債権法改正 要綱仮案 情報整理

第33 賃貸借

2 短期賃貸借(民法第602条関係)

 民法第602条柱書の部分の規律を次のように改めるものとする。
 処分の権限を有しない者が賃貸借をする場合には、次の各号に掲げる賃貸借は、それぞれ当該各号に定める期間を超えることができない。契約でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、当該各号に定める期間とする。

中間試案

2 短期賃貸借(民法第602条関係)
  民法第602条柱書の部分の規律を次のように改めるものとする。
  処分の権限を有しない者が賃貸借をする場合には,同条各号に掲げる賃貸借は,それぞれ当該各号に定める期間を超えることができないものとする。契約でこれより長い期間を定めたときであっても,その期間は,当該各号に定める期間とするものとする。

(概要)

 本文第1文は,民法第602条の「処分につき行為能力の制限を受けた者」という文言を削除するものである。この文言は,未成年者,成年被後見人,被保佐人及び被補助人を指すものとされているが,これらの者が短期賃貸借をすることができるかどうかは同法第5条,第9条,第13条,第17条等によって規律されており,同法第602条の存在はかえって短期賃貸借であれば未成年者や成年被後見人であっても単独ですることができる等の誤解を生むおそれがあることを理由とする。
 本文第2文は,民法第602条各号に定める期間を超える賃貸借をした場合にはその超える部分のみを無効とする旨を定めるものであり,同条に関する一般的な理解を明文化するものである。

赫メモ

 中間試案からの変更はない(中間試案概要、参照)。

現行法

(短期賃貸借)
第602条 処分につき行為能力の制限を受けた者又は処分の権限を有しない者が賃貸借をする場合には、次の各号に掲げる賃貸借は、それぞれ当該各号に定める期間を超えることができない。
一 樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃貸借 十年
二 前号に掲げる賃貸借以外の土地の賃貸借 五年
三 建物の賃貸借 三年
四 動産の賃貸借 六箇月

斉藤芳朗弁護士判例早分かり

 (A=賃貸人,B=賃借人)
【短期賃貸借を超える期間の契約が締結された場合,その期間を超える部分が無効となる】大阪地裁昭和47年10月11日判決・判タ291号314頁
  B(寺)は,区画整理に際して無縁墓地の用地がなくなるため,昭和12年,A(寺)から,無縁墓地を借り受けた。当時の法令によれば,このような契約の締結には主務官庁の同意が必要であったが,Aはその同意を得ていなかった。
  寺院の重要な財産についてその所有権を喪失する契約ではないので,当然にその全部無効をきたすものではなく,賃借人側に民法602条所定の短期間なら契約しなかったであろうというような特段の事情のない限りは,右法条所定の期間を越えない短期の賃貸借として有効に成立したものと解するのを相当とする。