債権法改正 要綱仮案 情報整理

第30 売買

5 損害賠償の請求及び契約の解除

 損害賠償の請求及び契約の解除について、民法第565条及び第570条本文の規律を次のように改めるものとする。
 3(1)及び4の規定による権利の行使は、第11の規定による損害賠償の請求及び第12の規定による解除権の行使を妨げない。

中間試案

4 目的物が契約の趣旨に適合しない場合の売主の責任
  民法第565条及び第570条本文の規律(代金減額請求・期間制限に関するものを除く。)を次のように改めるものとする。
 (2) 引き渡された目的物が前記3(2)に違反して契約の趣旨に適合しないものであるときは,買主は,売主に対し,債務不履行の一般原則に従って,その不履行による損害の賠償を請求し,又はその不履行による契約の解除をすることができるものとする。

(概要)

 本文(2)は,売主が引き渡した目的物が前記3(2)に違反して契約の趣旨に適合しないものである場合に,債務不履行の一般原則に従って,債務不履行による損害賠償の請求をし,又は債務不履行による契約の解除ができるとするものである。
 …
 以上で取り上げたような目的物が契約に適合しない場合の買主の権利(後記5の代金減額請求権も含む。)の行使要件について,その不適合が「隠れた」(民法第570条)ものであるという要件を設けないこととしている。「隠れた」とは,瑕疵の存在についての買主の善意無過失を意味するとされてきたが,売主が引き渡した目的物が契約に適合しないにもかかわらず買主に過失があることのみをもって救済を一律に否定することは適切ではなく,むしろ,目的物に存する欠陥等がどこまで売買契約に織り込まれていたかを契約の趣旨を踏まえて判断すべきであるとの指摘を踏まえたものである。

赫メモ

 規律の趣旨は、中間試案4(2)等に関する中間試案概要のとおりである。

現行法

(権利の一部が他人に属する場合における売主の担保責任)
第563条 売買の目的である権利の一部が他人に属することにより、売主がこれを買主に移転することができないときは、買主は、その不足する部分の割合に応じて代金の減額を請求することができる。
2 前項の場合において、残存する部分のみであれば買主がこれを買い受けなかったときは、善意の買主は、契約の解除をすることができる。
3 代金減額の請求又は契約の解除は、善意の買主が損害賠償の請求をすることを妨げない。

第564条
前条の規定による権利は、買主が善意であったときは事実を知った時から、悪意であったときは契約の時から、それぞれ一年以内に行使しなければならない。

(数量の不足又は物の一部滅失の場合における売主の担保責任)
第565条 前二条の規定は、数量を指示して売買をした物に不足がある場合又は物の一部が契約の時に既に滅失していた場合において、買主がその不足又は滅失を知らなかったときについて準用する。

(地上権等がある場合等における売主の担保責任)
第566条 売買の目的物が地上権、永小作権、地役権、留置権又は質権の目的である場合において、買主がこれを知らず、かつ、そのために契約をした目的を達することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の解除をすることができないときは、損害賠償の請求のみをすることができる。
2 前項の規定は、売買の目的である不動産のために存すると称した地役権が存しなかった場合及びその不動産について登記をした賃貸借があった場合について準用する。
3 前二項の場合において、契約の解除又は損害賠償の請求は、買主が事実を知った時から一年以内にしなければならない。

(売主の瑕疵担保責任)
第570条 売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第五百六十六条の規定を準用する。ただし、強制競売の場合は、この限りでない。

斉藤芳朗弁護士判例早分かり

 (A=売主,B=買主)
@ 【発見できない瑕疵であっても,買主が知り又は知ることができたものは隠れたとはいえない】大審院昭和5年4月16日判決・民集9巻76頁
  AがBに対して,保安林について伐採の許可を得たとして売却したが,現実には許可を得ていなかった。
  隠れた瑕疵とは,表見しない瑕疵をさし,このような瑕疵があるときは売主は担保責任を負担するが,たとえ発見できない瑕疵であっても,買主が現に瑕疵があることを知り,又はある程度の注意をもってすれば知ることができた場合には責任を免れる。