債権法改正 要綱仮案 情報整理

第27 契約の成立

4 対話者間における申込み

 対話者間の申込みについて、次のような規律を設けるものとする。
(1) 承諾の期間を定めないで対話者に対してした申込みは、その対話が継続している間は、いつでも撤回することができる。
(2) 申込者が(1)の申込みに対して対話が継続している間に承諾の通知を受けなかったときは、その申込みは、その効力を失う。ただし、申込者が対話の終了後もその申込みが効力を失わない旨を表示したときは、この限りでない。

中間試案

4 対話者間における申込み
 (1) 対話者間における申込みは,対話が終了するまでの間は,いつでも撤回することができるものとする。
 (2) 対話者間における承諾期間の定めのない申込みは,対話が終了するまでの間に承諾しなかったときは,効力を失うものとする。ただし,申込者がこれと異なる意思を表示したときは,その意思に従うものとする。

(概要)

 本文(1)は,申込みが対話者間でされた場合の撤回について,民法第521条第1項及び前記3(1)で改めた場合の同法第524条の特則を新たに定めるものである。承諾期間の定めのない申込みの撤回については,対話者間についての規律がなく(民法第524条参照),学説上は対話が終了するまでの間は自由に認める見解が有力である。その理由としては,対話者間では相手の反応を察知して新たな内容の提案をすることも許されるべきであること,対話継続中に相手方が何らかの準備をすることも考えにくく撤回によって相手方が害されることはないことが挙げられる。これに対して,承諾期間の定めがある申込みについては,対話者間にも同法第521条第1項が適用されるため,申込みの撤回は制限される。しかし,上記の理由として挙げたことは承諾期間の定めの有無に関わりなく当てはまると考えられる。そこで,本文(1)では,承諾期間の定めの有無に関わらず対話者間の申込み一般を対象として対話者間における申込みの規律を設けることとしている。
 本文(2)は,申込みが対話者間でされた場合の承諾適格について,前記3(2)で改めた場合の同法第524条の特則を新たに定めるものである。学説上,対話者間においては,相手方が直ちに承諾をしなかったときは承諾適格が失われるとする商法第507条の規律が妥当するという見解が有力であることを踏まえ,これを明文化するものである。

赫メモ

 規律の趣旨は、中間試案概要のとおりである。ただし、中間試案においては承諾期間の定めの有無にかかわらず、対話継続中は申込みを撤回できるものとされていたが、対話継続中でも撤回権を放棄した場合には撤回を認めるべきではなく、中間試案のような規律を設けるとかかる解釈が否定される可能性があり妥当でないことから、かかる規律を設けることが見送られた(部会資料67A、48頁)。

現行法


斉藤芳朗弁護士判例早分かり

【対話者間において,承諾期間を定めないで申込みをした場合には,直ちに承諾をなすべきである】大審院明治39年11月2日判決・民録12輯1413頁
 AがBに対して贈与証書を交付して贈与の申込みをしたが,その当時Bは5歳であったところ,後日,Bの法定代理人がAに対して贈与の履行を求めて提訴した。
 契約の申込みをするに当たり承諾期間を定めず,かつ隔地者に対して申込みをするのではない場合には,契約の申込みに対しては直ちに承諾をなすべきものであることは民法の契約の成立に関する規定に徴して明瞭である。本件は,対話者間における普通の場合であると考えられる。