第21 債務引受
併存的債務引受の効果について、次のような規律を設けるものとする。
ア 引受人は、併存的債務引受により負担する自己の債務について、その効力が生じた時に債務者が主張することができる抗弁をもって債権者に対抗することができる。
イ 債務者が債権者に対して取消権又は解除権を有するときは、引受人は、これらの権利の行使によって債務者がその債務の履行を免れる限度で、債権者に対して債務の履行を拒むことができる。
1 併存的債務引受
(1) …
(4) 引受人は,併存的債務引受による自己の債務について,その負担をした時に債務者が有する抗弁をもって,債権者に対抗することができるものとする。
本文(4)は,併存的債務引受がされた場合に,引受人は,債務を負担した時に債務者が有する抗弁をもって債権者に対抗することができるとする一般的な理解を明文化するものである。なお,引受人は他人の債権を処分することはできないため,債務者の有する相殺権を行使することはできず,連帯債務の規律(前記第16,3(2)ウ)に従うことになる。
要綱仮案(2)アの規律の趣旨は、中間試案1(4)に関する中間試案概要のとおりである。
併存的債務引受がされた後で、債務者が負担した債務を発生させる契約について解除権又は取消権が行使された場合には、引受人の債務もともに消滅するにもかかわらず、解除権等が行使されるまで引受人が引き受けた債務の履行を拒絶することができないというのは不当であることから、引受人は履行拒絶権を有するものと解されており、要綱仮案(2)イは、この点を明文化するものである(部会資料67A、34頁)。
(A=債権者,B=債務者,C=引受人)
【契約上の地位の譲渡を受けないと解除権の行使はできない】大審院大正14年12月15日判決・民集4巻710頁
AがBに対して大豆を売却したところ,BC間において,CがBから買主の権利を譲り受け,売買代金支払債務を引き受けることを合意したが,Aの同意は得ていなかった。Cが,Aに対して大豆の引渡しを催告し売買契約を解除した。
買主の権利の譲受人は,単に権利の譲受人にすぎず,売買契約当事者としての地位を承継しないため,解除権を行使することはできない。