第33 賃貸借
賃貸人たる地位の移転について、次のような規律を設けるものとする。
不動産の譲渡人が賃貸人であるときは、その賃貸人たる地位は、賃借人の承諾を要しないで、譲渡人と譲受人との合意により、譲受人に移転させることができる。この場合においては、4(4)及び(5)の規定を準用する。
5 合意による賃貸人たる地位の移転
不動産の譲受人に対して賃貸借を対抗することができない場合であっても,その賃貸人たる地位は,譲渡人及び譲受人の合意により,賃借人の承諾を要しないで,譲渡人から譲受人に移転させることができるものとする。この場合においては,前記4(4)及び(5)を準用するものとする。
本文第1文は,合意による賃貸人たる地位の移転について定めるものであり,判例法理(最判昭和46年4月23日民集25巻3号388頁)を明文化するものである。一般に,契約上の地位の移転には相手方の承諾が必要とされているが(前記第21参照),賃貸人たる地位の移転については,少なくとも目的物の所有権の移転と共に行う限りにおいては,相手方の承諾は不要とされている。
本文第2文は,本文第1文の合意承継の場面における法律関係の明確化を図るため,当然承継の場面における前記4(4)及び(5)の規律を準用するものである。
中間試案からの変更はない(中間試案概要、参照)。
(A=賃貸人,B=賃借人)
【土地の賃貸借契約の賃貸人の地位の譲渡については,賃借人の承諾は不要である】最高裁昭和46年4月23日判決・民集25巻3号388頁
AはBとの間で,A所有地を建物所有目的でBに賃貸する契約を締結したが,Bは建物を建築しなかった。Aは土地所有権をCに譲渡したが,AC間ではAの賃貸人たる地位をCが承継する合意がなされていた。
土地の賃貸借契約における賃貸人の地位の譲渡は,賃貸人の義務の移転を伴うものであるが,賃貸人の義務は賃貸人が何ひとであるかによって履行方法が特に異なるものではなく,土地所有権の移転があったときに新所有者にその義務の承継を認めることがむしろ賃借人にとつて有利であるから,一般の債務引受の場合と異なり,新所有者が旧所有者の賃貸人としての権利義務を承継するには,賃借人の承諾を必要としない。