債権法改正 要綱仮案 情報整理

第25 更改

1 更改の要件及び効果(民法第513条関係)

 民法第513条の規律を次のように改めるものとする。
 当事者が従前の債務に代えて、次に掲げるいずれかの新たな債務を成立させる契約をしたときは、従前の債務は、更改によって消滅する。
(1) 従前の給付の内容について重要な変更をしたもの
(2) 従前の債務者が第三者と交替したもの
(3) 従前の債権者が第三者と交替したもの

中間試案

1 更改の要件及び効果(民法第513条関係)
  民法第513条の規律を改め,当事者が債務を消滅させ,その債務とは給付の内容が異なる新たな債務を成立させる契約をしたときは,従前の債務は,更改によって消滅するものとする。

(概要)

 民法第513条第1項の「債務の要素」の内容として,債務の給付の内容(目的)が含まれるという一般的な理解を明らかにするとともに,更改の成立のために更改の意思が必要であるとする判例(大判昭和7年10月29日新聞3483号18頁)・学説を明文化するものである。なお,「債務の要素」という要件を用いないことと,更改の意思が必要であることを明示することに伴い,同条第2項については,削除することとしている。

赫メモ

 規律の趣旨は、中間試案概要と同じである。もっとも、給付の内容を変更した場合であっても、別個の者と評価されない場合には、更改の成立は否定されることから(大判大正5年2月24日、大判明治34年4月26日)この考え方を表すために「重要な変更をした」という要件が加えられた(部会資料83-2、34頁)。

現行法

(更改) 
第513条 当事者が債務の要素を変更する契約をしたときは、その債務は、更改によって消滅する。
2 条件付債務を無条件債務としたとき、無条件債務に条件を付したとき、又は債務の条件を変更したときは、いずれも債務の要素を変更したものとみなす。

斉藤芳朗弁護士判例早分かり

 (A=債務者,B=債権者)
@ 【更改が成立するためには,更改の意思が必要である】大審院大正7年10月29日判決・新聞3483号17頁
 (事案は不明)
  債権関係の主体又は内容の変更は,債権関係の同一性とは連動しない現在において,当事者の意思が特に明確な場合は別として,安易に更改がなされたものとすべきではない。

A 【債務の要素とは,債務の成立に必須の事項のことであり,この要素を変更して新債務とするのでなければ,更改とはいえない】大審院明治34年4月26日判決・民録4巻87頁
  AB間で,契約書を書き換えた(利息について,旧債務は元金10円につき月10銭としていたのを,新債務は月12銭50厘とし,返済期限に弁済がないときは延滞利子を元金に繰り入れる)ところ,更改に該当するか否かが争われた。
  旧債務の要素を変更して新債務に改めるのでなければ,債務に更改ありということはできない。債務の要素とは,債務の成立に必須の事項を指すものであり,利子に至っては,無利子にても債務が成立するがごとく,その成立に関係ないため,要素にあらず。また,期限に弁済を怠りたるときは期日前の延滞リスを元金に組み入れるがごとき追約はさらに条件付きにて新債務の添加を約束するものというべきではあるが,これがために根本たる債務の要素に変更ありということはできない。

B 【雇用契約の報酬を定額から歩合制に変更しても,更改ではない】大審院大正5年2月24日判決・民録22輯329頁
  AB間で,雇用契約の報酬を定額払いから歩合制に変更した。Aの保証人の責任が消滅するか否かが争われた。
  雇用契約における労務に対する報酬の種類いかんは雇用契約の要素ではなく,ゆえに,当事者が報酬として給与を与える約束を改め,商品の販売代金の歩合を与えることを合意したとしても,これをもって,雇用契約が更改されたものということはできない。