけない。」「名前を貸すだけで良い。」などといわれて保証契約を締結し、その後予期に反して保証債務の履行を求められるという事態が生じないようにするため、主債務者の財産及び収支の状況等について、委託を受けた保証人に対する主債務者の情報提供義務について規律を設けるものである。
 要綱仮案イは、主債務者による説明義務が履行されなかった場合の効果等について定めるものであり、第三者詐欺に関する規定と同様の要件で、保証契約の取消しを認めるものである。これにより、予想外に保証債務の履行を求められることを回避するという保証人の利益と、あずかり知らない事情によって担保を失われるのを回避するという債権者の利益とを調整するものである(以上につき、部会資料70A、12頁以下)。

現行法


斉藤芳朗弁護士判例早分かり