債権法改正 要綱仮案 情報整理

第23 弁済

6 弁済の方法(民法第483条から第487条まで関係)
(1) 特定物の現状による引渡し(民法第483条関係)

 民法第483条の規律を次のように改めるものとする。
 債権の目的が特定物の引渡しである場合において、法律行為の性質又は当事者の意思によってその引渡しをすべき時の品質を定めることができないときは、弁済をする者は、その時の現状でその物を引き渡さなければならない。

中間試案

6 弁済の方法(民法第483条から第487条まで関係)
 (1) 民法第483条を削除するものとする。

(概要)

 本文(1)は,特定物の引渡しに関する民法第483条を削除するものである。同条は,実際にその適用が問題となる場面が乏しい反面,履行期の状態で引き渡せば,合意内容とは異なる性状で目的物を引き渡したとしても責任を負わないという誤った解釈を導くおそれがあると指摘されていることによる。

赫メモ

 中間試案では、引き渡すべき特定物の品質については、当事者間の合意によって常に定まるのであるから、民法483条を存置する必要はなく、かつ、同条がこれまで特定物ドグマの根拠の一つとされることがあったことなどの理由に基づき、同条を削除することとされていた。
 しかし、当事者間の合意に基づかずに、例えば、不当利得返還請求権に基づき特定物の引渡しをする債務が生じた場合について、履行遅滞後の保管に関して善管注意義務を尽くしていたにもかかわらず生じた損耗等について債務者が責任を負うのは、同条が根拠となるが、同条を削除することでこの点についての解釈が不明確になり得るという問題があると考えられる。
 そこで、この要綱仮案では、民法483条に「法律行為の性質又は当事者の意思によってその引渡しをすべき時の品質を定めることができないときは」との文言を加えて存置することとした(部会資料83-2、29頁)。

現行法

(特定物の現状による引渡し)
第483条 債権の目的が特定物の引渡しであるときは、弁済をする者は、その引渡しをすべき時の現状でその物を引き渡さなければならない。

斉藤芳朗弁護士判例早分かり