債権法改正 要綱仮案 情報整理

第32 消費貸借

2 消費貸借の予約(民法第589条関係)

 民法第589条を削除するものとする。

中間試案

2 消費貸借の予約(民法第589条関係)
  民法第589条の規律を次のように改めるものとする。
 (1) 消費貸借の予約は,書面でしなければ,その効力を生じないものとする。
 (2) 消費貸借の予約がその内容を記録した電磁的記録(前記1(3)参照)によってされたときは,その消費貸借の予約は,書面によってされたものとみなすものとする。
 (3) 消費貸借の予約は,その後に当事者の一方が破産手続開始の決定を受けたときは,その効力を失うものとする。

(概要)

 本文(1)は,消費貸借の予約について書面を要求するものである。前記1(2)の諾成的な消費貸借については目的物の引渡しに代えて書面を要求することによって軽率な消費貸借の締結を防ぐこととしているが,この趣旨は消費貸借の予約についても妥当することを理由とする。
 本文(2)は,前記1(3)と同様の趣旨のものである。
 本文(3)は,民法第589条の規定を維持するものである。消費貸借の予約をした後本契約が成立するまでは本文(3)が適用され,本契約が成立した後目的物が引き渡されるまでは前記1(5)が適用される。なお,前記1(5)と同様,当事者の一方が再生手続開始又は更生手続開始の決定を受けた場合に関する規律は,民事再生法第49条又は会社更生法第61条や民法第589条の解釈に委ねることとしている。

赫メモ

 諾成的消費貸借の成立後、目的物の交付前に当事者の一方が破産手続開始の決定を受けた場合に諾成的消費貸借は効力を失うとする規律(要綱仮案1(4))を設けることにより、消費貸借の予約後に当事者の一方が破産手続開始の決定を受けたときにその効力を失うという民法589条の規律は存在意義を失っているとして、要綱仮案は、民法589条を削除するものとした。なお、完結権型予約において予約完結権が行使された場合には新たな合意なくして諾成的消費貸借が成立するが、要綱仮案1(2)により諾成的消費貸借の成立には書面が必要なので、予約完結権を行使した後に書面を作成するか、予約の時点で予約完結権が行使された場合に成立する諾成的消費貸借が書面でされていることが必要になる。中間試案では、消費貸借の予約に関する規律を維持したうえで、消費貸借の予約に書面を要する規律などを設けたが、パブリック・コメントにおいて諾成定期消費貸借の規律を設けるのであれば同条は不要であるとの意見があったことも踏まえて、当該規律を設けることは見送られた(以上につき部会資料70A、53頁)。

【コメント】
 諾成的消費貸借が認められるからといって、消費貸借の予約が完全になくなるわけではない。要物契約の消費貸借の予約がなされた場合において、当事者の一方が破産手続開始の決定を受けたとき、当該予約の効力が失われることについて、要綱仮案からスムーズに導き出せるとは思えない。民法589条を単純に削除するのが適切だったか疑問である。

現行法

(消費貸借の予約と破産手続の開始)
第589条 消費貸借の予約は、その後に当事者の一方が破産手続開始の決定を受けたときは、その効力を失う。

斉藤芳朗弁護士判例早分かり