債権法改正 要綱仮案 情報整理

第25 更改

5 更改後の債務への担保の移転(民法第518条関係)

 民法第518条の規律を次のように改めるものとする。
(1) 債権者は、更改前の債務の目的の限度において、その債務の担保として設定された質権又は抵当権を更改後の債務に移すことができる。ただし、第三者がこれを設定した場合には、その承諾を得なければならない。
(2) (1)の質権又は抵当権の移転は、あらかじめ又は同時に更改の相手方に対してする意思表示によってしなければならない。

中間試案

5 更改後の債務への担保の移転(民法第518条関係)
  民法第518条の規律を次のように改めるものとする。
 (1) 債権者は,更改前の債務の限度において,その債務の担保として設定された担保権及び保証を更改後の債務に移すことができるものとする。
 (2) 上記(1)の担保の移転は,更改契約と同時にする意思表示によってしなければならないものとする。
 (3) 上記(1)の担保権が第三者の設定したものである場合には,その承諾を得なければならないものとする。
 (4) 更改前の債務の保証人が上記(1)により更改後の債務を履行する責任を負うためには,保証人が,書面をもって,その責任を負う旨の承諾をすることを要するものとする。

(概要)

 本文(1)は,担保・保証の移転について,債権者の単独の意思表示によってすることができることとするものである。民法第518条は,更改の当事者の合意によって,質権又は抵当権を更改後の債務に移すことができるとしているが,担保の移転について担保設定者ではない債務者の関与を必要とすることには合理的な理由がなく,また,移転の対象は質権又は抵当権に限られないと考えられることを考慮したものである,
 本文(2)は,本文(1)の債権者の意思表示が,更改契約と同時にされなければならないとするものである。同時性を要求するのは,更改契約の後は,担保権の付従性により当該担保権が消滅すると考えられるためである。
 本文(3)は,民法第518条ただし書を維持するものである。
 本文(4)は,保証の移転に関して,民法第446条第2項との整合性を図るものである。

赫メモ

 規律の趣旨は、中間試案概要と基本的に同じである。ただし、要綱仮案では、移転の対象となる担保権を質権又は抵当権に限定している(中間試案では、法定担保権や保証も移転の対象とし、免責的債務引受けにおける移転対象と同様に解していた)。これは、免責的債務引受けは、債務者が負担していた債務と同一性のある債務を引受人が負担するから担保権も承継されるのが原則であると考えられるのに対し、更改の場合は、同一性のない債務が発生するのであり、担保権は消滅するのが原則であると考えるべきであり、従前の担保権の順位を維持する必要があって、特に移転を認める必要性がある質権又は抵当権についてのみ、移転の対象とする現行法の考え方が妥当であるからである(部会資料69A、39頁)。

現行法

(更改後の債務への担保の移転)
第518条 更改の当事者は、更改前の債務の目的の限度において、その債務の担保として設定された質権又は抵当権を更改後の債務に移すことができる。ただし、第三者がこれを設定した場合には、その承諾を得なければならない。

斉藤芳朗弁護士判例早分かり