債権法改正 要綱仮案 情報整理

第19 債権譲渡

2 将来債権譲渡
(2) 将来債権の譲渡後に付された譲渡制限の意思表示の対抗

 将来債権の譲渡後に付された譲渡制限の意思表示の対抗について、次のような規律を設けるものとする。
 民法第467条第1項の規定による通知又は承諾がされた時に債権が現に発生していないときは、その後にされた譲渡制限の意思表示については、1(1)イの規定は、適用しない。

中間試案

4 将来債権譲渡
 (1) …
 (3) 将来債権が譲渡され,権利行使要件が具備された場合には,その後に譲渡制限特約がされたときであっても,債務者は,これをもって譲受人に対抗することができないものとする。

(注1)上記(3)については,規定を設けない(解釈に委ねる)という考え方がある。

(概要)

 本文(3)は,権利行使要件の具備後に,譲渡人と債務者との間で譲渡制限特約(前記1(2)参照)がされたときには,債務者がその特約をもって譲受人に対抗することができないとしている。現在不明確なルールを明確化することにより,取引の安全を図ろうとするものである。これに対して,本文(3)のルール自体の合理性に疑問を呈し,このような規律を設けず,解釈に委ねるべきであるという考え方があり,これを(注1)として取り上げた。

赫メモ

 規律の趣旨は、中間試案4(3)に関する中間試案概要と同じである。

現行法

(指名債権の譲渡における債務者の抗弁)
第468条 債務者が異議をとどめないで前条の承諾をしたときは、譲渡人に対抗することができた事由があっても、これをもって譲受人に対抗することができない。この場合において、債務者がその債務を消滅させるために譲渡人に払い渡したものがあるときはこれを取り戻し、譲渡人に対して負担した債務があるときはこれを成立しないものとみなすことができる。
2 譲渡人が譲渡の通知をしたにとどまるときは、債務者は、その通知を受けるまでに譲渡人に対して生じた事由をもって譲受人に対抗することができる。

斉藤芳朗弁護士判例早分かり

【将来債権について譲渡後に譲渡禁止特約が付された場合,譲受人の善意を論じることは無意味であるとされた事例】東京地裁平成24年10月4日判決・判時2180号63頁
 平成20年,AはBに対する将来債権(向こう3年間に発生する工事請負報酬)αをCに対して譲渡担保として提供し,登記を完了した。Aが平成21年に請け負った工事報酬についてはAB間で譲渡禁止特約が付された。平成22年にDがαを差し押さえた。
 債権の譲渡禁止の特約についての善意(民法466条2項但書)とは,譲渡禁止の特約の存在を知らないことを意味し,その判断の基準時は,債権の譲渡を受けた時であるところ,αに譲渡禁止の特約を付する合意がされたのは,Cがαを譲り受ける契約を締結した後のことであるから,αの譲渡当時のCの善意について論ずることは不可能であって,無意味というほかない。したがって,本件債権譲渡契約によりCがαを取得したとは認められない。