債権法改正 要綱仮案 情報整理

第27 契約の成立

7 懸賞広告
(3) 懸賞広告の撤回(民法第530条関係)

 民法第530条の規律を次のように改めるものとする。
ア 懸賞広告者は、その指定した行為をする期間を定めた場合には、その広告を撤回することができない。ただし、その広告において撤回をすることができるものとしたときは、この限りでない。
イ 懸賞広告者は、その指定した行為をする期間を定めなかった場合には、その指定した行為を完了する者がない間は、その広告を撤回することができる。ただし、その広告中に撤回をしない旨を表示したときは、この限りでない。
ウ 広告の撤回は、前の広告と異なる方法によってした場合には、これを知った者に対してのみ、その効力を有する。

中間試案

7 懸賞広告
  懸賞広告に関する民法第529条から第532条までの規律を基本的に維持した上で,次のように改めるものとする。
 (3) 民法第530条の規律を次のように改めるものとする。
  ア 懸賞広告者は,その指定した行為をする期間を定めた場合には,その懸賞広告を撤回することができないものとする。ただし,懸賞広告者がこれと反対の意思を表示したときは,懸賞広告を撤回することができるものとする。
  イ 懸賞広告者は,その指定した行為をする期間を定めなかった場合には,その指定した行為を完了する者がない間は,その懸賞広告を撤回することができるものとする。
  ウ 懸賞広告の撤回は,前の広告と同一の方法によるほか,他の方法によってすることもできるものとする。ただし,他の方法によって撤回をした場合には,これを知った者に対してのみ,その効力を有するものとする。

(概要)

 本文(3)アは,民法第530条第1項及び第3項の規律を改め,指定行為をする期間の定めがある懸賞広告では,これを撤回する権利を放棄したものと推定するのではなく,反対の意思の表示がない限り撤回は許されない旨を定めるものである。懸賞広告に応じようとする者は当該期間内に指定行為を完了すれば報酬請求権を取得すると信頼するのが通常であり,懸賞広告に応じようとする者が懸賞広告者の反証によって予想外に裏切られることは適切でないと考えられるからである。
 本文(3)イは,指定行為をする期間を定めていない場合について民法第530条第1項の規律を維持するものである。
 本文(3)ウは,民法第530条第2項を改め,撤回の方法は当事者が選択できることとした上で,前の広告の方法と異なる方法によって撤回した場合にはこれを知った者に対してのみ効果が生ずることとするものである。同項は懸賞広告と同一の方法による撤回が可能である限りは,それによらなければならないとしている。しかし,他の方法によって撤回したときであっても,これを知った者に対してのみ効果が生ずるとすれば,これを許容しても不測の損害を与えることもないと考えられるからである。

赫メモ

 規律の趣旨は、中間試案概要のとおりである。

現行法

(懸賞広告の撤回)
第530条 前条の場合において、懸賞広告者は、その指定した行為を完了する者がない間は、前の広告と同一の方法によってその広告を撤回することができる。ただし、その広告中に撤回をしない旨を表示したときは、この限りでない。
2 前項本文に規定する方法によって撤回をすることができない場合には、他の方法によって撤回をすることができる。この場合において、その撤回は、これを知った者に対してのみ、その効力を有する。
3 懸賞広告者がその指定した行為をする期間を定めたときは、その撤回をする権利を放棄したものと推定する。

斉藤芳朗弁護士判例早分かり