第27 契約の成立
(1) 民法第526条第1項を削除するものとする。
(2) 民法第527条を削除するものとする。
6 契約の成立時期(民法第526条第1項・第527条関係)
(1) 民法第526条第1項を削除するものとする。
(2) 民法第527条を削除するものとする。
(注)上記(1)については,民法第526条第1項を維持するという考え方がある。
本文(1)は,隔地者間の契約の成立時期について発信主義を採っている民法第526条第1項を削除し,契約の成立についても原則として到達主義(同法第97条第1項)を採ることとするものである。契約の成立について発信主義を採った趣旨は,早期に契約を成立させることで取引の迅速を図ることにあった。しかし,今日の発達した通信手段の下で発信から到達までの時間は短縮されており,この趣旨を実現するために例外を設けてまで発信主義を採る必要はないと考えられるため,他の意思表示と同様に到達主義を採ることとするものである。
他方,多数の申込みを受ける企業等にとっては契約の成立時を一律に把握することが必要であるとして,契約の成立について現状の発信主義を維持するべきであるとする考え方があり,これを(注)で取り上げている。なお,本文(1)の規律の下でも,予め当事者間で,当該契約の成立時期について発信主義を採用する合意をすることは可能である。
本文(2)は,契約の成立時期について本文(1)で発信主義の特則を廃止することに伴って,民法第527条を削除するものである。発信主義の下では,承諾者自身は,承諾の発信と申込みの撤回の到達の先後を把握して契約の成否を知り得ることから,申込みの撤回が延着した場合に承諾者がそれを通知しなければならないとされている。これに対して,到達主義を採るとすれば,契約の成否は承諾の到達と申込みの撤回の到達の先後で決まることになるが,承諾者はその先後関係を知ることができないからである。
中間試案からの変更はない(中間試案概要、参照)。
(隔地者間の契約の成立時期)
第526条 隔地者間の契約は、承諾の通知を発した時に成立する。
2 申込者の意思表示又は取引上の慣習により承諾の通知を必要としない場合には、契約は、承諾の意思表示と認めるべき事実があった時に成立する。
(申込みの撤回の通知の延着)
第527条 申込みの撤回の通知が承諾の通知を発した後に到達した場合であっても、通常の場合にはその前に到達すべき時に発送したものであることを知ることができるときは、承諾者は、遅滞なく、申込者に対してその延着の通知を発しなければならない。
2 承諾者が前項の延着の通知を怠ったときは、契約は、成立しなかったものとみなす。