債権法改正 要綱仮案 情報整理

第33 賃貸借

3 賃貸借の存続期間(民法第604条関係)

 民法第604条の規律を次のように改めるものとする。
(1) 賃貸借の存続期間は、50年を超えることができない。契約でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、50年とする。
(2) 賃貸借の存続期間は、更新することができる。ただし、その期間は、更新の時から50年を超えることができない。

中間試案

3 賃貸借の存続期間(民法第604条関係)
  民法第604条を削除するものとする。

(注)民法第604条を維持するという考え方がある。

(概要)

 賃貸借の存続期間の上限(20年)を廃止するものである。特則の置かれている借地借家法等ではなく民法第604条の適用がある賃貸借であっても,例えばゴルフ場の敷地の賃貸借,重機やプラントのリース契約等においては20年を超える存続期間を定めるニーズがあるとの指摘を踏まえたものである。もっとも,長期の存続期間を一般的に認めると賃借物の損傷や劣化が顧みられない状況が生じかねないこと等から同条の規定を維持(必要に応じて特別法で対処)すべきであるという考え方があり,これを(注)で取り上げている。

赫メモ

 中間試案は、現代社会においては20年を超える賃貸借を認めるニーズがあることから、民法604条を削除することとしていた。しかし、あまりにも長期にわたる賃貸借は、目的物の所有権にとって過度な負担になる等の弊害が生ずる懸念があるとの指摘があり、このような弊害に対しては公序良俗等の一般原則によっては十分な対応ができないおそれがあることから、何らかの存続期間の上限を設けるのが相当であると考えられた。そこで、要綱仮案では、民法278条が物権である永小作権の存続期間の上限を50年と規定していること等を参照して、賃貸借の存続期間の上限を20年から50年に改めることとするものである(部会資料83-2、44頁)。

現行法

(賃貸借の存続期間)
第604条 賃貸借の存続期間は、二十年を超えることができない。契約でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、二十年とする。
2 賃貸借の存続期間は、更新することができる。ただし、その期間は、更新の時から二十年を超えることができない。

(永小作権の存続期間)
第278条 永小作権の存続期間は、二十年以上五十年以下とする。設定行為で五十年より長い期間を定めたときであっても、その期間は、五十年とする。
2 永小作権の設定は、更新することができる。ただし、その存続期間は、更新の時から五十年を超えることができない。
3 設定行為で永小作権の存続期間を定めなかったときは、その期間は、別段の慣習がある場合を除き、三十年とする。

斉藤芳朗弁護士判例早分かり

 (A=賃貸人,B=賃借人)
@ 【更新後の契約期間も含めて20年であれば,民法604条に違反しない,とされた事例】東京高裁昭和50年3月19日判決・判タ327号201頁
  BがAの土地を借りてゴルフ場の開設を企画していたが,AB間で紛争となり,昭和41年,期間を昭和34年から10年間とし,期限が到来したときには当然更新する旨の裁判上の和解が成立した。Aが昭和44年の契約終了を主張した。
  上記和解条項の更新は1回限りのものであるから,賃貸借契約の期間は合計20年となり,民法604条に反するものではない。

A 【相当長期間継続することが予定されている賃貸借契約における契約期間の定めは,賃料・契約条項の見直し期間という趣旨と考えるべき,とされた事例】東京地裁昭和56年12月25日判決・判時1046号61頁
  昭和3年から道路用地として賃貸されている土地について,まず,昭和9年まで,昭和21年までというように順次契約が締結された。昭和50年になって地主Aが明渡しを求めた。
  賃貸借契約の目的は,土地を利用しての富士山登山者を対象とした旅客自動車営業であり,道路開削のために相当多額の費用が見込まれ,投下資本の回収にある程度の年限を要することが当初から予測され,道路事業許可年限が昭和33年までの30年間と長期間であり,当事者においては契約時から少なくとも相当長期間賃貸借契約を継続する意思を有していた。契約期間に強い拘束力を与える意思はなく,契約では期間につき比較的短期の約定がなされてはいるが,契約締結時から少なくとも30年間を経過した昭和33年までの期間についての約定は,いずれも賃料ないし契約条項の見直し期間を定めたものと認めるのが相当である。