債権法改正 要綱仮案 情報整理

第23 弁済

10 弁済による代位
(3) 法定代位者相互間の関係(民法第501条後段関係)

 民法第501条後段の規律を次のように改めるものとする。
 (2)アの場合には、(2)イの規定のほか、次に定めるところによる。
ア 第三取得者(債務者から担保の目的となっている財産を譲り受けた者に限る。イにおいて同じ。)は、保証人及び物上保証人に対して債権者に代位しない。
イ 第三取得者の一人は、各財産の価格に応じて、他の第三取得者に対して債権者に代位する。
ウ イの規定は、物上保証人の一人が他の物上保証人に対して債権者に代位する場合について準用する。
エ 保証人と物上保証人との間においては、その数に応じて、債権者に代位する。ただし、物上保証人が数人あるときは、保証人の負担部分を除いた残額について、各財産の価格に応じて、債権者に代位する。(民法第501条第5号と同文)
オ 物上保証人から担保の目的となっている財産を譲り受けた者は、物上保証人とみなして、ア、ウ及びエの規定を適用する。

中間試案

10 弁済による代位
 (2) 法定代位者相互間の関係(民法第501条関係)
 民法第501条後段の規律を次のように改めるものとする。
  ア 民法第501条第1号及び第6号を削除するとともに,保証人及び物上保証人は,債務者から担保目的物を譲り受けた第三取得者に対して債権者に代位することができるものとする。
  イ 民法第501条第2号の規律を改め,第三取得者は,保証人及び物上保証人に対して債権者に代位しないものとする。
  ウ 民法第501条第3号の「各不動産の価格」を「各財産の価格」に改めるものとする。
  エ 保証人の一人は,その数に応じて,他の保証人に対して債権者に代位するものとする。
  オ 民法第501条第5号の規律に付け加え,保証人と物上保証人とを兼ねる者がある場合には,同号により代位の割合を定めるに当たっては,その者を一人の保証人として計算するものとする。
  カ 物上保証人から担保目的物を譲り受けた者については,物上保証人とみなすものとする。

(注)上記オについては,規定を設けない(解釈に委ねる)という考え方がある。

(概要)

 本文アのうち,保証人が第三取得者に対して代位することができることは民法第501条第1号が前提としているルールを明文化するものであり,物上保証人が第三取得者に対して代位することができることは現在規定が欠けている部分のルールを補うものである。また,本文アでは,保証人が不動産の第三取得者に対して代位するにはあらかじめ付記登記をすることを要するという同号の規定を削除することとしている。同号の規律は債権が消滅したという不動産の第三取得者の信頼を保護する趣旨であるとされているが,そもそも付記登記がない場合に債権が消滅したという第三取得者の信頼が生ずると言えるか疑問である上,抵当権付きの債権が譲渡された場合に,付記登記が担保権取得の第三者対抗要件とされていないこととのバランスを失しているという問題意識に基づくものである。
 本文イは,第三取得者は,保証人のほか物上保証人に対しても代位しないという一般的な理解を明らかにするため,民法第501条第2号を改めるものである。
 本文ウは,民法第501条第3号の「各不動産の価格」を「各財産の価格」と改めるものである。同号の適用範囲は,担保権付の不動産を取得した第三取得者に限られないと考えられており,そのルールの明確化を図るものである。
 本文エは,保証人が複数いる場合における保証人間の代位割合について,その数に応じて,他の保証人に対して債権者に代位することができるという一般的な理解を明文化するものである。
 本文オは,民法第501条第5号について,保証人と物上保証人を兼ねる者(二重資格者)がいた場合に,二重資格者を一人として扱った上で,頭数で按分した割合を代位割合とする判例法理(最判昭和61年11月27日民集40巻7号1205頁)を明文化するものである。もっとも,この判例については,二重資格者の相互間においても代位割合を頭数で按分するのが適当ではないとする批判や,事案によっては二重資格者の負担が保証人でない物上保証人よりも軽いという不当な帰結になり得るとの批判などがあることを踏まえ,引き続き解釈に委ねる考え方を(注)で取り上げた。
 本文カは,物上保証人から担保目的物を譲り受けた者を物上保証人とみなす旨の規律を新たに設けるものである。物上保証人から担保目的物を譲り受けた者の取扱いについての一般的な理解を明文化するものである。

赫メモ

 要綱仮案(3)は、中間試案(2)アを前提とするものである(中間試案概要の該当部分、参照)。
 要綱仮案(3)アは、中間試案(2)イと同じである(中間試案概要の該当部分、参照)。
 要綱仮案(3)イウの規律の趣旨は、中間試案(2)ウに関する中間試案概要と同じである。
 要綱仮案(3)エは、民法501条5号を維持するものである。中間試案(2)オの規律を設けることについては、見解の一致を見ないことから見送られ、引続き解釈に委ねられる。
 要綱仮案(3)オは、中間試案(2)カと同じである。

現行法

(弁済による代位の効果)
第501条 前二条の規定により債権者に代位した者は、自己の権利に基づいて求償をすることができる範囲内において、債権の効力及び担保としてその債権者が有していた一切の権利を行使することができる。この場合においては、次の各号の定めるところに従わなければならない。
 一 保証人は、あらかじめ先取特権、不動産質権又は抵当権の登記にその代位を付記しなければ、その先取特権、不動産質権又は抵当権の目的である不動産の第三取得者に対して債権者に代位することができない。
 二 第三取得者は、保証人に対して債権者に代位しない。
 三 第三取得者の一人は、各不動産の価格に応じて、他の第三取得者に対して債権者に代位する。
 四 物上保証人の一人は、各財産の価格に応じて、他の物上保証人に対して債権者に代位する。
 五 保証人と物上保証人との間においては、その数に応じて、債権者に代位する。ただし、物上保証人が数人あるときは、保証人の負担部分を除いた残額について、各財産の価格に応じて、債権者に代位する。
 六 前号の場合において、その財産が不動産であるときは、第一号の規定を準用する。

関連部会資料等

斉藤芳朗弁護士判例早分かり