債権法改正 要綱仮案 情報整理

第32 消費貸借

5 貸主の担保責任(民法第590条関係)

 民法第590条の規律を次のように改めるものとする。
(1) 民法第590条第1項を削除するものとする。
(2) 贈与者の担保責任の規定は、無利息の消費貸借について準用する。
(3) 利息の有無にかかわらず、引き渡された物が契約の内容に適合しないものであるときは、借主は、その物の価額を返還することができる。

中間試案

5 貸主の担保責任(民法第590条関係)
  民法第590条の規律を次のように改めるものとする。
 (1) 利息付きの消費貸借において,引き渡された目的物が当該消費貸借契約の趣旨に適合していない場合における貸主の担保責任については,売主の担保責任に関する規定を準用するものとする。
 (2) 無利息の消費貸借において,引き渡された目的物が当該消費貸借契約の趣旨に適合していない場合における貸主の担保責任については,贈与者の担保責任に関する規定を準用するものとする。
 (3) 利息の有無にかかわらず,借主は,当該消費貸借契約の趣旨に適合していない引き渡された物の価額を返還することができるものとする。

(概要)

 本文(1)(2)は,民法第590条第1項及び第2項後段の規律を改め,利息付消費貸借の貸主は売主の担保責任(前記第35,4以下),無利息消費貸借の貸主は贈与者の担保責任(前記第36,2)と同様の責任を負う旨を定めるものである。消費貸借は貸主が借主に目的物の所有権を移転させる点において売買や贈与と共通するため,消費貸借の目的物が当該消費貸借契約の趣旨に適合しない場合における貸主の担保責任については,売主及び贈与者の担保責任の規律と整合的である必要があると考えられることによる。なお,同条の「瑕疵」という用語については,売主の担保責任の見直しとの平仄を合わせ,契約の趣旨との適合性を問う表現を用いることとしている。
 本文(3)は,民法第590条第2項前段の規定を利息の有無を問わずに適用されるものに改めるものである。同項前段は無利息の消費貸借に関する規定であるが,利息の有無によって異なる取扱いをする理由はないとの指摘を踏まえたものである。

赫メモ

 規律の趣旨は、中間試案概要のとおりである。中間試案(1)では、民法590条1項の利息付きの消費貸借における代替物の引渡しについて、売主の担保責任の規定を準用する旨に改めることとしていたが、民法559条の準用規定と重複することから、要綱仮案では、単に民法590条1項を削除することとしたものである(部会資料81-3、12頁)。

現行法

(貸主の担保責任)
第590条 利息付きの消費貸借において、物に隠れた瑕疵があったときは、貸主は、瑕疵がない物をもってこれに代えなければならない。この場合においては、損害賠償の請求を妨げない。
2 無利息の消費貸借においては、借主は、瑕疵がある物の価額を返還することができる。この場合において、貸主がその瑕疵を知りながら借主に告げなかったときは、前項の規定を準用する。

斉藤芳朗弁護士判例早分かり