債権法改正 要綱仮案 情報整理

第20 有価証券

1 指図証券
(2) 指図証券の譲渡の裏書の方式、権利の推定、善意取得及び抗弁の制限

 民法第472条を削除し、これに代えて、指図証券の譲渡の裏書の方式、権利の推定、善意取得及び抗弁の制限について、次のような規律を設けるものとする。
ア 指図証券の譲渡については、当該指図証券の性質に応じ、手形法(昭和7年法律第20号)中裏書の方式に関する規定を準用する。
イ 指図証券の所持人が裏書の連続によりその権利を証明するときは、その者は、証券上の権利を適法に有するものと推定する。
ウ 何らかの事由により指図証券の占有を失った者がある場合において、その所持人がイの規定によりその権利を証明するときは、当該所持人は、その証券を返還する義務を負わない。ただし、当該所持人が悪意又は重大な過失によりその証券を取得したときは、この限りでない。
エ 指図証券の債務者は、その証券に記載した事項及びその証券の性質から当然に生ずる結果を除き、その証券の譲渡前の債権者に対抗することができた事由をもって善意の譲受人に対抗することができない。

中間試案

1 指図証券について
 (1)ア …
  イ 指図証券の譲渡の裏書の方式,裏書の連続による権利の推定,善意取得及び善意の譲受人に対する抗弁の制限については,現行法の規律(商法第519条,民法第472条)と同旨の規律を整備する。


(概要)

 本文1(1)イは,指図証券の譲渡の裏書の方式,裏書の連続による権利の推定,善意取得及び善意の譲受人に対する抗弁の制限に関する現行法の規律(商法第519条,手形法第12条,第13条,第14条第2項,小切手法第19条,第21条,民法第472条)と同旨の規律を整備するものである。

赫メモ

 規律の趣旨は、中間試案概要のとおりである。
 要綱仮案(2)イの規律は小切手19条、同ウの規律は小切手法21条、同エの規律は民法472条の各規定に基づくものである。

現行法

(指図債権の譲渡における債務者の抗弁の制限)
第472条 指図債権の債務者は、その証書に記載した事項及びその証書の性質から当然に生ずる結果を除き、その指図債権の譲渡前の債権者に対抗することができた事由をもって善意の譲受人に対抗することができない。

商法
(有価証券の譲渡方法及び善意取得)
第519条 金銭その他の物又は有価証券の給付を目的とする有価証券の譲渡については、当該有価証券の性質に応じ、手形法(昭和七年法律第二十号)第十二条、第十三条及び第十四条第二項又は小切手法(昭和八年法律第五十七号)第五条第二項及び第十九条の規定を準用する。
2 金銭その他の物又は有価証券の給付を目的とする有価証券の取得については、小切手法第二十一条の規定を準用する。

手形法
(裏書の要件)
第12条 裏書ハ単純ナルコトヲ要ス裏書ニ附シタル条件ハ之ヲ記載セザルモノト看做ス
2 一部ノ裏書ハ之ヲ無効トス
3 持参人払ノ裏書ハ白地式裏書ト同一ノ効力ヲ有ス

(裏書の方式)
第13条 裏書ハ為替手形又ハ之ト結合シタル紙片(補箋)ニ之ヲ記載シ裏書人署名スルコトヲ要ス
2 裏書ハ被裏書人ヲ指定セズシテ之ヲ為シ又ハ単ニ裏書人ノ署名ノミヲ以テ之ヲ為スコトヲ得(白地式裏書)此ノ後ノ場合ニ於テハ裏書ハ為替手形ノ裏面又ハ補箋ニ之ヲ為スニ非ザレバ其ノ効力ヲ有セズ

(裏書の権利移転的効力)
第14条 裏書ハ為替手形ヨリ生ズル一切ノ権利ヲ移転ス
2 裏書ガ白地式ナルトキハ所持人ハ
一 自己ノ名称又ハ他人ノ名称ヲ以テ白地ヲ補充スルコトヲ得
二 白地式ニ依リ又ハ他人ヲ表示シテ更ニ手形ヲ裏書スルコトヲ得
三 白地ヲ補充セズ且裏書ヲ為サズシテ手形ヲ第三者ニ譲渡スコトヲ得

小切手法
(受取人の表示)
第5条 小切手ハ左ノ何レカトシテ之ヲ振出スコトヲ得
一 記名式又ハ指図式
二 記名式ニシテ「指図禁止」ノ文字又ハ之ト同一ノ意義ヲ有スル文言ヲ記載スルモノ
三 持参人払式
2 記名ノ小切手ニシテ「又ハ持参人ニ」ノ文字又ハ之ト同一ノ意義ヲ有スル文言ヲ記載シタルモノハ之ヲ持参人払式小切手ト看做ス
3 受取人ノ記載ナキ小切手ハ之ヲ持参人払式小切手ト看做ス

(裏書の資格授与的効力)
第19条 裏書シ得ベキ小切手ノ占有者ガ裏書ノ連続ニ依リ其ノ権利ヲ証明スルトキハ之ヲ適法ノ所持人ト看做ス最後ノ裏書ガ白地式ナル場合ト雖モ亦同ジ抹消シタル裏書ハ此ノ関係ニ於テハ之ヲ記載セザルモノト看做ス白地式裏書ニ次デ他ノ裏書アルトキハ其ノ裏書ヲ為シタル者ハ白地式裏書ニ因リテ小切手ヲ取得シタルモノト看做ス

(小切手の善意取得)
第21条 事由ノ何タルヲ問ハズ小切手ノ占有ヲ失ヒタル者アル場合ニ於テ其ノ小切手ヲ取得シタル所持人ハ小切手ガ持参人払式ノモノナルトキ又ハ裏書シ得ベキモノニシテ其ノ所持人ガ第十九条ノ規定ニ依リ権利ヲ証明スルトキハ之ヲ返還スル義務ヲ負フコトナシ但シ悪意又ハ重大ナル過失ニ因リ之ヲ取得シタルトキハ此ノ限ニ在ラズ

斉藤芳朗弁護士判例早分かり