債権法改正 要綱仮案 情報整理

第34 使用貸借

3 使用貸借の解除(民法第597条関係)

 民法第597条の規律を次のように改めるものとする。
(1) 次に掲げる場合には、貸主は、契約の解除をすることができる。
 ア 借主がまだ目的物を受け取っていないとき。ただし、書面による使用貸借については、この限りでない。
 イ 2(2)に規定する場合において、2(2)の目的に従い借主が使用及び収益をするのに足りる期間を経過したとき。
(2) 当事者が使用貸借の期間並びに使用及び収益の目的を定めなかったときは、貸主は、いつでも契約の解除をすることができる。
(3) 借主は、いつでも契約の解除をすることができる。

中間試案

1 使用貸借の成立等(民法第593条関係)
  民法第593条の規律を次のように改めるものとする。
 (2) 使用貸借の当事者は,借主が借用物を受け取るまでは,契約の解除をすることができるものとする。ただし,書面による使用貸借の貸主は,借主が借用物を受け取る前であっても,契約の解除をすることができないものとする。

2 使用貸借の終了(民法第597条関係)
  民法第597条の規律を次のように改めるものとする。
 (3) 当事者が返還の時期を定めず,使用及び収益の目的を定めた場合において,借主がその目的に従い使用及び収益をするのに足りる期間を経過したときは,貸主は,契約の解除をすることができるものとする。
 (4) 当事者が返還の時期並びに使用及び収益の目的を定めなかったときは,貸主は,いつでも契約の解除をすることができるものとする。
 (5) 借主は,借用物を受け取った後であっても,いつでも契約の解除をすることができるものとする。

(概要)

1 使用貸借の成立等(民法第593条関係)
 本文(2)は,使用貸借を諾成契約とすることに伴い,目的物の引渡し前の各当事者による解除に関する規律を定めるものである。目的物が引き渡されるまで各当事者は自由に契約の解除をすることができることを原則としつつ,例外的に書面による使用貸借の貸主については目的物の引渡し前であっても契約の解除をすることができない旨を定めている。書面によらない贈与の撤回(解除)に関する民法第550条と基本的に同様の趣旨のものであるが,使用貸借の借主については,従来,目的物をいつでも返還することができると解されており(後記2(5)参照),使用貸借を諾成契約とすることを前提としても,書面の有無や目的物の引渡しの有無を問わず,いつでも契約の解除をすることができるとするのが相当であるとの考慮に基づくものである。なお,目的物の引渡し後の借主による解除については,後記2(5)参照。

2 使用貸借の終了(民法第597条関係)
 本文(1)から(4)までは,民法第597条の規律の内容を維持しつつ,同条のように目的物の返還時期という点に着目した規定ぶりではなく,存続期間の満了(本文(1)(2))や貸主による解除(本文(3)(4))という点に着目した規定ぶりに改めることによって,同条の規律の内容をより明確にすることを意図するものである。存続期間の満了や貸主による解除によって使用貸借が終了すると,これによって借主の目的物返還債務が生ずることになる。
 本文(5)は,借主による解除について定めるものである。現行法では明文の規定はないが,一般に,使用貸借の借主はいつでも目的物の返還をすることができると解されており,この理解を借主による解除という点に着目した規定ぶりによって明文化するものである。なお,目的物を受け取る前の借主による解除については,前記1(2)参照。

赫メモ

 要綱仮案(1)アは、中間試案1(2)に関する中間試案概要のとおりである。
 要綱仮案(1)イは、中間試案2(3)に関する中間試案概要のとおりである。
 要綱仮案(2)は、中間試案2(4)に関する中間試案概要のとおりである。
 要綱仮案(3)は、中間試案2(5)に関する中間試案概要のとおりである。

現行法

(借用物の返還の時期)
第597条 借主は、契約に定めた時期に、借用物の返還をしなければならない。
2 当事者が返還の時期を定めなかったときは、借主は、契約に定めた目的に従い使用及び収益を終わった時に、返還をしなければならない。ただし、その使用及び収益を終わる前であっても、使用及び収益をするのに足りる期間を経過したときは、貸主は、直ちに返還を請求することができる。
3 当事者が返還の時期並びに使用及び収益の目的を定めなかったときは、貸主は、いつでも返還を請求することができる。

斉藤芳朗弁護士判例早分かり