債権法改正 要綱仮案 情報整理

第32 消費貸借

3 準消費貸借(民法第588条関係)

 民法第588条の規律を次のように改めるものとする。
 金銭その他の物を給付する義務を負う者がある場合において、当事者がその物を消費貸借の目的とすることを約したときは、消費貸借は、これによって成立したものとみなす。

中間試案

3 準消費貸借(民法第588条関係)
  民法第588条の規律を次のように改めるものとする。
  金銭その他の物を給付する義務を負う者がある場合において,当事者がその物を消費貸借の目的とすることを約したときは,消費貸借は,これによって成立したものとみなすものとする。

(概要)

 民法第588条の「消費貸借によらないで」という文言を削除することによって,消費貸借に基づく債務を旧債務とする準消費貸借の成立を認める判例法理(大判大正2年1月24日民録19巻11号)を明文化するものである。なお,準消費貸借は,前記1(2)の諾成的な消費貸借とは異なり,契約に基づく目的物の引渡しを予定していないため,目的物の引渡しに代えて書面を要求することにより軽率な消費貸借の締結を防ぐという趣旨が妥当しないと考えられる。そのため,準消費貸借については書面を要求していない。

赫メモ

 中間試案からの変更はない(中間試案概要、参照)。

現行法

(準消費貸借)
第588条 消費貸借によらないで金銭その他の物を給付する義務を負う者がある場合において、当事者がその物を消費貸借の目的とすることを約したときは、消費貸借は、これによって成立したものとみなす。

斉藤芳朗弁護士判例早分かり

 (A=貸主,B=借主)
【消費貸借に基づく金銭給付義務についても準消費貸借の目的とすることができる】大審院大正2年1月24日判決・民録19巻11頁
 AがBに対して有している金銭消費貸借に基づく債権と別の債権を合計して,BがAに対して小切手を振り出した,という事例のようである。
 当事者がある消費貸借を他の新たな消費貸借に変えて相互の関係を定めることはその自由の権内に属するものである。消費貸借によって金銭等を給付する義務とそれ以外の原因によって給付義務を負担する場合とを区別する理由はない。