債権法改正 要綱仮案 情報整理

第33 賃貸借

6 不動産の賃借人による妨害排除等請求権

 不動産の賃借人による妨害排除等請求権について、次のような規律を設けるものとする。
 不動産の賃借人は、賃貸借の登記をした場合又は借地借家法(平成3年法律第90号)その他の法律が定める賃貸借の対抗要件を備えた場合において、次の(1)又は(2)に掲げるときは、当該(1)又は(2)に定める請求をすることができる。
(1) 当該不動産の占有を第三者が妨害しているとき。
  当該第三者に対する妨害の停止の請求
(2) 当該不動産を第三者が占有しているとき。
  当該第三者に対する返還の請求

中間試案

6 不動産の賃借人による妨害排除等請求権
  不動産の賃借人は,賃貸借の登記をした場合又は借地借家法その他の法律が定める賃貸借の対抗要件を備えた場合において,次の各号に掲げるときは,当該各号に定める請求をすることができるものとする。
 (1) 不動産の占有を第三者が妨害しているとき
    当該第三者に対する妨害の停止の請求
 (2) 不動産を第三者が占有しているとき
    当該第三者に対する返還の請求

(概要)

 対抗要件を備えた不動産の賃借人が賃借権に基づく妨害排除請求(本文(1))や返還請求(本文(2))をすることができる旨を定めるものであり,判例法理(最判昭和28年12月18日民集7巻12号1515頁等)を明文化するものである。他の法律が定める対抗要件としては,借地借家法第10条・第31条,農地法第16条等がある。対抗要件の不存在を主張する正当な利益を有しない第三者(不法占拠者等)に対する妨害排除等請求の要件としても対抗要件の具備が要求されるかどうかについては,それが要求されないという解釈を排除する趣旨ではない。

赫メモ

 中間試案からの変更はない(中間試案概要、参照)。

現行法


斉藤芳朗弁護士判例早分かり

 (A=賃貸人,B=賃借人)
@ 【第三者に対抗できる賃借権を有する賃借人は,賃借権に基づく妨害排除請求権を行使することができる,対二重設定の賃借人】裁昭和28年12月18日判決・民集7巻12号1515頁
  A所有地に借地権を有するBの建物は,昭和20年戦災により焼失した。Aの相続人A´は同一の土地についてCに借地権を設定し,Cが建物を建築した。罹災都市借地借家臨時処理法10条は,昭和21年から5年間,借地権の登記又は建物登記がなくても,借地権を第三者に対抗できる旨定めている。
  民法605条,借地借家法10条,借地借家臨時処理法10条などにより,土地の賃借権をもってその土地につき権利を取得した第三者に対抗できる場合には,その賃借権はいわゆる物権的効力を有し,その土地につき物権を取得した第三者に対抗できるのみならずその土地につき賃借権を取得した者Cにも対抗できる。したがって,第三者に対抗できる賃借権を有するBは,その土地につき賃借権を取得しこれにより地上に建物を建てて土地を使用するCに対し,直接にその建物の収去土地の明渡しを請求することができる。

A 【同上,対無権限者】最高裁昭和30年4月5日判決・民集9巻4号431頁
  A所有地に借地権を有するBの建物が戦災により焼失したところ,Cが勝手に,同一土地上に建物を建築した。
  Bの借地権は,罹災都市借地借家臨時処理法10条により第三者に対抗できるのであるから,賃借権に基づいて第三者に対して建物の収去土地の明渡しを請求できる。