第31 贈与
民法第549条の規律を次のように改めるものとする。
贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。
1 贈与契約の意義(民法第549条関係)
民法第549条の規律を次のように改めるものとする。
贈与は,当事者の一方が財産権を無償で相手方に移転する意思を表示し,相手方が受諾をすることによって,その効力を生ずるものとする。
贈与契約の意義につき,今日では,売買契約と同様に財産権の移転を内容とする契約であるとの理解が一般的であることを踏まえて,民法第549条に規定する贈与者の義務の明確化を図るものである。具体的には,贈与の対象につき「財産」を「財産権」に改め,「与える」を「移転する」に改めるものとしている。また,他人の財産権を贈与する契約も有効であると解されていることから,「自己の」という文言を削ることとしている。
要綱仮案は、贈与契約の意義について、他人の財産権を贈与する契約も有効であると解されていることから,「自己の」という文言を削ることとした。中間試案では、「財産」を「財産権」に、「与える」を「移転する」に改めるものとしていたが、パブリック・コメントにおいて法律の適用関係を曖昧にするとの指摘があったこと等から、見送られた(部会資料75A、34頁)。
(贈与)
第549条 贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。
【他人物の贈与契約】最高裁昭和44年1月31日判決・判時552号50頁
農地改革によって国に農地を買収されたAがその農地を第三者Bに贈与する契約を締結していたところ,買収が解除されたため,BがAに対して,農地の移転を求めた事例。
他人の財産権をもって贈与の目的とすることも可能であると解釈すべきところ,贈与義務者はみずからその財産権を取得して受贈者にこれを移転する義務を負担するもので,このような贈与契約は有効である。